ファクタリング利用時の税務処理は?仕訳や注意点について徹底解説
ファクタリングの税務処理についてわからずに悩んだ経験はないでしょうか。
ファクタリングは売掛債権を譲渡することによって資金化する方法のため、借り入れとは税務処理の仕方が異なります。しかし、ファクタリングと借り入れの仕訳について混同してしまっている方も少なくありません。
そこで本記事では、ファクタリングを利用した際の税務処理について解説していきます。ファクタリングによる資金調達を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ファクタリングの仕組み
ファクタリング利用時の税務処理を詳しくみていく前に、その仕組みについて理解しておきましょう。
ファクタリングは、専門の業者と売掛債権の譲渡契約を結ぶことにより、売掛金を期日前に現金化できるサービスです。売掛債権は自社が保有している資産なので、ファクタリングの取り引きによって得られた資金は返済の必要がありません。そのため、ファクタリングを活用した資金調達は借り入れよりも資金繰り改善が期待でき、とりいれる事業者も増えてきました。
ファクタリングは「保証型」と「買取型」の2つに分類され、種類によって税務処理の方法が異なります。
保証型ファクタリング
保証型のファクタリングは、売掛債権の貸し倒れリスクを避けられるサービスです。
業者に対して保証料を支払うことにより、売掛金が回収不能になったとしても保証金が受け取れます。保証型のファクタリングは、売掛先の倒産などの理由によって売掛金が回収できなくなるのが心配な場合に有効です。
通常は、売掛先の信用力が高いほど保証料が安くなります。
買取型ファクタリング
買取型のファクタリングの契約では、事業者が保有している売掛債権を業者に売却します。申込者は、売掛金からファクタリングの取り引きにかかる手数料が差し引かれた金額を受け取ることが可能です。単に「ファクタリング」とだけ表記される場合は、この買取型のファクタリングを指す場合が一般的といえるでしょう。
買取型のファクタリングの取り引き形態には、「3者間ファクタリング」と「2者間ファクタリング」の2種類があります。
3者間ファクタリング
3者間ファクタリングは、申込者と売掛先とファクタリング会社で結ぶ契約を指します。
3者間ファクタリングの特徴は以下のとおりです。
• 審査が通りやすい
• 手数料の相場は2〜9%ほど
• 利用可能額の範囲が広め
売掛先を交えて契約することでファクタリング会社が安心して取り引きできるため、審査通過率は高い傾向にあります。ただし、3者間ファクタリングに申し込むには売掛先の承諾が必要です。
2者間ファクタリング
2者間ファクタリングは、申込者とファクタリング会社で結ぶ契約を指します。
2者間ファクタリングの特徴は以下の通りです。
• 資金の調達スピードがはやい
• 手数料の相場は10〜20%ほど
• 債権譲渡について売掛先に通知されない
2者間ファクタリングは、3者間での契約と違って売掛先が取り引きに関与しません。そのため、ファクタリング会社の信用リスクが高くなってしまい、3者間ファクタリングよりも手数料が高く設定されやすいです。
しかし、売掛先に知られずに利用できるほか最短即日で入金されるため、場合によっては2者間ファクタリングのほうが有用といえます。
ファクタリングの税務処理で用いられる勘定科目
ファクタリング利用時の税務処理で用いられる勘定科目には、次に紹介する6種類があります。正しく仕訳するためにも、これから解説する内容をしっかり押さえましょう。
売掛金
「売掛金」は、商品またはサービスを販売した際に、あとからうけとる金額(売掛金)が発生したケースで使用する勘定科目です。取り引きによって売掛金が発生した場合の仕訳で使い、保証型・買取型のどちらのファクタリングサービスを利用する場合でも適用されます。
未収入金
「未収入金」は、本業以外の取り引きによって発生した未回収の売上のことです。ファクタリングの取り引きによって得た収入は「本業以外」に分類されるため、未収入金の勘定科目によって仕訳を行います。
売掛金と混同しやすいですが、通常の取り引きで得た資金は「売掛金」、それ以外は「未収入金」と覚えておきましょう。
売掛債権売却損
「売掛債権売却損」は、売掛債権を売却したことによって損失が発生した場合などに用いる勘定科目です。買取型のファクタリングにおいて、取り引きにかかる手数料を「売掛債権売却損」として仕訳を行います。
支払手数料
「支払手数料」は、支払いの際に発生した手数料を計上するときの勘定科目です。保証型のファクタリングにおいて、売掛先から売掛金が問題なく支払われた場合に、ファクタリング会社に対して発生する手数料を「支払手数料」を用いて仕訳を行います。
貸倒損失
「貸倒損失」は、債権が回収不能になったことで損失が発生した場合に使用する勘定科目です。ファクタリングでは、売掛金・未収入金などが受け取れなかった際の損失額を「貸倒損失」として仕訳を行います。
雑収入
「雑収入」は、本業以外で得られた収入のうち、ほかの勘定科目に該当しないものに対して使用する勘定科目です。
保証型のファクタリングでは、売掛金が回収できなかった場合にファクタリング会社から保証金が受けとることができ、その金額を「雑収入」として仕訳を行います。
ファクタリングの税務処理の例
ファクタリングの税務処理の仕方について、種類別に紹介していきます。
保証型ファクタリング
保証型のファクタリングの税務処理について詳しくみていきましょう。
ファクタリング契約の締結時
保証型のファクタリングの契約が結ばれた際、業者に対して保証料を支払う必要があります。
以下は、保証料が2万円だった場合の仕訳例です。
• 借方:「支払手数料」として2万円を記載
• 貸方:「現金預金」として2万円を記載
業者から入金されたかどうかに関係なく、契約が締結された時点で保証料が発生します。
売掛金の発生から入金まで
たとえば500万円の売掛金が発生した場合、以下のように仕訳を行います。
• 借方:「売掛金」として500万円を記載
• 貸方:「売上」として500万円を記載
売掛先から代金を回収したら売掛金がなくなり、現金が増えます。そのため、売掛金が入金された後の仕訳は以下のとおりです。
• 借方:「現金預金」として500万円を記載
• 貸方:「売掛金」として500万円を記載
売掛金が回収不能になった場合
売掛金が回収不能なケースでも、売掛金が発生した際に仕訳を行うのは同様です。
• 借方:「売掛金」として500万円を記載
• 貸方:「売上」として500万円を記載
売掛金を回収できないことが確定した時点で、以下のように仕訳を行います。
• 借方:「貸倒損失」として500万円を記載
• 貸方:「売掛債権」として500万円を記載
そして、ファクタリング会社から支払われた保証金額を計上します。
• 借方:「現金預金」として500万円を記載
• 貸方:「雑収入」として500万円を記載
買取型ファクタリング
買取型のファクタリングの税務処理について詳しくみていきましょう。
3者間ファクタリング
売掛金が発生した際の仕訳については、保証型のファクタリングと同様です。
• 借方:「売掛金」として500万円を記載
• 貸方:「売上」として500万円を記載
買取型のファクタリングの場合、売掛金が業者から入金されるまで「未収入金」として振り分けます。
• 借方:「未収入金」として500万円を記載
• 貸方:「売掛金」として500万円を記載
ファクタリング会社から資金をうけとった後は、以下のように仕訳を行います。(仮に手数料を10%とした場合)
• 借方:「現金預金」として450万円を記載
• 借方:「売上債権売却損」として50万円を記載
• 貸方:「未収入金」として500万円を記載
2者間ファクタリング
売掛金の発生から入金までは3者間ファクタリングと同様です。
• 借方:「売掛金」として500万円を記載
• 貸方:「売上」として500万円を記載
• 借方:「未収入金」として500万円を記載
• 貸方:「売掛金」として500万円を記載
• 借方:「現金預金」として450万円を記載
• 借方:「売上債権売却損」として50万円を記載
• 貸方:「未収入金」として500万円を記載
しかし、2者間ファクタリングでは売掛金がファクタリング会社に直接入金されません。売掛先が関与しない契約なので、申込者が受け取った売掛金をファクタリング会社に支払う工程が発生します。
そのため、売掛金を回収した後の仕訳は以下の通りです。
• 借方:「現金預金」として500万円を記載
• 貸方:「預かり金」として500万円を記載
(業者に対して売掛金の支払いを行なった後)
• 借方:「預かり金」として500万円を記載
• 貸方:「現金預金」として500万円を記載
ファクタリングの税務処理で注意すべき点
ファクタリングの税務処理について、注意すべきポイントもあります。思わぬトラブルを避けるためにも、事前に理解しておきましょう。
契約書の内容を確認する
まずは、ファクタリングを禁止する旨の内容が契約書に記載されていないかチェックしてください。禁止条項が記載されている場合は、そもそもファクタリングが利用できません。また、3者間ファクタリングに申し込むのであれば売掛先の承諾が必要なため、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、支払い期日がすぎているのに未回収の債権に関しても、ファクタリングで資金化できる対象とはならないので注意が必要です。
手数料は「売上債権売却損」として計上する
買取型のファクタリングにかかる手数料は「売上債権売却損」として仕訳を行います。これは、ファクタリングを活用することによって本来受け取る予定の売掛金額から手数料が引かれて、利用者が実質的に損していると考えるためです。
ただし、会計ソフトによっては「売上債権売却損」が選べない場合もあります。そのようなケースでは、「支払手数料」や「雑損失」などの勘定科目で計上しましょう。
ファクタリングの取り引きでは消費税がかからない
売掛債権の譲渡に関しては、国税庁が定める「非課税となる取引(有価証券等の譲渡) 」に含まれます。そのため、ファクタリングの取り引きには消費税がかかりません。ファクタリングにかかる手数料の消費税も非課税です。中には、ファクタリングの取り引き金額や手数料に対して消費税を上乗せする悪徳業者も存在するので、契約について十分にチェックしてください。
ただし、債権譲渡の登記が求められる場合において、司法書士に支払う手数料には消費税が課税されます。
ファクタリングを申し込む際は決算期末を避ける
ファクタリングを申し込むタイミングとして、決算期はなるべく避けましょう。
申し込みから入金までに決算期をまたぐケースでは、期末の時点で売掛金が未回収の状態です。しかし、消費税や法人税については計上している売上をもとに計算されるため、売掛金を回収する前に課税されます。
納税額が増える可能性があるため、ファクタリングの申し込みは決算期を避けるのが無難といえます。
ファクタリングの税務処理についてのまとめ
ファクタリングの税務処理は、「保証型」と「買取型」で異なります。さらに、買取型のファクタリングには「2者間」と「3者間」の2種類があり、仕訳の手順に違いがある点に注意しましょう。
ファクタリングの税務処理で不明な点がある場合は、税理士などに相談するのも一つの手です。商工会や商工会議所が相談にのってくれる場合もあるため、より利用しやすい相談先を探してみるのも良いでしょう。
本記事の内容を参考にして、適切に税務処理を行うのに役立ててください。