ファクタリングにおける債権譲渡とは?取引の概要や登記について解説
ファクタリングにおいては「債権譲渡」と呼ばれる考え方があります。
これから、売掛債権を現金化したいと考えているならば、必ず理解しておきたい内容です。
とはいえ、法律的な内容で難しいキーワードであることから、理解できていない人は多いでしょう。
根本的な部分から、ファクタリングにおける債権譲渡まで、それぞれについて解説します。
目次
債権譲渡とは
最初に、債権譲渡の概要について理解を深めておきましょう。
まず「債権」とは、何かしらの行為や給付を請求できる権利を指します。
これは法律的な定義ですが、実際には金銭を請求する権利として理解されることが大半です。
つまり、債権譲渡とは、金銭を請求する権利を誰かしらへ譲渡することを指します。
皆さんの中には「債権のように法律に関するものを譲渡して良いのか」と考える人がいるかもしれません。
ただ、民法第466条には「債権の譲渡性」が定められていて、これを踏まえると合法的な取引です。
一般的なイメージとは裏腹に、債権を譲渡することは、法的に問題ありません。
ファクタリングと債権譲渡の関係
債権譲渡については理解してもらえたでしょう。
続いては、ファクタリングと債権譲渡の関係について解説します。
ファクタリングの概要
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社へ譲渡して、現金化する取引です。
本来、売掛債権は支払期日を迎えるまで現金化できず、手元に現金がない状況が続いてしまいます。
ただ、これではキャッシュフローに問題が生じることがあるため、ファクタリングによって解決するのです。
売掛債権をファクタリングすれば、最短で即日、売上債権から現金を調達できます。
キャッシュフローの改善に役立つサービスですが、手数料が発生するなどのデメリットもある取引です。
そのため、ファクタリングを利用する際は、総合的に検討して判断を下さなければなりません。
売掛債権の譲渡
売掛債権を「譲渡する」という取引であるため、債権譲渡について理解しなければなりません。
正しく理解できていなければ「ファクタリングは違法な取引なのではないか」と誤認する原因になってしまいます。
なお、債権譲渡においては、必ずしも金銭を支払う必要はありません。
「譲渡」は無償で提供する際にも利用される言葉です。
ただ、ファクタリングにおいては、譲渡の対価として金銭が支払われることで、現金化できるようになっています。
また、一般的な債権譲渡は契約書などを交わしてから実施されますが、口約束でも成り立ってしまうものです。
ファクタリングでの債権譲渡登記
ファクタリングの契約を結ぶ際に「債権譲渡登記」と呼ばれるものを実施することがあります。
必ず発生する手続きではありませんが、こちらについても理解しておきましょう。
債権譲渡登記とは
債権譲渡登記は「保有する債権を譲渡した」と登記によって示す行為です。
事前に登記しておくことによって、売掛債権など「債権」の請求権を誰が持っているのか明確にできます。
ファクタリングにおいても、売掛債権の所有者が重要となるため、債権譲渡登記を済ませておくのです。
登記によって所有者が明確になれば、何かしらのトラブルが発生した際に、権利を主張できます。
ただ、ファクタリングする際に、債権譲渡登記が必須というわけではありません。
ファクタリング会社の方針によって、必要かどうかは変化します。
登記にはコストが生じる
ファクタリングで債権譲渡登記が必須ではない背景には、コストが生じることが挙げられます。
まず、登記の手続きであるため、登録免許税を納めなければなりません。
まとまった支払いが必要となるため、金銭的な理由から債権譲渡登記を実施しないのです。
また、登記手続きには専門的な知識が求められます。
ファクタリング会社は、債権譲渡登記のために専門家を割り当てなければなりません。
人的なコストも生じることから、債権譲渡登記は必須とされていないのです。
ただ、コストが生じても得られるメリットが大きい場合は、ファクタリング会社から債権譲渡を求められるかもしれません。
ファクタリングで債権譲渡登記を済ませるメリット
ファクタリングにおいて、債権譲渡登記を済ませるメリットは多くあるため、これらを押さえておきましょう。
トラブルの発生を防げる
事前に債権譲渡登記を済ませておくことで、トラブルの発生を防げます。
例えば、ファクタリングでは売掛債権を二重に譲渡することができません。
ファクタリングの契約が締結された段階で、債権譲渡が完了しているため、所有者が変化しているからです。
他者の持ち物になった売掛債権を、ファクタリングの利用者が別の会社へ譲渡できません。
もし、債権譲渡登記を済ませていないと、誤って二重にファクタリングしてしまうリスクがあります。
ファクタリング会社としては、トラブルの原因となりかねないため、事前に登記してもらうのです。
もちろん、債権譲渡登記によってすべてのトラブルを防げるわけではありません。
リスク回避の一環として、債権譲渡登記が選択されると考えておきましょう。
売掛先に知られない
債権譲渡登記は、売掛先の同意がなくとも利用できる制度であることがメリットです。
従来、債権の譲渡を明確にするためには、内容証明郵便の送付などが求められていました。
このような手続きが生じると、売掛先にファクタリングすることが伝わってしまうのです。
売掛先との関係性によっては、債権譲渡を知られたくないこともあり、そのような状況下ではファクタリングできないのが実情でした。
しかし、債権譲渡登記の制度が開始されてからは、利用者とファクタリング会社が共同で申請することにより所有者を示せるようになりました。
これまでのように、売掛先に同意を得る必要はなくなったのです。
売掛先に知られないということは、債権譲渡登記を活用する非常に大きなメリットだと考えて良いでしょう。
ただし、登記の事実は手数料を支払うと誰でも閲覧できるため、もし確認されてしまうと知られてしまいます。
ファクタリングで債権譲渡登記を済ませるデメリット
ファクタリングにおいて、債権譲渡登記は重要な手続きではありますが、デメリットもあるため理解しておきましょう。
登記コストは利用者の負担になりやすい
基本的に、ファクタリング会社から債権譲渡登記を求められた場合は、利用者の負担で登記しなければなりません。
まず、法務局で登記の申請が必要となり、この際に登録免許税を納めなければなりません。
納める額は売掛債権の額などによって左右され、7,500円または15,000円です。
また、これに加えて債権譲渡登記の申請を代行してくれる司法書士への報酬も支払わなければなりません。
自分で手続きできる場合は、この費用を抑えられますが、依頼すると数万円から10万円程度は必要になってしまいます。
個人は利用できない
債権譲渡登記にあたっては、法人の登録事項証明書が必要です。
そのため、個人事業主は債権譲渡登記を用いたファクタリングが利用できず、法人のみが利用できるサービスになっています。
もし、個人事業主で債権譲渡登記が必要なファクタリング会社を検討しているならば、利用できないため別の方法を検討しましょう。
なお、近年は債権譲渡登記が不要で個人事業主やフリーランスでも利用できるファクタリング会社が増えています。
どうしても、債権譲渡登記が必要な会社にこだわる必要はなく、登記無しでスムーズに契約できる会社を探すことがおすすめです。
ファクタリングにおける債権譲渡のまとめ
ファクタリングにおける債権譲渡について解説しました。
売掛債権などの譲渡は法律で認められていて、ファクタリングはこれに基づいた取引です。
違法な取引だと噂されることもありますが、特に問題となる要素はありません。
なお、ファクタリングのように契約が成立していれば、それだけで債権譲渡も成立します。
ただ、債権の所有者が判断しづらいため、債権譲渡登記が利用されることもあります。