売掛先の倒産時にファクタリングで受取った資金はどうなる?弁済義務の有無や倒産に備える対策を解説
ファクタリングは売掛債権を業者に売却し、現金化する資金調達方法です。売掛金を前払いで受取る形となり、売掛金の支払い日に入金されたら、業者へ支払います。しかし、売掛先が倒産すると、支払い日に売掛金は入金されません。その場合、受取った資金を弁済する必要があるのか気になるところです。また、売掛先の倒産に備えた対策も、知っておく必要があるでしょう。本記事では、売掛先の倒産時にファクタリングで受取った資金はどうなるのか、弁済義務の有無、倒産に備える対策について解説します。
目次
ファクタリングで売掛先の倒産時に弁済義務はある?
ファクタリングの契約後に売掛先が倒産すると、業者から受取った資金を弁済する必要があるのか、利用者にとって大きな問題です。弁済義務があるかどうかは、契約方法によって違ってきます。
●ノンリコース契約
●リコース契約
では、それぞれの契約方法における弁済義務について解説します。
ノンリコース契約
償還請求権なしのノンリコース契約を結んでいる場合、利用者に弁済義務はありません。売掛金を業者へ売却して資金を受取った後、売掛先が倒産して売掛金の回収ができなくなっても、弁済する必要はないのです。ノンリコース契約の場合、売掛債権の譲渡とともに、売掛先が倒産して売掛金が未回収となるリスクも業者へ移行しています。ただし、売掛先が倒産することを知りながら、売掛債権を業者へ売却した際は、費用を請求されるケースもあります。
リコース契約
償還請求権ありのリコース契約を結んでいる場合、売掛債権を売却して得た資金を、業者へ弁済する義務が生じます。原則として、ファクタリングはノンリコース契約となりますが、なかにはリコース契約をする業者もあります。
ただし、リコース契約ができるのは、貸金業登録されている業者だけです。なぜなら、リコース契約は、売掛金を担保とした融資となるため、銀行や貸金業者しか扱えません。独立系ファクタリング業者は契約できないので、注意してください。
売掛先の倒産リスクに備える手法
ファクタリングを利用する際に売掛先の倒産リスクに備える方法は、次の4つがあげられます。
●ノンリコースかリコースかを確認
●保証型ファクタリングを利用
●中小企業倒産防止共済制度に加入
●取引信用保険に加入
では、それぞれの方法について詳しく見てみましょう。
ノンリコースかリコースかを確認
ファクタリング契約後に売掛先が倒産した場合、契約方法によって弁済責任の有無が違ってきます。売掛先の倒産リスクに備えるには、契約時にノンリコースかリコースかをしっかり確認することが大切です。ファクタリングには審査があるため、売掛先の経営状態が悪かったり、倒産しそうだとの噂があったりすると審査に通りません。しかし、連鎖倒産などで突発的に倒産する可能性はあります。そのため、弁済義務が生じないノンリコース契約にするのが安心です。
保証型ファクタリングを利用
ファクタリングには、買取型と保証型があります。買取型は、売掛債権を売却して資金調達をする一般的なファクタリングです。保証型は、保証料を支払うことで、売掛先が倒産した際に、未回収となった売掛金を保証してくれるというものです。万が一、売掛先が倒産しても、売掛金は保証されるので安心できます。
中小企業倒産防止共済制度に加入
中小企業倒産防止共済制度に加入するのも、売掛先の倒産リスクの対策になります。中小企業倒産防止救済制度は、月々定額積み立てておくことで、売掛金が未回収になった際に積立額の10倍を限度に借入れられるシステムです。万が一、売掛先が倒産しても、運転資金に困ることがなくなります。ただし、借入れするには事業継続期間が1年以上、共済加入6か月以上という条件をクリアしなければなりません。また、借入れた金額は返済する必要があります。
取引信用保険に加入
売掛先の倒産リスクに備える方法として、取引信用保険に加入するのも有効です。取引信用保険は、保険会社が販売しているサービスで、売掛金が未回収になった際、保険金が支払われます。多くの場合、売掛金の90%~95%ほどが支払われ、保険料は売掛金の1%~3%ほどが相場です。
ファクタリングの不渡りで注意すべきポイント
ファクタリングで売掛先が倒産するなど、不渡りになった際に注意すべきポイントは、次の2つがあげられます。
●ファクタリング業者を取り締まる法律がない
●乱暴な取り立ては弁護士や警察に相談
では、それぞれのポイントについて解説します。
ファクタリング業者を取り締まる法律がない
ファクタリングは比較的新しい資金調達方法であるため、法規制が不十分なところもあります。融資を行う業者は、貸金業に登録する必要があり、利息率や取り立て方法なども法律で定められています。早朝や深夜に取り立ての電話をかけたり、脅しのような取り立てをしたりできません。貸金業法に違反すると、ペナルティが課されるため、法律の範囲内で行われます。
しかし、ファクタリングは貸金業法の適用外であるため、取り立て行為の制限がありません。早朝や深夜に取り立ての電話をかけたり、自宅へ訪れたりしても、法的に問題ないことになります。規制が緩いため、業者によっては乱暴に取り立てる可能性もあります。
乱暴な取り立ては弁護士や警察に相談
乱暴な取り立てをする業者は、弁護士や警察に相談しましょう。法的な規制はなくても、迷惑行為をされたり、乱暴な扱いを受けたりした際は、プロに相談する必要があります。弁護士は法的な観点から、適切な対処法をアドバイスしてくれるでしょう。また、警察に迷惑行為を相談して、注意してもらうのも良いでしょう。
ファクタリングの契約でチェックすべき項目
ファクタリングを安心して利用するためには、契約内容をしっかり確認することが大切です。契約でチェックすべき項目は、次の3つです。
●債権譲渡登記の有無
●損害賠償・違約金
●償還請求権の有無
では、それぞれの項目について詳しく見てみましょう。
債権譲渡登記の有無
債権譲渡登記は、利用者と業者の2社間で契約する際に、契約に入れられるケースがあります。債権譲渡登記は、売掛債権が譲渡されたことを税務署に申告し、債権の保有者を明確にする役割があります。業者が二重譲渡のリスクを回避するために、債権譲渡登記を求めることがあるのです。
債権譲渡登記は、手続きを行えばだれでも閲覧できるため、売掛先ファクタリングの事実を知られるリスクがゼロではありません。売掛先にファクタリングの利用を知られると、資金繰りがうまくいっていないと勘繰られ、取引に影響を与える可能性もあるでしょう。そのため、債権譲渡登記が必要ない業者を選ぶのがおすすめです。
債権譲渡登記にかかる費用は、利用者が負担するのが一般的です。登録にかかる料金は債権の個数によって異なり、7,500円~1万5,000円ほどかかります。また、司法書士へ手続きを依頼する場合、数万円~10万円ほどの報酬も必要になります。
損害賠償・違約金
契約をする際は、損害賠償や違約金の項目もチェックする必要があります。契約に違反しなければ、損害賠償や違約金を支払う必要はありません。しかし、契約に違反しているかどうかは、内容をしっかり理解していなければわかりません。契約違反の条項も、それぞれの業者によって異なるため、どのようなケースが違反行為になるか確認しておきましょう。一般的に損害賠償や違約金が発生するケースは、次の通りです。
●契約書に記されている報告義務を怠った
●指定の期日までに入金しなかった
原則的に売掛金の未回収リスクは業者が負うこととなるため、未回収のリスクが高まった際は対処を迅速に行いたいと考えています。そのため、売掛先の経営状態が急激に悪化したなど、不測の事態が起こった時に報告することを義務付けています。報告義務を怠った場合は、契約違反として損害賠償や違約金を請求されることがあるので、注意が必要です。
売掛先から売掛金が振り込まれたにもかかわらず、指定の期日に入金しないのも、契約違反になります。支払われた売掛金は、一括払いで支払わねばならず、分割で支払うことはできません。契約の際に、支払い期日に無理がないかも、確認しておく必要があります。期日に支払わなかった場合、賠償金が請求されます。
償還請求権の有無
償還請求権の有無も、契約において確認すべき事項です。償還請求権有りで契約してしまうと、売掛先が倒産した際、売掛金の弁済責任が生じてしまいます。償還請求権無しで契約しているか、確認しましょう。ただし、売掛先が大手企業や公共事業など、倒産の可能性が少ない場合は、償還請求権にそれほどこだわる必要はありません。売掛先が個人事業主や中小企業などの場合は、連鎖倒産などの可能性もあるため、償還請求権無しの契約であるかしっかり確認する必要があるでしょう。
売掛先が倒産した際のファクタリングの弁済義務についてのまとめ
ファクタリングは原則的に償還請求権無しのノンリコース契約なので、売掛先が倒産して売掛金が未回収になったとしても、弁済義務は生じません。しかし、リコース契約をしていると、弁済義務が生じるので注意が必要です。売掛先の倒産による売掛金未回収のリスクを避けるには、ファクタリングのほか、中小企業倒産防止共済制度や取引信用保険に加入するなどの方法もあります。また、保証型ファクタリングは、資金調達ではなく、売掛先の未回収リスクを防ぐ保険として活用できます。