ファクタリング業者と債権回収会社はどう違う?特徴や利用目的、注意点について解説
ファクタリング業者と債権回収業者は、どちらも債権に関わるサービスを提供しています。しかし、それぞれのサービスの特徴や、利用目的について詳しく知らない方も多いでしょう。適切なサービスを利用するには、それぞれのシステムについて知っておく必要があります。また、利用する上で注意すべきことも、事前に把握しておかなければなりません。本記事では、ファクタリング業者と債権回収会社の違いや、それぞれの特徴や注意点について解説します。
目次
ファクタリング業者の特徴
ファクタリング業者は、売掛債権を買取り、手数料を差し引いた金額を利用者へ支払います。融資を受けるのが難しい、中小企業に活用されている資金調達方法です。ファクタリング業者の主な特徴は、次の通りです。
●主な利用者は中小企業
●資金調達が主な目的
●確定債権を取り扱う
では、それぞれの特徴について詳しく見てみましょう。
主な利用者は中小企業
主な利用者は、中小企業です。最短即日入金も可能であるため、早急に資金が必要になった際にも、迅速に資金を調達できます。売掛債権を売却するため借入にはならず、借金を増やさずに資金繰りを改善できるのが特徴です。信用情報にも影響を与えないため、ファクタリングを利用したことで、融資が受けにくくなる心配もありません。
資金調達が主な目的
利用する主な目的は、資金調達です。売掛債権の支払い期日より前に現金化して、資金繰りを改善するのが目的です。売掛債権の支払い期日は、30日~60日後であるのが一般的で、業種によっては支払い期日まで90日以上も待つことも少なくありません。ファクタリングは、支払い期日を待たずに資金を調達する方法です。
確定債権を取り扱う
ファクタリングでは、入金額と入金日が決定した支払い期日前の債権が対象です。入金額や入金日が確定していても、期日が過ぎているものは扱っていません。将来債権を取り扱っている業者もありますが、まだ対応している業者は少ないでしょう。
債権回収業者の特徴
債権回収業者の特徴は、次の通りです。
●主な利用者は金融機関
●利用目的は不良債権の処分
●特定金融債権に含まれる不良債権を扱う
では、それぞれの特徴について詳しく解説します。
主な利用者は金融機関
主な利用者は、金融機関です。金融機関は貸付や立て替えサービスを行っているため、返済されない債権の発生することがあります。貸付債権などが、債権回収業者に持ち込まれる主な債権になります。
利用目的は不良債権の処分
利用される主な目的は、不良債権の処分です。債権の回収を業者に依頼することで、面倒な回収業務から解放され、本業に専念できます。また、不良債権を譲渡すると、税務上で損金として計上できるため、無税で清算できるメリットもあります。
特定金融債権に含まれる不良債権を取り扱う
債権回収業者が扱う債権は、サービサー法によって制限されています。貸付債権やクレジット債権など、特定金融債権に含まれる不良債権を取り扱っています。
ファクタリング業者と債権回収業者の違い
ファクタリング業者と債権回収業者の違いは、次の通りです。
●利用目的
●対象となる利用者
●取り扱う債権
●コスト
では、それぞれの違いについて詳しく見てみましょう。
利用目的
ファクタリング業者と債権回収業者は、利用目的が異なります。ファクタリングの主な目的が資金調達であるのに対し、債権回収は不良債権の処分を主な目的としています。売掛金の支払い期日を前出ししたい場合はファクタリング業者、支払い期日が過ぎても回収できない売掛金を現金化する場合は、債権回収業者を利用するのが良いでしょう。
対象となる利用者
ファクタリング業者の主な利用者が個人事業主や中小企業であるのに対し、債権回収業者の主な利用者は金融機関です。ただし、特別な条件を除き、個人で債権回収業者の利用はできません。
取り扱う債権
ファクタリング業者と債権回収業者では、取り扱う債権が異なります。ファクタリング業者が確定債権を取り扱うのに対し、債権回収業者は不良債権を扱います。
コスト
コストの面でも、大きな違いがあります。ファクタリングにかかるコスト(手数料)の目安は、2社間が10%~20%、3社間が1%~9%ほどです。一方、債権回収業者の買取率は、額面の2%~3%です。
100万円の売掛債権をファクタリング業者に売却する場合、2社間であれば手数料は10万円~20万円、3社間であれば1万円~9万円ほどになります。実際に手元に入る金額は、2社間なら80万円~90万円、3社間なら91万円~99万円ほどになるでしょう。債権回収業者に売却した場合、手元に入る金額は2万円~3万円ほどになるでしょう。
ファクタリング利用のメリット
資金調達を目的とする場合、ファクタリング業者を利用するのが向いています。ファクタリングには、次のようなメリットがあります。
●最短即日で資金調達できる
●キャッシュフローが改善
●利用者は未回収リスクを負わない
では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
最短即日で資金調達できる
ファクタリングのメリットは、最短即日で資金調達できることです。融資で資金調達する場合、申し込みから資金調達まで数週間ほどかかります。ファクタリングを利用すれば、最短即日、通常1日~3日ほどで資金調達が適います。売掛金の支払期日前に大口の注文を受けたり、設備投資が必要になったりした場合も、ファクタリングを利用して運転資金に充てられるでしょう。
キャッシュフローが改善
キャッシュフローが改善するのも、ファクタリングのメリットです。売掛金の支払期日を待たずに現金化できるため、突発的な支出のも対応できます。資金不足により、ビジネスチャンスを逃したり、事業が滞ったりするのを防げます。
利用者は未回収リスクを負わない
ファクタリングのメリットは、利用者が売掛金未回収のリスクを負わないことです。ファクタリングは原則的に償還請求権無しで契約するため、未回収リスクは業者が負うことになります。売掛先が倒産しても、受取った資金を返還する必要はありません。未回収リスクを負わず、資金調達ができます。
ファクタリングの注意点
ファクタリングはメリットの多い資金調達方法ですが、注意すべき点もいくつかあります。ファクタリングの注意点は、次の通りです。
●売掛先との関係悪化
●キャッシュフローが滞ることもある
●分割払いはできない
●契約書控えを大切に保管する
では、それぞれの注意点について詳しく解説します。
売掛先との関係悪化
ファクタリングの注意点は、売掛先との関係の悪化する可能性があることです。3社間ファクタリングは、利用者と業者の間で契約を結ぶだけでなく、売掛先の承諾も必要です。しかし、ファクタリングを利用することで資金繰りが悪化していると勘繰られ、関係が悪化する可能性があります。売掛先が承諾しないと、3社間ファクタリングは利用できないため、関係性の良好な売掛先を選ぶことが大切です。
キャッシュフローが滞ることもある
キャッシュフローが滞る可能性があるのも、ファクタリングの注意点です。ファクタリングは売掛金から手数料を差し引いた金額が支払われるため、手元に入る金額は本来受取る売掛金より少なくなります。手数料が高いと、資金繰りを悪化させるリスクがあります。
分割払いはできない
ファクタリングの注意点は、分割払いできないことです。売掛金が入金されたら、一括払いで業者へ支払わねばなりません。分割払いができる業者は、ファクタリングではなく、融資や借入契約である可能性があるので注意が必要です。
契約書控えを大切に保管する
契約書控えを大切に保管することも大切です。業者によっては、契約書や契約書の控えを渡さないところがあります。そうすると、トラブルが起きた時に契約内容を確認できず、不利な状況になる可能性があります。契約書は必ず入手してください。また、契約書を渡さない業者と契約をするのはやめましょう。
債権回収業者を利用する際の注意点
債権回収業者を利用する際の注意点は、次の通りです。
●法務省に認可されているか確認する
●詐欺に気をつける
●督促の流れを把握して差し押さえを防ぐ
では、それぞれの注意点について見てみましょう。
法務省に認可されているか確認する
認可されていない業者を利用すると、詐欺などに巻き込まれる可能性があります。認可されているか確認してから利用してください。
詐欺に気をつける
債権回収業者の中には、債権回収を委任されたなどと架空の債権を請求してくるところもあります。法務省から認可を得ていない業者が、債権回収業者を名乗っているケースもあります。認可のない業者の利用や、心当たりがない債権の請求には応じないようにしましょう。
督促の流れを把握して差し押さえを防ぐ
債権回収業者からの通知を無視していると、差し押さえられるリスクがあります。督促の流れを把握し、差し押さえを防いでください。通知を無視していると、次のような流れで督促されます。
●債権譲渡の通知
●電話や葉書による督促
●一括請求の督促
●裁判所からの連絡
●強制執行による差し押さえ
最初は、書面で債権譲渡の通知が行われますが、無視していると債権回収業者から電話や訪問での督促が行われます。それでもなお無視していると、一括請求の督促状が届きます。督促状の期日までに支払わなければ、裁判所からの支払い督促と訴状です。裁判で和解が成立しなかったり、督促を無視し続けたりすると、強制執行により差し押さえられます。
債権回収業者からの通知は無視せず、できるだけ早く対応することが大切です。無視し続けていると、遅延損害金も増えてしまいます。分割払いができるよう交渉したり、債務整理をしたりする必要があります。
ファクタリング業者と債権回収業者の違いについてのまとめ
ファクタリング業者と債権回収業者は、債権を扱うサービスであるものの、まったく異なるものです。ファクタリングは資金調達の目的で利用され、債権回収業者は不良債権を処分するために利用されます。基本的に、債権回収業者は個人が利用することは少なく、主な利用者は金融機関です。ファクタリングは、中小企業が利用しやすい資金調達なので、キャッシュフローの改善に活用すると良いでしょう。