ファクタリングの根保証とは?利用するメリットやデメリットについて解説
ファクタリングには通常の買取タイプのほかに、根保証付きのものがあります。保証ファクタリングの一種で、売掛金を100%保証するものを指します。しかし、どのような仕組みであるのかわからない方も多いでしょう。また、根保証にはメリット・デメリットがあるため、利用する前に知っておく必要があります。買取タイプのファクタリングとの違いも、知っておく必要があるでしょう。本記事では、ファクタリングの根保証や、メリット・デメリットなどについて解説します。
目次
ファクタリングの根保証とは?
ファクタリングの根保証を利用する前に、概要を知っておく必要があります。基本的な概要は、次の通りです。
●根保証の仕組み
●手数料
●債権の種類
では、それぞれの特徴について詳しく解説しましょう。
根保証の仕組み
根保証の仕組みは、ファクタリング業者と保証契約を結び、売掛債権の未払があった際に、売掛金の支払いが保証されることです。業者は売掛先の与信審査を行い、審査結果により保証金額を決定し、その金額内であれば100%保証されます。
手数料
根保証でも、通常の買取タイプのファクタリングのように手数料がかかります。手数料は業者によって異なりますが、相場は1%~8%ほどです。大手金融機関系列のファクタリング業者は、手数料が低い傾向があります。また、売掛債権の額面によっても、手数料は違ってきます。
債権の種類
根保証で利用できる債権は、売掛債権だけではありません。根保証が利用できる債権は、受取手形とでんさいです。しかし、それ以外の債権は利用できません。
根保証で保証できるケース・できないケース
根保証付きのファクタリングは、保証できるケース・できないケースがあります。では、それぞれのケースについて詳しく見てみましょう。
保証できるケース
根保証付きのファクタリングで売掛金が保証されるのは、次のケースです。
●破産
●会社更生
●民事再生
●任意整理着手
●本店の閉鎖
●手形の不渡り
●小切手の不渡り
売掛金未払の理由が上記の場合、保証金額内であれば売掛金の100%が保証されます。上記以外の理由で売掛金が回収できなかった場合、売掛金は保証されません。
保証できないケース
根保証付きのファクタリングで保証できないのは、次のケースです。
●貸付金
●リース債権
●遅延債権
●1年以上の長期回収債権
以上の債権の場合、根保証付きのファクタリングでは保証されません。
買取ファクタリングとの違い
根保証付きファクタリングと、一般的な買取タイプのファクタリングには、次のような違いがあります。
●利用目的
●契約期間
では、それぞれの違いについて詳しく解説します。
利用目的
買取ファクタリングは、資金調達を目的に利用します。売掛債権をファクタリング業者へ売却し、期日より早く資金化する仕組みです。根保証付きファクタリングは、万が一売掛金が支払われなかった時のための保険として利用します。通常時はファクタリング業者へ手数料の支払い、売掛金の支払がされなかった場合、売掛金が100%保証される仕組みです。手数料は月付けかけ捨てのような状態で、返還されません。
契約期間
買取ファクタリングは、基本的に1回きりの契約であることがほとんどです。3社間ファクタリングの場合は、売掛金をファクタリング業者へ売却し、手数料を引いた金額を受取ったら完了です。売掛債権の支払期日になると、売掛先が直接業者へ売掛金を振り込んでくれます。2社間ファクタリングでは、売掛債権の売却後に手数料を引いた金額を受取り、売掛債権の支払期日に入金された売掛金を、ファクタリング業者へ送金したら完了です。根保証付きファクタリングは、継続契約をします。
根保証付きファクタリングのメリット
根保証付きファクタリングは、売掛先の倒産に対するリスクヘッジとして用いられます。代表的なメリットは、次の通りです。
●貸倒れリスクに対応できる
●信用調査をファクタリング業者に任せられる
●保証をかける売掛先を選べる
●売掛先の承認が必要ない
●複数の売掛先をまとめて依頼できる
では、それぞれのメリットについて解説します。
貸倒れリスクに対応できる
メリットの1つは、貸倒れリスクに対応できることです。売掛債権の支払期日は30日~60日後に設定されているケースが多く、その間に売掛先が倒産する可能性も考えられます。売掛先が倒産すると売掛金を回収できないため、資金繰りが悪くなり、連鎖倒産になることもあります。売掛金の額面が多いほど受けるダメージも多いため、なんらかのリスク管理が必要です。根保証付きファクタリングであれば、保証の範囲内で売掛金の保証額が支払われます。そのため、売掛先が倒産しても、自社の経営に与える影響が少なくなります。売掛債権の額面が大きい場合などに、利用すると安心です。
信用調査をファクタリング業者に任せられる
信用調査をファクタリング業者に任せられるのも、メリットに数えられます。売掛先の経営状態は、外から見るだけではわからないことがあります。安全な取引のためには信用調査が大切ですが、わざわざ人員を割いて信用調査をするのが難しいでしょう。根保証付きファクタリングを利用すれば、ファクタリング業者が調査を行ってくれるため、自社で信用調査をする手間が省けます。信用調査も売掛先へ知らせずに行われるため、売掛先との関係性が悪くなる心配もいりません。
保証をかける売掛先を選べる
保険をかける売掛先が選べるのも、メリットです。売掛金を保証する方法に取引信用保険もありますが、この場合は売掛先を選べません。根保証付きファクタリングは、根保証を付ける売掛先を選べるため、売掛先の信用力や売掛金の額面に合わせて選択できるので便利です。
売掛先の承認が必要ない
売掛先の承認を得ずに利用できるのも、メリットといえます。契約は利用者とファクタリング業者の2社間で行うため、根保証付きファクタリングを利用していることを売掛先に知られません。売掛先との関係性が悪化するリスクを防げます。
複数の売掛先をまとめて依頼できる
根保証付きファクタリングは、複数の売掛先をまとめて依頼することも可能です。それぞれの売掛債権ごとに保証の金額なども指定できるため、受けたい範囲を自由に設定できるメリットもあります。まとめて保証を受けることで、万が一売掛金が未回収になった場合も、経営を悪化させずに済みます。
根保証付きファクタリングのデメリット
根保証付きファクタリングにメリットは多いものの、デメリットもあります。主なデメリットは、次の2つがあげられます。
●保証してもらえないこともある
●手数料がかかる
では、それぞれのデメリットについて見てみましょう。
保証してもらえない可能性がある
根保証付きファクタリングを利用しているからといって、必ず保証してもらえるわけではありません。保証されるのは、破産・会社更生・民事再生・任意整理着手・本店閉鎖・手形の不渡り・小切手の不渡りが、確認された場合に限ります。単に売掛金を払い渋っている場合は保証されないのです。
手数料がかかる
手数料がかかることも、デメリットにあげられます。根保証付きファクタリングでは、1%~8%の手数料が発生し、保証を受けない時でも払う必要があります。売掛金から手数料分が差し引かれるため、本来受取る金額よりも少なくなってしまうのです。万が一のために手数料を払い続けるのが、負担になることもあります。
根保証付きファクタリングを利用すべきケース
根保証付きファクタリングは、万が一の時に売掛金が保証されるため安心です。しかし、メリットだけでなくデメリットもあるため、利用に向いているケースを知っている必要があります。利用すべきケースは、次の通りです。
●売上が1つの売掛先に偏っている
●新しく取引したい会社の信用度を知りたい
●新規設立した会社との取引を検討している
●売掛先が多数あり与信管理に手が回らない
では、それぞれのケースについて詳しく解説します。
売上が1つの売掛先に偏っている
売上が1つの売掛先に偏っていると、その売掛先が倒産した場合は大きなダメージを受けてしまいます。売掛先の倒産をきっかけに、経営が悪化する可能性が高くなります。根保証付きファクタリングを利用すると、ダメージを最小限に抑えられるため、売上が1つの売掛先に偏っている場合におすすめです。
新しく取引したい会社の信用度を知りたい
新しい売掛先と取引する場合、きちんと支払いをしてくれるのかなど、信用度が気になります。根保証付きファクタリングを利用すると、取引先の信用調査をファクタリング業者に任せられます。なぜなら、ファクタリング業者は手数料を決める際に、売掛先の信用度を調査するからです。ファクタリング業社の審査に通らない売掛先は支払い能力が低い可能性が高いため、取引を見合わせるなどの判断ができます。
新規設立した会社との取引を検討している
新規設立した会社は、今後どのように成長していくのか未知数です。場合によっては、短期間で経営が悪化する可能性もあります。しかし、新規設立の会社は見通しを立てにくく、取引をするのに不安が伴います。根保証付きファクタリングを利用すると、売掛金が保証されるため、短期で売掛先が倒産するのではなどと心配しながら取引する必要はなくなるでしょう。
売掛先が多数あり与信管理に手が回らない
売掛先が多数ある場合、すべての売掛先の与信管理をするのが大変です。日々の業務に加え、与信管理までするとなると、通常の業務に支障が出ることもあるでしょう。しかし、しっかり調査せずに取引をすると、売掛先が倒産して経営状態が悪化する可能性も出てきます。根保証付きファクタリングを利用すると、売掛金が未回収になっても保証されるうえ、信用調査もファクタリングが行ってくれます。安心して取引ができるでしょう。
根保証付きファクタリングについてのまとめ
根保証付きファクタリングは、通常のファクタリングのような資金調達目的ではなく、未払になった時に売掛金が保証される保険のような役割を果たすものです。売上が1つの売掛先に偏っていたり、経営状態を予想しづらい新規設立会社と取引をしたりする場合、有益な方法です。売掛先の信用調査を行う時間がない、リスクヘッジをしながら取引したい場合、利用すると良いでしょう。