ファクタリングは法人税の増減に影響する!?節税の観点から見たファクタリングの利用価値を説明
ファクタリングは特定の売掛債権をサービス提供事業者に売却することで、売掛金の入金期日より前に、売掛債権を資金化できる資金調達手段です。
ファクタリングは、売掛金の入金期日前に資金化できる、融資など他の手段よりスピーディーに資金調達できるということで、注目を集めています。
中小企業の経営者の中には、ファクタリングが法人税に与える影響が心配という方がいらっしゃいます。
そこで、この記事では、まず法人税の意味や仕組みを説明し、それからファクタリングが法人税に与える影響、節税の観点からファクタリングは利用価値があるかどうかを解説します。
目次
法人税とは?
財務省の公式サイトでは、法人税を以下のように説明しています。
“法人税は、法人の企業活動により得られる所得に対して課される税です。法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となっています。益金の額とは、商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入などで、また、損金の額とは、売上原価や販売費、災害等による損失など費用や損失に当たるものです。(実際は、企業会計上の税引前当期純利益を基礎に法人税法の規定に基づく所要の加算又は減算(税務調整)を行い、所得金額を算出します。)
法人税額は、そうして得られた所得金額に税率をかけ、税額控除額を差し引くことで算出します。”※
※引用:財務省
定義を読むだけでは理解するのが難しいですが、要するに、法人税額は以下の計算式で計算できるというわけです。
●「益金」-「損金」=「所得」
●「所得」×「定められた法人税率」=法人税額
法人税額の計算に関係する「益金」
法人税額の計算に関係する「益金」とは、商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入のことです。
おおまかにいうと、法人の活動で何らかの資産増加、儲けがあれば、益金になります。
法人税条第22条2項では「別段の定めがあるもの」を除き、次の5つが益金に該当します。
●資産の販売
●有償または無償による資産の譲渡
●有償または無償による役務の提供
●無償による資産の譲受け
●その他の取引で資本等取引以外のもの
ファクタリングは売掛債権をファクタリング事業者に買取してもらう、つまり譲渡することです。
しかし、ファクタリングでは、売掛債権の額面全額、もしくはそれ以上の額を手にすることはありません。
なぜなら、ファクタリングでは、売掛債権の額面からファクタリング手数料が必ず差し引かれ、その残った金額が資金になるからです。
このように、ファクタリングで売掛債権を譲渡しても資産増加はありません。したがって、益金に該当する部分は増えないので、ファクタリングを利用しても法人税が増える心配は必要ないわけです。
ファクタリング手数料は「損金」に該当する
ファクタリング手数料は「損金」に該当します。損金とは、税法上認められた法人の資産を減少させる原価や費用、損失などのうち、一定の額を除いたものです。
ファクタリング手数料は、損金に含められるので、法人税の減額につながります。
ファクタリングは消費税が非課税
法人税の計算とは直接関係ありませんが、ファクタリングは消費税が非課税という点も注目すべきポイントです。
国税庁は、消費税の課税対象となる取引について、以下のように説明しています。
“国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税されますので、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。 ”※
※引用:国税庁
「対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象」と説明しているので、ファクタリングも消費税の課税対象ではと感じるでしょう。
しかし、以下の取引については、消費税の性格や社会政策的配慮から消費税が課税されない非課税取引としています。
• 土地の譲渡及び貸付け
• 有価証券、支払手段の譲渡
• 貸付金等の利子、保険料等
• 郵便切手類、印紙、物品切手等の譲渡
• 行政手数料等、外国為替取引
ファクタリングは有価証券、支払い手段の譲渡に該当するので、消費税における非課税取引です。
ファクタリング手数料も消費税は非課税
ファクタリング手数料も消費税は非課税です。国税庁はその点を「金銭債権の買取等に対する課税関係」のページで以下のように説明しています。
状況:相手方から金銭債権を譲り受け、債務者から回収できるかどうかにかかわらず、金銭債権額から割引料、保証料又は手数料を控除して現金又は手形で支払います。
回答:金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料又は手数料は、その名目の如何にかかわらず、金銭債権の譲受対価として非課税となります。※
※引用:国税庁
この説明にあるように、ファクタリング手数料は消費税が非課税です。
節税対策でのファクタリングの利用は効果がある?
ファクタリングを利用しても益金を増やすことにはなりません。ファクタリング手数料は損金になるので、法人税額を減らすことにつながります。
さらに、ファクタリングは消費税の課税対象ではありません。
こうした点から、ファクタリングが節税対策に使えると感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、結論から先に述べれば、ファクタリングは効果的な節税対策にはなりません。
なぜなら、節税対策としての費用対効果が薄いからです。500万円の売掛債権を10%のファクタリング手数料でファクタリングした場合、損金は5万円です。しかし、5万円の損失に見合う節税効果を期待することは難しいでしょう。
さらに、ファクタリングをせずに、通常通り売掛金の入金を入金期日まで待って、それを受け取る方が会社にとってメリットは大きい点を忘れるべきではありません。
加えて、ファクタリングの利用回数に応じて、納税する消費税の総額が変化することはないという点も、節税効果が期待できない理由です。
通常、広告費や接待費などの経費が増えれば、それに伴い消費税の課税額は少なくなります。
しかし、ファクタリング手数料は、消費税の課税対象ではないので、いくらファクタリングを利用しても、消費税がかからない経費なので、消費税額を減らすことにはつながりません。
こうした理由から、ファクタリングは節税対策を目的として使うのではなく、本来の目的で使うことをおすすめします。
ファクタリングを正しい目的で使う
ファクタリングは、法人税や消費税の節税目的で利用するのではなく、資産調達という本来の目的で使うことをおすすめします。
ファクタリングを使う際の正しい目的には次のものがあります。
●売掛金の入金遅れ、未回収に備える
●売掛金の回収サイトを短縮する
●急ぎの資金調達手段として使う
●融資以外の資金調達手段として使う
それぞれの目的について具体的な内容を説明します。
売掛金の入金遅れ、未回収に備える
ファクタリングは売掛金の入金遅れ、未回収への備えになります。売掛先からの入金が遅れる、売掛金が回収できないという事態が続くと、会社の資金繰りが悪化します。
会社の資金繰りが悪化すれば、支払いに必要な資金が足らなくなる資金ショートの問題が起こるかもしれません。
さらに、取引先の倒産の影響を受けて自社が倒産する連鎖倒産、売上があるのに支払いができないことで起こる黒字倒産などのリスクが高まるでしょう。
ファクタリングを使えば、売掛金を入金期日より前に資金化できるので、売掛金の入金遅れ、未回収を回避できます。そうすれば、資金ショートや連鎖倒産、黒字倒産のリスクも軽減されます。
売掛金の回収サイトを短縮する
売掛金の回収サイト短縮を目的としてファクタリングを利用できます。
回収サイトとは取引が完了してから売掛金が入金されるまでの期間です。回収サイトが60日なら入金まで60日間待たなければなりません。
業界・業種によっては、商品やサービスを納品してから、その代金を受け取るまでかなり長く待つのが慣習となっているところがあります。
入金を待っている間に材料費や人件費、家賃などの支払いがあれば、資金ショートする可能性があります。
さらに、回収サイトを短縮し、資金に余裕が生まれれば、それを次の案件受注に必要な材料や設備の購入、募集広告費などの資金にすることも可能です。
ファクタリングで回収サイトを短縮できれば、資金ショートの回避、事業の維持・拡大が容易になります。
急ぎの資金調達手段として使う
ファクタリングは申し込みから資金調達完了までのスピードが他の資金調達手段より速いのが特徴です。したがって、急ぎの資金調達手段として利用することも可能です。
オンラインで申し込みから、審査、契約、入金までのすべての行程を完結できるオンラインファクタリングの中には、即日審査・即日入金に対応している事業者がいくつもあります。
そうした事業者を選べば、最短で申し込んだその日に資金が調達できるでしょう。
融資以外の資金調達手段として使う
ファクタリングは売掛債権を事業者に譲渡する債権譲渡契約です。金銭消費貸借契約ではないので、返済義務や金利負担は発生しません。
これ以上借入を増やして会社の財務状況を悪化させたくないという場合、ファクタリングでの資金調達がおすすめです。
ファクタリングが法人税に与える影響についてのまとめ
この記事では、ファクタリングが法人税に与える影響について説明しました。
ファクタリングでは売掛債権を事業者に譲渡しますが、それにより資産増加が発生するわけではないので、法人税の増額に影響する益金の増加にはつながりません。
ファクタリング手数料は、損益に該当するので、法人税額の減額につながります。
しかし、法人税や消費税の減額を目的にファクタリングを使うことはおすすめしません。費用対効果が悪く、何度もファクタリングを使えば、手数料の分だけ収益が減ることになるからです。
ファクタリングを使えば、売掛金回収不能に備える、回収サイトを短縮する、急ぎの資金調達ができます。ファクタリングの本来の目的を理解し、それに沿った仕方でファクタリングを利用してください。