信用保証協会の保証付融資とは?制度の仕組みや審査落ちの原因と対策
創業したばかりの企業や個人事業主は金融機関から融資を受けるハードルが高いため、資金調達に苦労する方も多いでしょう。
金融機関からの融資を受ける方法のひとつが、信用保証協会の保証付き融資です。信用保証協会が保証人となることで、金融機関からの融資を受けやすくなり、創業期や赤字決算の企業でも資金を調達できる可能性があります。
本記事では、信用保証協会の保証付き融資の仕組みやメリット・デメリットを解説します。
目次
信用保証協会の保証付き融資とは
信用保証制度とは、信用保証協会が中小企業や個人事業主の保証人となり、金融機関からの融資を後押しする仕組みです。保証協会が信用力を補完することで、創業間もない企業や担保のない企業でも資金を調達しやすくなる場合があります。
ここでは、信用保証協会の保証付き融資について、以下の内容を解説します。
- 仕組み
- プロパー融資との違い
- 利用できる事業者の条件
- 保証の種類
ひとつずつ見ていきましょう。
信用保証制度の仕組み
信用保証制度とは、信用保証協会が中小企業や個人事業主の保証人となり、金融機関からの融資を後押しする制度です。万が一返済が滞った場合は、協会が金融機関に対して代位弁済を行い、その後、利用者が協会へ返済する仕組みになっています。
保証料を支払うことで信用力を補完できるため、創業間もない企業や担保が用意できない企業でも、事業拡大に必要な資金の調達も可能です。資金調達のハードルを下げる公的支援のひとつとして、広く活用されています。
保証協会融資とプロパー融資の違い
プロパー融資とは、金融機関が単独で実行する融資です。信用保証協会融資よりも審査が厳しくなるものの、保証料を支払う必要がなく、保証協会への申込み手続きも不要です。
しかし、プロパー融資では信用力や実績が厳しく問われるため、新興企業や財務状況が悪化している企業は融資を受けられないケースもあります。それぞれの違いを理解し、自社の状況に応じて適切な方法を選択することが大切です。
利用できる事業者の条件
信用保証協会の保証付融資は、中小企業基本法で定められた、基準を満たす中小企業や小規模事業者が対象です。
法人はもちろん個人事業主も利用可能である一方、反社会的勢力や公序良俗に反する事業者は対象外となります。利用する際は、所在地・業種・事業内容などが各保証協会の定める条件に合致している必要があります。利用できる中小企業の主な基準は、以下のとおりです。
業種 | 資本金 | 従業員数 (小規模企業社) |
---|---|---|
製造業等 (建設行、運送業、不動産業を含む) |
3億円以下 | 300人以下 (20人以下) |
ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除) |
3億円以下 | 900人以下 (20人以下) |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 (5人以下) |
小売業・飲食業 | 5千万円以下 | 50人以下 (5人以下) |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 (5人以下) |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 (20人以下) |
旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 (20人以下) |
医療を主たる事業とする法人 | ー | 300人以下 (20人以下) |
原則として、各信用保証協会の管轄区域で事業を営んでいる必要があります。
ただし、以下の業種は保証対象外となる点は押さえておきましょう。
【対象外となる業種】
- 農業
- 林業(素材生産業及び素材生産サービス業を除く)
- 漁業
- 金融・保険業(一部の金融・保険業を除く)
保証制度の種類
信用保証協会では、企業の多様な資金ニーズに応じた複数の保証制度があります。最も一般的なのは普通保証で、業種や規模を問わず広く活用されています。
また、売掛金や在庫などの流動資産を担保に融資を受ける流動資産担保融資保証制度(ABL保証)や、少額資金を対象とした小口零細企業保証制度などがあります。保証制度ごとに特徴が異なるため、会社の状況に応じて、適切な制度を利用することが大切です。各保証制度の特徴は、以下のとおりです。
保証制度名 | 特徴 |
---|---|
普通保証 | 一般的な保証制度で幅広い資金調達に対応 |
流動資産担保融資保証(ABL保証) | 売掛債権や商品在庫などの流動資産を担保に設定する融資保証 |
小口零細企業保証制度 | 小規模事業者向けの少額融資を支援(保証限度額2,000万円まで) |
借換保証制度 | 既存借入金の一本化や借換えを目的とした保証制度 |
特定社債保証制度 | 社債発行による資金調達を支援する制度 |
信用保証協会で融資を受けるメリット
信用保証協会の保証付き融資は、連帯保証人や担保を求められない場合も多いため、自己資産が乏しい企業でも融資を受けられる可能性があります。また、信用保証協会の保証を活用することで金融機関からの融資枠が広がり、長期的な借り入れが実現することもあるでしょう。
信用保証協会付き融資では、自社の業態や事業内容に応じて保証制度を選べるため、資金ニーズに合わせた柔軟な資金調達ができる点も大きな魅力です。金融機関でのプロパー融資を受けられなかった企業や、より大規模な融資を受けたい企業は、信用保証協会付きの融資を検討してみてください。
信用保証協会で融資を受けるデメリット
信用保証協会の保証付き融資は、資金ニーズの高い中小企業にとって魅力的な制度ですが、いくつか注意すべき点もあります。
- 保証料の支払いが必要
- 融資実行は金融機関の判断次第
- 代位弁済後は保証協会への返済義務が発生する
申込み時に発生する保証料は融資と別に発生するコストで、資金調達額や期間によっては大きな負担となる場合もあります。
また、保証を受けられたからといって、必ず融資が実現するとは限りません。信用保証協会の保証が付いていても、最終的な融資実行の可否は金融機関の判断に委ねられます。
さらに、万が一返済が滞り信用保証協会が金融機関に代位弁済を行った場合、その後は利用者が保証協会に返済をする必要があります。
信用保証協会を利用する際には、上述のデメリットも理解したうえで検討しましょう。
信用保証協会を利用する流れ
信用保証協会を利用する際には、事前に手続きの流れを把握しておくとスムーズに利用できます。手続きの流れは、以下のとおりです。
- 申込み
協会への直接申込み、または金融機関や自治体を経由した申込みのいずれかの方法で申し込む。申込み時には事業内容や資金使途を明確にした申込書類の準備が必要 - 保証審査(面談)
書類確認や訪問調査などによる審査がおこなわれる。審査期間は一般的に、1週間から1カ月程度 - 融資実行
審査に通過すると信用保証協会から「信用保証書」が金融機関へ発行され、信用保証委託契約書への署名と所定の信用保証料の支払いを経て、融資が実行される - 返済開始
融資を受けた後は金融機関との契約に基づいて返済を行う
面談を受ける際には、自信のある態度で誠実に説明することが大切です。さらに、事業の継続性や資金使途の妥当性について聞かれるため、事業計画や収支見通しを明確に説明できるように資料を準備しておきましょう。
信用保証協会の審査に落ちる理由
信用保証協会の審査に落ちた場合、金融機関の融資を受けられなくなる可能性があります。審査に通過するためには、事前に対策を立てておくことも大切です。
ここでは、信用保証協会の審査に落ちる理由について詳しく解説します。
返済の見込みが立てられない
信用保証協会の審査では、返済能力の有無が最も重視されます。そのため、提出された事業計画の売上予測や利益水準が現実的ではないと返済が困難だと判断され、審査に落ちる可能性があります。
また申込み時点で他社からの借り入れがあり、返済負担が大きいと資金繰りの悪化が懸念されるため、審査で不利に働いてしまいます。返済見込みが原因で審査に落ちないためには、収支バランスを確認しながら、現実的で具体性のある返済計画を盛り込んだ事業計画を作成することが大切です。
資金使途が明確になっていない
信用保証協会に提出する資料には、借り入れた資金の使い道を記載する必要があります。そのため、借り入れの目的が曖昧だったり、必要な金額の内訳や具体的な見積もりが曖昧だったりすると「資金の使い道が不明確」と判断され、審査に通らないケースがあります。
とくに運転資金や設備資金として使う場合は、詳細な使途を説明し、可能であれば見積書などの資料も添付すると良いでしょう。
自己資金がない
全額を借り入れに頼る資金計画の場合、金融機関や保証協会から「計画性が不足している」と見なされ、審査でマイナスに働く場合もあります。
とくに創業融資の場合、自己資金を用意できない状態では審査に通りにくいと考えられます。可能であれば、少しでも自己資金を準備してから審査を受けると、審査に通りやすくなるでしょう。
信用情報に問題がある
信用保証協会の審査では、申込者の個人信用情報や法人の金融取引履歴も厳しくチェックされます。過去にローンやクレジットの延滞などの債務不履行がある場合や、税金・社会保険料を滞納している場合は、返済能力や経営姿勢に疑念を持たれ、審査に悪影響を及ぼします。
また、銀行取引停止処分を受けている企業は、基本的に保証対象外となる点も忘れてはいけません。ただし、1回目の不渡り発生後6ヵ月が経過し、事業継続に問題がないと判断された場合は利用できることもあります。
審査に通らなかった場合の対処法
信用保証協会の審査に落ちた場合は、計画を見直して再度申し込んだり、別の手段を検討したりしましょう。ここでは、信用保証協会の審査に落ちた場合の対処法を詳しく解説します。
計画を見直して再度審査を申し込む
提出した書類の不備を修正したうえで再度申し込むと、審査に通過する可能性があります。とくに資金使途や返済計画をより具体的に説明できるように整え、事業計画の数字に根拠を持たせられれば信頼性も高まるでしょう。
経営者がひとりで対応できない場合は、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談し、事業計画書や資金繰り表などの資料を整備するのも有効な方法です。事前準備に時間をかけ、再審査に臨むことで審査に通る可能性が高くなるでしょう。
別の融資を検討する
信用保証協会の融資に通らなかった場合でも、他の資金調達手段を検討することで融資を受けられる可能性があります。例えば、日本政策金融公庫の融資制度や民間のビジネスローンを活用する方法が挙げられます。
また、同じ保証制度でも金融機関によって審査基準が異なるため、別の銀行や信用金庫に申し込むのも良いでしょう。一部の金融機関では、独自の支援制度を設けている場合もあるため、自社に合った融資先を探してみるのもおすすめです。
ファクタリングを活用する
ファクタリングで売掛債権を譲渡して、資金を調達する方法も検討してみてください。ファクタリングは融資ではないため返済義務がなく、資金繰りを圧迫しない点が大きなメリットです。また、オンライン完結型のサービスも多く、審査から入金まで最短即日とスピーディに対応してくれます。
EasyFactorは、すべての手続きがオンラインで完了し、最短即日で資金を受け取れます。すぐに資金を調達したい方や、返済負担を軽減したい方は、EasyFactorのファクタリングも検討しましょう。
まとめ
信用保証協会の保証付き融資は、中小企業や個人事業主の資金調達を支援する制度です。保証人や担保がなくても融資を受けられる可能性があるため、金融機関からのプロパー融資を受けられない場合は一度検討してみると良いでしょう。
しかし、信用保証協会を利用する際は、制度の仕組みや手続きの流れを正しく理解しておくことが重要です。審査に落ちた場合は事業計画を見直して再申請するほか、日本政策金融公庫や地域金融機関の融資などを検討することをおすすめします。
また、返済負担を避けたい場合は、売掛債権を資金化できるファクタリングを利用するのもひとつの手段です。EasyFactorなら、オンライン上で申込みが完結し、最短即日に資金を調達できます。より詳細な情報を知りたい方は、以下のページをご確認ください。
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