リバースファクタリングとは?ファクタリングとの違いや利用の流れ、メリットを解説
リバースファクタリングは、その名称からファクタリングと同一視されてしまいがちなサービスです。しかし、依頼元や契約方法など、システムも異なります。発注側・受注側にとってメリットのある方法ですが、デメリットも存在するため、利用する前に概要を知っておく必要があります。また、どのような流れで利用するのかも、気になるところです。本記事では、リバースファクタリングの利用の流れやファクタリングとの違い、向いている企業などについて解説します。
目次
リバースファクタリングとは?
リバースファクタリングは、どのようなサービスなのでしょう。概要は次の通りです。
●仕組み
●流れ
●利用の条件
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
仕組み
リバースファクタリングは、買掛金の立て替えです。発注企業に代わり、業者が受注企業へ前倒し入金します。その後、発注企業は定められた期日に業者へ返済する仕組みです。
流れ
利用する前に、全体の流れを知っておく必要があるでしょう。利用する際の流れは、次の通りです。
●受注企業が発注企業に製品を納品し、請求書を発行
●発注企業がファクタリング業者に請求書を発行
●ファクタリング業者が受注企業に支払う
●発注企業は通常の支払い期日までにファクタリング業者へ費用を支払う
掛け取引において成立するシステムで、現金取引や手形取引では利用できません。
利用の条件
利用条件は、取引形態が掛け取引で、買掛金が発生していることです。ただし、審査があるため、審査に落ちると利用できません。審査対象である発注企業の信用力が低い場合、却下されることがあります。また、発注企業・受注企業・ファクタリング業者の3社間で契約するため、受注企業の承認が必要になります。
リバースファクタリングの発注企業側のメリット
発注・受注企業、どちらの企業にもメリットがあるものの、発注側のメリットは、次の通りです。
●支払いサイトが延ばせる
●優秀な受注先を確保できる
●下請法に対応できる
では、それぞれの利点について詳しく見てみましょう。
支払いサイトが延ばせる
発注側の利点は、支払いサイトが延ばせることです。業者に買掛金を立て替えてもらうことで、手元の資金を別の目的で活用できます。自転車操業で運営している企業は、資金繰りの改善がしやすくなるでしょう。
優秀な受注先を確保できる
優秀な受注先を確保しやすいのも利点です。受注先からすると、代金はできるだけ早く回収したいものです。請求後、早急に支払う発注先は、優良な取引先だと評価されるでしょう。リバースファクタリングは、受注企業が前倒しで代金を回収できるため、安心して取引できます。支払いが早いと評価してもらえれば、優秀な受注先を確保しやすくなるはずです。
下請法に対応できる
下請法に対応できることもメリットです。下請法は、発注者から受注者(下請企業)への受注の際に、下請企業に不利な契約が結ばれないための法律です。法律では、支払いサイトは商品受領後60日以内と定められているため、発注者にとって厳しい場合もあります。リバースファクタリングを利用すれば、買掛金の立て替えを業者に依頼し、下請法を守ることが可能です。
リバースファクタリングの受注企業側のメリット
リバースファクタリングは、発注企業が利用したいと思っても、受注企業の承諾がなければ利用できません。そのため、承諾を得られるように、メリットを理解して交渉することが必要です。受注企業側のメリットは、次の通りです。
●売掛金の早期回収
●貸し倒れ回避
●調達コストの低減
では、それぞれの利点について詳しく見てみましょう。
売掛金の早期回収
受注側のメリットは、売掛金の早期回収です。通常、支払い期日まで入金を待たねばなりませんが、リバースファクタリングを利用すれば前倒しで回収することも可能です。希望すれば支払い日を早めてくれるため、急場がしのげます。ただし、期日を早める場合は手数料が発生することもあるため、事前に確認することが必要です。
貸し倒れ回避
貸し倒れを回避できることも利点です。支払いサイトが長いと、それまでに発注先が倒産する可能性があるでしょう。発注先が倒産すると売掛金の回収ができないため、受注企業まで経営が苦しくなってしまいます。最悪の場合、連鎖倒産もあり得ます。リバースファクタリングを利用すれば、ファクタリング業者から支払われるため、発注先の倒産などの心配はいりません。
調達コストの低減
資金調達コストが低減できることも利点です。2社間ファクタリングで調達する場合、手数料は9%~20%が相場となっており、高いコストがかかってしまいます。リバースファクタリングであれば、3社間ファクタリングの手数料が適用されるため、相場は1%~5%と低めです。資金調達が必要な場合、メリットを感じられるでしょう。
リバースファクタリングの発注企業側のデメリット
リバースファクタリングは発注企業にとってメリットが多いものの、デメリットもあります。発注企業側のデメリットは、次の通りです。
●自社が審査対象
●対応業者が少ない
●受注企業の同意が必要
●電子記録債権の導入が必須
では、それぞれのデメリットについて詳しく見てみましょう。
自社が審査対象
自社が審査対象になることは、考慮すべき点です。経営状態が悪いと判断されると、利用できない場合があります。なぜなら、業者が立て替えた買掛金を返済するという形になるため、支払い能力がないと、業者が貸し倒れとなるからです。そのため、自社の支払い能力が審査されます。支払いの遅延や税金の滞納など、過去に問題があった場合は審査に通るのが難しいでしょう。
対応業者が少ない
デメリットは、対応業者が少ないことです。リバースファクタリングを提供している業者自体が少なく、比較対照できません。そのため、条件がいいのか悪いのかも、わかりにくいでしょう。リバースファクタリングを行うには資金力が必要となるため、積極的に行っている業者が少ないのです。少ない中からも、優良な業者を見つけて利用するのがよいでしょう。
受注企業の同意が必要
受注企業の同意が必要なこともデメリットです。受注企業・発注企業・ファクタリング業者の3社で契約するため、発注企業の承諾がなければサービスを利用できません。発注企業の意志だけで決められないところが不便です。
電子記録債権の導入が必須
デメリットは、電子記録債権の導入が必須なことです。電子記録債権は、一般的にはでんさいと呼ばれている決済方法です。手形や振込に代わる決済方法で、新しい金銭債権として利用されています。
ただし、電子記録債権を導入するためには、審査に通らなければなりません。でんさいを導入できなければ、リバースファクタリングも利用できないのです。また、発注企業だけでなく、受注企業も導入する必要があります。
リバースファクタリングの受注企業側のデメリット
受注企業側のデメリットは、次の2つがあげられます。
●電子記録債権の導入
●手数料がかかる
では、それぞれのポイントについて詳しく見てみましょう。
電子記録債権の導入
電子記録債権の導入が必要なことも、考慮すべき点です。発注企業だけでなく、受注企業も導入しなければならないため、ハードルが高いでしょう。導入するつもりがあっても、電子記録債権の審査に落ちると導入できません。また、新しい決済方法であるため、導入後も使い方を学ぶなど手間取ることもあります。
手数料がかかる
受注側のデメリットは、手数料がかかることです。受注側が支払いの前倒しを希望する場合、額面の1%~5%ほどの手数料がかかります。手数料は支払いサイトの長さや額面によって変動し、支払いサイトが長いほど高くなる傾向です。早期に代金を回収して資金繰りを改善できるものの、手数料が差し引かれるため受け取る金額は少なくなってしまいます。資金繰りが必要でない場合、むやみに前倒しで回収しない方がよいでしょう。
リバースファクタリングが向いている企業
リバースファクタリングが向いているのは、次の特徴がある企業です。当てはまる場合は、利用を考えてみるとよいでしょう。
●支払いサイトが短くて資金繰りができない
●支払いのタイミングが集中している
●下請法が適用される企業と取引している
では、それぞれの特徴について解説します。
支払いサイトが短くて資金繰りができない
支払いサイトが短く、資金繰りに苦労している企業に向いています。苦しいままの状態で短いサイトの支払いを続けていると、余裕をもって企業が運営できなくなります。リバースファクタリングで期日を先延ばしにすれば、猶予ができるため資金繰りを立て直しやすくなるでしょう。
支払いのタイミングが集中している
複数の支払いタイミングが集中している企業にも向いています。リバースファクタリングで支払いのタイミングをずらすことで、支払い時期を分散し、資金繰りを改善できます。
下請法が適用される企業と取引している
下請法が適用される企業と取引している場合も、活用できるでしょう。60日以内に支払いが難しくても、下請法に違反することなく支払いができます。
リバースファクタリングについてのまとめ
リバースファクタリングは、発注企業と受注企業のどちらにもメリットのある方法です。発注企業は支払いサイトが延ばせるため、その間に資金繰りを改善させられます。また、受注企業も代金を前倒しで払ってもらえるため、スピーディーな資金調達が可能です。しかし、利用するには電子記録債権を導入するなどの手間もかかります。そもそも、対応している業者が少ないため、適切なサービスであるかしっかり見極めて利用する必要があるでしょう。