クリニック向けの資金調達!医療ファクタリングの現状やメリットについて解説
一般企業においては、資金調達方法としてファクタリングを利用されることが増えています。一般企業だけでなく、クリニックなどの医療機関もファクタリングを利用することが可能です。クリニックなど医療機関に特化した医療ファクタリングサービスもあり、資金調達に活用できます。しかし、活用する前に、どのようなメリットがあるのか、現状はどうなっているのかなど知っておきたいものです。本記事では、クリニックにおすすめの医療ファクタリングの現状や、メリットなどについて解説します。
目次
クリニックが利用できる医療ファクタリングとは?
医療ファクタリングは、医療機関や調剤薬局、介護事業者へ向けたファクタリングサービスです。医療ファクタリングの仕組みや流れは、次のようになります。
●医療ファクタリングの仕組み
●医療ファクタリングの流れ
●医療ファクタリングの種類
●利用できるのはクリニックだけではない
では、それぞれについて詳しく解説します。
医療ファクタリングの仕組み
医療ファクタリングの仕組みは、医療報酬債権を業者に譲渡し、現金化するというものです。通常、クリニックが診療時に受取るのは、患者の自己負担金のみです。保険でカバーされる分の医療費は、健康保険組合などから2か月後に支払われます。医療ファクタリングは、レセプトを業者へ売却し、医療報酬の支払期日より早く資金調達ができるシステムです。
医療ファクタリングの流れ
医療ファクタリングを利用する流れは、次の通りです。
●クリニックがファクタリング業者にレセプトを譲渡
●業者がレセプトの額の約8割をクリニックに支払う(1度目支払)
●クリニックが審査支払機関にレセプトを送付して診療報酬を請求
●審査支払機関がレセプトを審査後、確定した診療報酬を業者に支払う
●業者に支払われた診療報酬から、一度目支払額・手数料が差し引かれた額をクリニックに支払う(2度目支払)
業者からクリニックへの支払が2度に分けられるのは、レセプトを送付した時点では診療報酬額が確定していないからです。審査後に診療報酬額が確定するため、そこから買取対象額を引いた残りが支払われます。
医療ファクタリングの種類
医療ファクタリングは、次の3つの種類があります。
●診療報酬ファクタリング
●介護報酬ファクタリング
●調剤報酬ファクタリング
診療報酬ファクタリングは病院やクリニック向けのサービスで、譲渡するのはレセプトです。介護報酬ファクタリングは介護サービス事業者向けのサービスで、譲渡するのは介護保険給付費明細書となります。調剤報酬ファクタリングは調剤薬局向けのサービスで、譲渡するのは調剤報酬明細書が対象です。
これら3つをまとめて、医療ファクタリングと呼びます。
利用できるのはクリニックだけではない
診療報酬ファクタリングは、病院やクリニック向けのサービスではあるものの、保険診療を行っている機関であれば利用できます。国家資格を持つ柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ師が在籍し、保険診療を行っている整骨院・鍼灸院・あん摩マッサージ店なども対象です。
保険診療ではない整体やボディワークのお店は対象外です。ただし、売掛債権を譲渡する、通常のファクタリングなら利用できます。
クリニック向けの診療報酬ファクタリングの現状
診療報酬ファクタリングの現状は、次の通りです。
●手数料
●掛け目が高い
●クリニックの倒産リスク
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
手数料
診療報酬ファクタリングの売掛先は、国民健康保険や社会保険支払基金です。そのため、業者が貸し倒れになるリスクはほとんどありません。リスクが低いことから、通常のファクタリングよりもかなり低く設定されています。通常のファクタリングの手数料は1%~30%が相場であるのに対し、診療報酬ファクタリングの相場は0.2%~1%です。
診療報酬ファクタリングの手数料を回収サイト60日で年利に換算すると、手数料率0.2%の場合は年利1.2%、手数料率1%の場合は年利6%です。融資を受ける場合、金利の上限は15%~20%と設定されていますが、それよりも低い金利で資金調達できます。そのため、融資よりも効率の良い資金調達方法といえるでしょう。
掛け目が高い
ファクタリングでは、売掛債権の額面100%を買取ってもらえるわけではありません。リスクに合わせて掛け目が設定されており、通常は70%~80%です。診療報酬ファクタリングは、業者のリスクが極めて低いため、掛け目も高くなります。掛け目の相場は、80%~95%ほどです。
クリニックの倒産リスク
ファクタリングにおいて、利用者の経営状態よりも、売掛先の経営状態が重視されます。診療報酬ファクタリングにおいての売掛先は、国民健康保険や社会保険支払基金と強固であるため、クリニックの倒産リスクはそれほど重要視されません。
とはいえ、クリニックの倒産もほとんどなく、医師の高齢化による解散や廃業の方が多数です。そのため、クリニックは業者によって優良な顧客として認識されています。
診療報酬ファクタリングを利用するメリット
クリニックが診療報酬ファクタリングを利用するメリットは、次の通りです。
●審査の難易度が低い
●有利な条件で契約
●売掛先への通知を気にする必要がない
●財務状況が改善
では、それぞれのメリットを詳しく解説します。
審査の難易度が低い
ファクタリングはそもそも審査の難易度が低く、融資のような厳しい基準は設けられていません。保証人や担保も必要なく、売掛先の経営状態が安定していれば審査に通るのが一般的です。診療報酬ファクタリングの売掛先は国民健康保険や社会保険など、大本は国であるため、倒産のリスクはほとんどありません。未回収リスクが実質ゼロに近いため、通常のファクタリングよりも審査の難易度が低くなります。
有利な条件で契約
診療報酬ファクタリングの売掛先が国であることは、有利な条件での契約につながります。国は倒産するリスクがないため、業者は貸し倒れの心配がないからです。そのため、利用者は低い金利で利用できたり、高い掛け目で利用できたりと、恩恵が得られます。
売掛先への通知を気にする必要がない
診療報酬ファクタリングにおいては、売掛先への通知を気にする必要がありません。通常のファクタリングでは、利用する旨を売掛先に通知することで、資金繰りに困っていると勘繰られてしまいます。その後の取引に、少なからず影響を与えることもあるでしょう。しかし、診療報酬ファクタリングの売掛先は国であるため、資金繰りの悪化を勘繰られたり、取引に影響を与えたりする心配もありません。
財務状況が改善
財務状況が改善できるのも、メリットにあげられます。レセプトの支払サイトは、一般企業の売掛債権よりも長い傾向があります。そのため、支払期日までに資金繰りが苦しくなることもあるでしょう。診療報酬ファクタリングを利用すると、素早く現金化できるため、財務状況が改善できるのです。
医療ファクタリングを利用するデメリット
医療ファクタリングを利用するデメリットは、次の通りです。
●受取る報酬が減る
●長期的な利用で資金繰りが悪化するリスク
●扱っている業者が少ない
●悪徳業者がある
では、それぞれのデメリットについて詳しく見てみましょう。
受取る報酬が減る
診療報酬ファクタリングを利用するデメリットは、受取る報酬が減ることです。通常のファクタリングよりも好条件で契約できるとはいえ、手数料の差し引かれた金額が支払われます。満額が支払われるわけではないのです。
ただし、融資など他の資金調達方法と比較すると、格段に手数料が低く設定されているため、優良な調達方法であることには変わりありません。
長期的な利用で資金繰りが悪化するリスク
長期的な利用で資金繰りが悪化するリスクがあることも、デメリットにあげられます。診療報酬ファクタリングで差し引かれる手数料は一般的なものより少ないとはいえ、長期的に利用することで少しずつ資金繰りを蝕むことも考えられます。
本来受取る診療報酬よりも少ない金額しか受け取れないため、財務状況が悪化してしまうのです。継続的に利用するのではなく、必要な時だけ利用するのが賢明です。
扱っている業者が少ない
扱っている業者が少ないのも、デメリットにあげられます。診療報酬ファクタリングは医療機関向けの専門的なサービスです。専門的なサービスであるため、すべての業者が扱っているわけではありません。そのため、業者の選択肢は少ないといえます。
悪徳業者がある
悪徳業者が存在するのも、デメリットです。ファクタリングは金融庁からも推奨されている資金調達方法ではあるものの、偽装ファクタリングを行う業者も存在します。売買契約ではなく、貸金契約を行う業者は、悪徳業者の可能性が高くなります。契約書をしっかり確認し、手数料や契約形態をチェックしたうえで契約を締結してください。
診療報酬ファクタリングの利用に向いているクリニック
診療報酬ファクタリングの利用に向いているクリニックは、次のケースです。
●開業したばかりで資金が不足している
●早急に資金が必要
では、それぞれについて詳しく解説しましょう。
開業したばかりで資金が不足している
向いているケースは、開業したばかりで資金が不足しているクリニックです。開業したてのクリニックは、経営状況の見通しも立てにくいため、融資を受けるのが難しい場合もあります。適切な書類をそろえても、審査に落ちることもあるのです。
診療報酬ファクタリングは、売掛先の信用力が重視されるため、審査落ちすることはまずありません。審査落ちするリスクが少ないため、開業したてのクリニックも資金調達しやすいでしょう。
早急に資金が必要
早急に資金が必要なケースも、ファクタリング利用に向いています。診療報酬の支払は、支払期日が2か月~3か月後に設定されているのがほとんどです。支払期日までの期間が長いため、資金ショートすることもあるかもしれません。ファクタリングを利用すれば、支払期日を待たずとも、数日で調達できます。
クリニック向けのファクタリングについてのまとめ
クリニックは、通常のファクタリングよりも、医療機関に特化した診療報酬ファクタリングを利用するのがおすすめです。手数料は低く、掛け目も高く設定されているため、融資よりも有利な条件で資金調達ができます。審査で落ちるリスクもほとんどなく、スピーディーに現金化できるため、資金繰りが難しい時は利用すると良いでしょう。