ファクタリングの審査とは?基準と通過するコツ・手続きの流れや必要書類を解説
ファクタリングは、企業や個人事業の資金繰りを改善するのに有効な手段です。しかし、審査を通過しなければ利用できないため、審査内容や審査を受けるまでの手順について知りたい方も多いでしょう。
ファクタリングは金融機関が行う融資とは異なり、売掛先の信用力や取引実績などが審査のポイントとなる独自の仕組みで審査を行います。
本記事では、ファクタリングの審査基準や通過するためのコツ、必要書類や審査の流れまでをわかりやすく解説します。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に買い取ってもらい、早期に資金化する仕組みです。主に資金繰りを改善したい事業者が利用し、融資とは異なるため、比較的柔軟に利用できることが特徴です。
ファクタリングの取引形態には、以下の3分類があります。
- 2社間:利用者とファクタリング会社のみで契約する形式
- 3社間:売掛先も含めた三者で契約を結ぶ形式
- 収納代行型:ファクタリング会社が売掛先から直接入金を受け取る形式
各取引形態は、それぞれ特徴が異なります。ファクタリングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
ファクタリングとは?仕組みや種類・メリット・デメリットなどを解説
ファクタリングの審査内容
ファクタリングを利用するためには、審査に通過する必要があります。ファクタリングの審査が銀行融資などと大きく異なる点は、売掛先の信用力や取引実績などが影響することです。
ここでは、ファクタリングの審査内容について詳しく解説します。
売掛先の信用力
ファクタリングの審査では、利用者自身の財務状況に加え、売掛先の信用力も重視されます。例えば、利用者である企業の財務状況が多少不安定でも、売掛先の経営状態が安定しており、支払い能力に問題がなければ審査を通過する可能性はあるでしょう。
ただし、2社間ファクタリングでは売掛金を回収する役割も利用者にあるため、利用者自身の信頼性も審査対象として重視されます。
売掛金の支払い期日
売掛金の支払い期日も審査基準のひとつです。支払い期日が長い場合、ファクタリング会社が資金を回収するまでのリスク期間が延びるため、審査のハードルが高くなります。
例えば、支払いが2〜3カ月先の場合、その間に売掛先が倒産するなどのリスクが考慮され、審査が慎重になることもあるでしょう。
一方、支払い期日が近い売掛金は回収リスクが低く評価されやすいため、審査に通りやすい傾向があります。ファクタリングを申し込む際のポイントは、支払い予定日が近い売掛金を選ぶことです。
売掛先との取引実績
ファクタリングの審査では、売掛金の回収可能性も重要視されるポイントです。そのため、確実に売掛金を回収できるか判断する材料として、売掛先との取引実績も審査項目に含まれます。
これまでに継続的な取引があり、支払い遅延などの問題がなければ、信頼性の高い売掛先と評価され、審査を通過する可能性が高くなるでしょう。
一方で過去の取引実績が少ない、または新規取引先の売掛金は、回収リスクが高いと判断されることもあります。そのため、審査に通過するためには長期かつ安定した取引先の債権を選ぶと良いでしょう。
不正な売掛金ではないか
ファクタリングの審査では、売掛金の実在性も厳しくチェックされます。
例えば、実際には行われていない取引の請求書を発行したり、架空の取引を装って債権を提出したりするケースは審査に通りません。さらに、こうした不正行為は詐欺罪に該当する可能性もあり、発覚すれば取引停止に加え、法的責任を問われる可能性もあります。
ファクタリング会社は、請求書や契約書の内容、取引履歴などから売掛金の正当性を慎重に確認します。審査を受ける際には、誤った取引情報などを提示しないように注意しましょう。
ファクタリングの審査に落ちる理由
ファクタリングの審査に落ちる主な原因は、以下の3つです。
- 売掛先の信用力がない
- 二重譲渡が発生している
- 利用者の信用力が低い
ひとつずつ詳しく解説します。
売掛先の信用力がない
ファクタリングでは、売掛先の信用力も重要な審査項目です。売掛先の経営状態が悪化していたり過去に金融事故を起こしていたりする場合、支払い能力に不安があると判断され、審査に落ちる可能性もあります。
また、個人事業主や設立間もない会社、ペーパーカンパニーなどは信用調査が困難であり、リスクが高いと評価されやすい傾向があります。ファクタリングを利用する際には、売掛先の信用力を事前に確認しておきましょう。
二重譲渡が発生している
二重譲渡とは、同じ売掛債権を複数の会社に重ねて売却する行為のことです。
ファクタリング会社の契約では一般的に、債権を譲渡できるのは1社のみと決められています。そのため、複数社から資金を不正に得ようとする場合は規約違反になり、さらに詐欺罪に問われる可能性もあるくらいです。
ファクタリングの審査では、債権の重複譲渡がないかを登記情報や契約書の整合性から厳しくチェックしています。二重譲渡の疑念がある場合は即座に審査を打ち切られます。
利用者の信用力が低い
ファクタリングの審査では売掛先の信用に加え、利用者自身の信用力も重要です。例えば、利用者が以下のような状態になっている場合、審査を通過できない可能性があります。
- 税金や社会保険料を滞納している
- 直近の決算で赤字や債務超過に陥っている
- 代表者の過去に金融事故歴(借り入れの遅滞など)がある
- あまりにも事業実績が乏しい会社
上記の他にも、利用者の信用力が低いと判断された場合、ファクタリングの審査に通らない可能性があります。信用力不足で審査に通らなかった場合、提出書類や信用情報を整えてから再度申し込みましょう。
ファクタリングの審査に通過するポイント
ファクタリングの審査では、通過しやすいポイントを事前に理解しておくことで、時間と手間をかけずに資金を調達できます。審査を通過するためのポイントは、以下のとおりです。
- 信用力の高い売掛先の債権を選ぶ
- 支払い期日の近い売掛金を利用する
- 複数の会社に審査を申し込む
いち早く資金調達をするために、ひとつずつ見ていきましょう。
信用力の高い売掛先の債権を選ぶ
ファクタリングの審査では、売掛先の信用力が高いほど審査通過の可能性が上がります。例えば、上場企業や官公庁、大手企業など、支払い能力に優れた売掛先の場合は高く評価されるでしょう。
また、取引歴が長く過去に遅延やトラブルがない場合も、信頼性があると判断されやすくなります。
逆に、実績が少ない企業や設立間もない会社の債権は審査で不利になることもあります。安定した取引実績のある企業の債権を選ぶことで、審査に通過しやすくなるでしょう。
支払い期日の近い売掛金を利用する
ファクタリングの審査では、売掛金の支払い期日が近いほど回収リスクが低く評価され、審査に通りやすくなります。
一般的に、支払い期日が2カ月以内の売掛金を選ぶと回収リスクが低減され、審査に通りやすくなります。ファクタリングを利用する際には、可能であれば支払い期日が2カ月を超えていない売掛金を選ぶようにしましょう。
複数の会社に審査を申し込む
ファクタリングの審査基準は会社によって異なります。条件や対応スピード、担当者との相性を比較するためにも、3社〜4社を目安に審査を申し込むと良いでしょう。
一方で、一度に多数の会社へ申し込むと確認対応が煩雑になったり、二重譲渡と誤解されるリスクもあったりします。そのため、複数社へ申し込む際は対象とする債権を変えるなどの対策が必要です。
なお、詳細な審査基準は各社で異なり、審査通過率を公開していない会社も数多くあります。
どの会社の基準で通過できるのか判断できないため、複数の会社に申し込み、最終的に審査に通過した1社に依頼するのも良いでしょう。
ファクタリング審査の流れ
ファクタリングの審査を受けてから入金までの手順は、以下の4ステップです。
- 問い合わせ
- 必要書類の提出
- 審査
- 契約と入金
各手順について詳しく解説します。
1.問い合わせ
ファクタリングを利用するには、まず希望する会社に問い合わせて審査を依頼します。対応方法は会社によって異なるものの、多くの場合はホームページ上の申し込みフォームや電話、メールなどから受け付けています。
事前に必要な情報や連絡手段を確認しておくと、スムーズに手続きを進められるでしょう。また、問い合わせ時に売掛先や希望金額などの基本情報を求められるケースが多いため、事前に準備しておくとスムーズに次の工程へ進めます。
2.必要書類の提出
ファクタリングの審査では、必要書類を提出することで利用者の信用力や売掛債権の実在性を確認します。一般的にファクタリングの審査に必要な書類は、以下のとおりです。利用者が法人の場合と個人事業主の場合で、必要な書類が異なります。
区分 | 書類 | 確認される情報 | 入手先 | 個人事業主 |
---|---|---|---|---|
必須の書類 | 商業登記簿謄本 | 会社の実在性・登記情報の確認 | 法務局 | × |
印鑑証明書 | 代表者の正当性、契約の事実確認 | 市区町村役場 | × | |
預金通帳のコピー | 入金実績や取引履歴の確認 | 金融機関 | ○ | |
決算書 | 財務状況や経営の健全性の確認 | 会計事務所 | × | |
売掛先との契約書/発注書 | 売掛債権の正当性と取引の事実の確認 | 取引先 | ○ | |
身分証明書 | 利用者本人の確認 | 本人 | ○ | |
任意の書類 | 確定申告書 | 所得状況や経営内容の確認 | 税務署 | ○ |
基本契約書 | 継続的な取引関係の証明 | 取引先 | ○ | |
納品書 | 商品・サービス提供の証明 | 取引先 | ○ |
また、ファクタリング会社によってはオンラインでの書類提出が可能です。必要書類について不明点がある方は、事前に会社へ問い合わせることをおすすめします。
3.審査
提出された書類をもとに、ファクタリング会社が売掛金の回収可能性や利用者・売掛先の信用力などを総合的に判断します。
審査に必要な時間はファクタリング会社によって異なり、最短即日で結果が出る場合もあれば、数日かかることもあります。書類に不備があると審査が遅れる原因になるため、早く資金を調達したい場合は、事前に準備しておきましょう。
4.契約と入金
審査に通過すると、ファクタリング会社と正式に契約を締結します。契約書には、手数料の料率や契約形態、保証の有無など、資金調達にかかわる重要な条件が明記されています。契約後のトラブルを避けるためにも、内容を確認してから署名しましょう。
契約が完了すると、売掛金の額面に応じた金額が指定口座に入金されます。会社によっては、即日入金に対応しているケースもあります。
ファクタリングの審査を受ける際の注意点
ファクタリングの審査を受ける際は、以下の3点に注意しましょう。
- 審査不要のファクタリング会社はない
- 債権譲渡禁止特約があっても審査に通る可能性はある
- 会社によって審査に時間を要する場合がある
注意点を把握していないと、ファクタリング利用後にトラブルが発生するおそれもあります。ひとつずつ見ていきましょう。
審査不要のファクタリング会社はない
一部の会社では、宣伝として「審査不要」と謳っている会社もあります。しかし、実際には、すべてのファクタリングに審査は必要です。審査を通じて売掛金の実在性や売掛先の支払い能力、詐欺リスクなどを確認し、適正な手数料も判断されます。
逆に審査を行わない会社の場合は、法外な手数料や不利な契約条件を押しつけてくる悪質業者の可能性が高いです。
スムーズで安全性の高い資金調達を行うには、正規の審査プロセスを経たファクタリングを選ぶことが重要です。
債権譲渡禁止特約があっても審査に通る可能性はある
債権譲渡禁止特約とは、売掛先が債権の第三者への譲渡を制限する契約条項のことです。以前は、この特約があることで売掛債権を譲渡できずファクタリングを利用できませんでした。しかし、2020年4月施行の民法改正によって、第四百六十六条の第2項にて、原則として譲渡可能となっています。
とはいえ、債権の譲渡が売掛先との信頼関係に影響を与えるおそれもあるため、債権譲渡禁止特約を結んでいる売掛先のファクタリングは慎重に判断することが大切です。
契約書にこの特約が含まれている場合は、事前にファクタリング会社へ相談しておくと良いでしょう。
会社によって審査に時間を要する場合がある
ファクタリングの審査にかかる時間は会社によって異なり、最短即日で終わる場合もあれば、3営業日以上かかることもあります。早く資金を調達したい方は、審査時間が短い会社を選ぶと良いでしょう。
また、必要書類の不備や確認事項が多くなったり、売掛先の信用調査に時間を要したりする場合は審査が長引くことがあります。一方で、書類を事前に揃えて売掛先との取引内容を明確にしておくことで、審査時間を短縮できる可能性があります。
迅速な資金調達を希望する場合は、審査が短い会社へ申し込み、事前に書類などの準備を済ませておくことが大切です。
売掛先企業へ知られる可能性がある
ファクタリングを利用する方の中には、売掛先の企業に知られたくない方も多いでしょう。基本的に、2社間ファクタリングを利用すれば、売掛先に知られずに取引が可能です。
しかし、債権譲渡登記を行う場合は、売掛先に知られてしまう可能性があります。債権譲渡登記とは、債権の譲渡を第三者に公示する手続きです。登記情報は誰でも確認できるため、売掛先に知られてしまう場合もあります。
債権譲渡登記の有無は、ファクタリング会社の方針によって異なります。売掛先へ知られたくない場合は、債権譲渡登記をせずに2社間ファクタリングを利用できるか、事前に確認しておきましょう。
まとめ
ファクタリングの審査基準は、一定の傾向があるものの、詳細な条件は会社ごとに異なります。まずは、複数社に申し込み、条件を比較検討することが重要です。
仮に他社で審査に落ちた場合でも、別の会社で通過する可能性はあります。いち早く資金を調達したい方は、審査から入金までのスピードが早い会社を選択すると良いでしょう。
Easy factorは申込みから最短60分での入金に対応しています。審査から入金までの手続きがオンラインで完結するため、申込みにあたって手間もかかりません。いち早く資金調達を行いたい方は、EasyFactorへご相談ください。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。ニューヨーク支店での非日系企業向けコーポレートファイナンス担当を経て独立。企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
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