売掛保証とファクタリングの違いは?仕組みやメリット・デメリットを比較
売掛金を契約に用いるサービスとして「売掛保証」と「ファクタリング」の2つがあります。両者とも売掛金の回収不能リスクに備える手段として有効ですが、具体的にどのような違いがあるか理解している方は少ないでしょう。
そこで本記事では、売掛保証・ファクタリングの仕組みやメリット・デメリットを比較していきます。どちらを利用すればよいか迷っている方は、ぜひ解説する内容を参考にしてみてください。
目次
売掛保証とファクタリングの仕組みの違いを比較
まず、売掛保証・ファクタリングの仕組みには具体的にどのような違いがあるか、両者を比較していきましょう。
売掛保証の仕組み
「売掛保証」とは、売掛先の倒産などによって売掛金が回収できなくなった場合に、保証会社が貸し倒れによる損失を保証してくれるサービスです。
売掛保証は、以下のような流れでおこなわれます。
1.売掛先の基本情報や取り引きの内容を登録する
2.提供された情報をもとに、売掛先の与信審査をおこなう
3.審査に通過したら、保証会社と契約する
4.契約後に売掛金が回収不能になった場合、売掛保証が適用される
5.保証請求がおこなわれ、保証会社が保証金の支払いをおこなう
このように、売掛金が回収不能になっても損失が出るのを避けられるのが、売掛保証のサービス内容です。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングには「買取型ファクタリング」と「保証型ファクタリング」があり、売掛保証=保証型ファクタリングとして扱われる場合があります。そのため、こちらではより一般的な「買取型ファクタリング」の説明をしていきます。
「買取型ファクタリング」とは、売掛債権をファクタリングを行う業者に譲渡することで、支払い期日の前に資金調達できるサービスです。
買取型ファクタリングは、以下のような流れでおこなわれます。
1.申込者が売掛先に請求書を発行
2.申込者が売掛金の売却をファクタリングを行う業者に申し込み、審査がおこなわれる
3.審査を通過すると、ファクタリングを行う業者から申込者へ条件が提示される
4.条件の合意後、売掛金の売却がおこなわれて、申込者が取引金額を受け取る
5.売掛金がファクタリングを行う業者へ支払われる
このように、ファクタリングを活用して売掛金を早期に現金化することにより、資金の未回収リスクをしながら資金調達が可能です。
売掛保証とファクタリングの違い
売掛保証・ファクタリングの大きな違いとして、「サービスを利用する目的」と「売掛金の債権者」が挙げられます。
• 売掛保証の目的:売掛金が回収不能に陥るリスクに備えたい
• ファクタリングの目的:入金予定日より前に資金調達がしたい
• 売掛保証の債権者:売掛債権を譲渡しないため自社
• ファクタリングの債権者:売掛債権を譲渡するためファクタリングを行う業者
売掛保証は資金の未回収リスクへの対策、ファクタリングは資金調達がメインと考えても差し支えないでしょう。
売掛保証のメリット
売掛保証にはどのようなメリットがあるか、詳しくみていきましょう。
貸し倒れによる損失を避けられる
売掛保証を利用する最大のメリットは、貸し倒れの損失を被らずにすむことです。
売掛先が倒産するなどの理由から、売掛金が回収できなくなるリスクはゼロとは言い切れません。売掛金が回収不能な事態に陥った場合、資金繰りの悪化を招いて経営状態が悪くなる可能性があります。
このような場合に売掛保証を活用していれば、保証会社から保証金が支払われるため、売掛金の損失分を補填することが可能です。
与信審査としても活用できる
売掛先の与信審査としても活用できる点も、売掛保証のメリットの一つです。
売掛保証に申し込むことで、保証会社が売掛先の与信管理をおこないます。取引先の与信審査は信用取引において重要ですが、中小規模の事業者ではコストや人材の問題で、おこなうのが難しいです。しかし、保証会社に与信審査をおこなってもらうことで、本業に専念できて業務の効率化が期待できます。
売掛先に知られずに申し込める
売掛保証のサービスに申し込んでも、売掛先に通知されることは基本的にないので安心してください。
売掛保証を契約していることが売掛先に知られると、「信頼性が築けていない」と思われてしまい、今後の取り引きに影響する可能性があります。しかし売掛保証は、申込者と保証会社のみで契約するため、保証会社が売掛先に直接連絡を取るようなことは原則としてありません。そのため、売掛先に不信感を持たせることなく未回収リスクの対策ができます。
売掛保証のデメリット
売掛保証には次に紹介するようなデメリットもあるため、利用を検討する前に必ず押さえておきましょう。
手数料が発生する
売掛保証のデメリットの一つとして、手数料がかかることが挙げられます。
売掛保証の申込者は、売掛金を回収できないリスクに備えられる対価として手数料(保証料)を支払う必要があります。要求される手数料は、売掛先や条件などによって異なりますが、相場は5〜15%ほどです。
保険商品などと同様に、保証を受けるにはある程度の保証料を支払う必要があることを理解しておきましょう。
保証を受けるまでに時間がかかる
売掛保証は資金調達の手段ではないため、損失が出てから保証されるまでに時間がかかりやすいです。
売掛保証の流れとして、売掛金が回収できなくなったことがわかったら、保証会社に対して申告をおこなわなければいけません。そして、売掛金が未回収であることを保証会社が確認できた後、保証金の支払いがおこなわれます。また、必要書類の提出が求められる場合がほとんどのため、時間だけでなく労力もかかります。
売掛保証を契約していても、すぐに売掛金の損失の補填ができるわけではないので注意しましょう。
売掛先によっては審査に通らない
売掛保証の契約をする際、保証会社による審査がおこなわれます。このとき審査されるのは主に売掛先の与信のため、売掛先の信用力が低いと売掛保証を断られる可能性が高いです。また、すでに支払いの遅延が起きている売掛金についても保証してもらうのは難しいでしょう。
売掛保証は、売掛金が回収不能におちいるリスクに備えるための手段として便利ですが、必ず利用できるわけではない点を理解しておく必要があります。
ファクタリングのメリット
ファクタリングにはどのようなメリットがあるか、詳しくみていきましょう。
スピーディーに資金が工面できる
ファクタリングのメリットとして、資金調達のスピードが速いことが挙げられます。
借り入れなど他の資金調達方法だと、申し込みから入金まで1か月以上かかってしまうことも考えられます。しかし、ファクタリングに申し込めば、最短即日で売掛金を現金化することが可能です。
売掛債権を保有していれば申し込めるので、借り入れの審査に通らない場合に利用を検討してみましょう。
信用情報への影響がない
信用情報への影響がない点も、ファクタリングのメリットの一つです。
ファクタリングは、売掛金=自社が保有する資産を資金化する取り引きのため、他者からお金を借りるわけではありません。そのため、ファクタリングの利用歴があっても信用情報に記録されないので安心です。また、信用情報が悪い場合でもファクタリングに申し込めるのもうれしいポイントと言えます。
安定した経営につながる
早期に現金化した売掛金は、借り入れと違って返済する必要がないため、企業のキャッシュフロー(資金の流れ)が安定します。これにより、資金不足の不安がなくなるため計画的な資金運用をおこなうことが可能です。設備投資や事業拡大に専念できれば、安定した経営基盤を築いていくことにもつながります。結果として、企業の生産性の向上も見込めるでしょう。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングには次に紹介するようなデメリットもあるため、利用を検討する前に必ず押さえておきましょう。
手数料が発生する
売掛保証と同じく、ファクタリング利用においても手数料がかかる点に注意しましょう。
手数料の相場は以下を参考にしてください。
• 2社間ファクタリング:10〜20%程度
• 3社間ファクタリング:2〜9%程度
2社間ファクタリングは、すぐに資金調達できる代わりに手数料が高めに設定されています。一方で3社間ファクタリングは、手数料が低いものの申し込むには売掛先の承諾が必要です。
調達できる金額の上限が決まっている
ファクタリングで調達できる資金の範囲は、売掛金額に依存します。売掛金を超える金額は工面できないことを理解しておきましょう。
また、売掛金額の100%を早期現金化できるわけではありません。ファクタリングを行う業者の貸し倒れリスクによって「掛け目」と呼ばれる割合が適用されます。これにより、実際に入金されるのは「売掛金額の70〜90%程度」となるので注意しましょう。
第三者に売掛債権の譲渡について知られる可能性がある
先ほど少し触れましたが、3社間ファクタリングに申し込む場合は売掛先の承諾が必要になるため、秘密裏に利用することはできません。そのため、売掛先に知られたくない場合は2社間ファクタリングを選択する必要があります。
ただし、2社間ファクタリングでは売掛先が契約に関与しない分、二重譲渡などの対策として債権譲渡の登記を求められる場合が多いです。登記された情報は、売掛先を含めた第三者が閲覧できるため、そこからファクタリング利用について知られてしまう可能性があります。
売掛保証とファクタリングの違いについてのまとめ
売掛保証・ファクタリングの違いとしては、「なぜサービスを利用するか」が大きいです。売掛保証は「売掛金が回収不能に陥るリスクに備えるため」、ファクタリングは「売掛金を期日前に現金化するため」という理由で利用するので、両者は明確に異なります。
本記事で紹介したメリット・デメリットも参考にしながら、自社に合ったサービスを利用しましょう。