建設業がファクタリングを利用するにあたり会社を選ぶポイント3つ
「工事前の立替費用が重い」「入金が遅れて資金繰りが不安定」といった悩みを抱えてはいないでしょうか。
建設業は着工から完工・入金までに時間がかかるうえ、天候や支払いサイトの影響で、資金繰りが悪化しやすい業種といわれています。
資金繰りの課題を解決する方法として注目されているのが、売掛金を早期に現金化できる「ファクタリング」です。借入ではないため、信用情報に影響せず、赤字や税金滞納がある場合でも利用しやすいことが特徴です。
この記事では、建設業とファクタリングの相性や利用時の注意点を解説します。会社選びのポイントも紹介しているため、資金繰りの改善につなげるために参考にしてください。
目次
建設業の資金繰りが厳しい理由4つ
建設業が資金繰りを改善するためには、まず厳しくなる理由を理解しておくことが重要です。建設業の資金繰りが厳しい理由は、以下の4つです。
- 工事前の費用立替(先行投資)
- 着工から入金までのタイムラグ
- 長い支払いサイトによる回収遅延
- 天候・災害など外部要因による工期遅延リスク
順番に確認していきましょう。
1.工事前の費用立替(先行投資)
建設業では、工事を開始する前からさまざまな費用が発生します。
- 資材の仕入れ費用
- 道具・消耗品の購入費
- 重機・車両のレンタル費
- 人件費
- 外注業者への支払いなど
いずれも、受注側である建設業者が工事代金を受け取る前に立て替える必要がある費用です。
着工から完工まで工期が長い案件も多く、数カ月にわたることも珍しくありません。その間は売上が立たない反面、支出が一方的に膨らんでいきます。
建設業は構造的に「先に払って、後で受け取る」仕組みのため、資金繰りが圧迫されやすいです。
2.着工から入金までのタイムラグ
建設業では一般的に、工事の受注から実際の入金までに長い時間がかかります。工事が始まってから完工・検査・請求書の発行・支払いサイトを経て入金が行われるまで、数カ月以上かかるケースも少なくありません。
例えば、3月に着工した案件で6月に完工・検収が完了し、7月に請求書を発行するとしましょう。入金されるのが60日後とすれば、実際に資金が手元に入るのは9月になります。
この間にも、人件費や資材費、下請けへの支払いといった支出が先行し、資金は回収されないままです。結果として、キャッシュフローが圧迫されてしまいます。
案件によっては、着工から完工までの間に請求額の一部を受け取れる中間金が設定されています。しかし、中間金の支払いが設定されていない場合は完工までまったく入金がない状態が続くため、資金繰りの負担がさらに大きくなります。
3.長い支払いサイトによる回収遅延
建設業では、請求から実際の入金までに60〜90日といった長めの支払いサイトが一般的です。とくに大手の元請企業や公共工事では、支払い条件が厳格に定められており、資金回収までに時間がかかる傾向にあります。
この間も以下のような支出が継続的に発生するため、手元資金の管理が難しくなります。
- 下請業者や協力会社への支払い
- 人件費
- リース費用など
こうした長期の支払いサイトが常態化していると、口座残高が安定せず、資金繰りに気を配り続けなければなりません。現場の数が増えるほど入出金のタイミングも複雑になり、より一層の資金管理能力が求められるのも、建設業ならではの課題です。
4.天候や災害の外部要因によって工期がずれ込みやすい
建設業は屋外作業が多く、天候の影響を受けやすい業種です。とくに下記の天候に見舞われると、工事が中断されたり延期になったりすることも少なくありません。
- 台風
- 大雨
- 大雪
- 猛暑
- 強風など
また、地震などの自然災害が発生すると資材の供給が遅れたり、現場自体に損害が出たりなど予期しない形で工期が長引くこともあります。工期が遅れると請求や入金のタイミングも後ろ倒しになり、予定していた資金が入ってこない状況に陥りかねません。
工期が長引いても、人件費や外注費、リース代といった固定費は変わらず発生し続けます。入金が後ろ倒しになる一方で支出が先行するこの構造が、建設業の資金繰りを厳しくする大きな理由のひとつです。
建設業の企業にファクタリングが向いている理由3つ
設業の企業にファクタリングが向いている理由は、以下の3つです。
- 最短即日と圧倒的なスピードで資金調達
- 赤字や税金滞納でもOK?与信不安でも利用しやすい
- 長期化する支払いサイトの売掛債権を早期現金化
資金繰りの改善方法を検討している方は、参考にしてください。
1.最短即日と圧倒的なスピードで資金調達
ファクタリングは金融機関の融資と比べて、圧倒的に早く資金調達ができます。
銀行融資では、事前審査や契約手続きに時間がかかり、実際に入金されるまでに数週間から1カ月以上かかることもあります。一方、ファクタリングは請求書など必要書類が揃っていれば、最短で即日入金も可能です。
建設業では工事の進捗に合わせて人件費や外注費などの支出が発生するため、タイミングに応じた資金調達ができるのは大きな強みです。
2.赤字や税金滞納でもOK?与信不安でも利用しやすい
ファクタリングは銀行融資と比較すると、赤字決算や税金滞納といった与信面で不安を抱える企業でも利用しやすい資金調達手段です。
銀行融資では過去の決算内容や納税状況などが重視されるため、たとえ将来の受注が見込まれていても、審査に通らないケースがあります。とくに、建設業では資金繰りの波が大きく、一時的に赤字となることも珍しくありません。
その点、ファクタリングの審査で重視する項目は「売掛先の信用力」です。例えば、発注元が大手建設会社やハウスメーカーなどであれば、支払い能力に対する評価が高いため、売掛債権をスムーズに資金化できるケースもあります。
3.長期化する支払いサイトの売掛債権を早期現金化
ファクタリングを使えば入金前の売掛金を現金化できるため、急な支出があったとしても柔軟な対応が可能です。入金前に現金化できることで、資材の発注や協力会社への支払いを前倒しで進められます。
入金を待たずに資材や人員の手配を進められることで、次の現場の準備も滞りなく進み、工期の遅延や段取りの乱れを防ぐことにつながります。)
建設業向けファクタリングの基礎知識
建設業向けファクタリングを利用する際は、以下3つの基礎知識を押さえておきましょう。
- 2者間と3者間ファクタリングの違い
- 建設業のファクタリングに必要な書類
- 銀行融資・ビジネスローンとの違い
いずれも、ファクタリングを活用するうえで知っておくべき内容です。
2者間と3者間ファクタリングの違い
ファクタリングには「2者間」と「3者間」の2つの方式があります。
2者間ファクタリングは、取引先に通知せずに売掛金を現金化できる方法です。ファクタリングの利用を知られたくない場合に向いていますが、手数料はやや高めに設定されています。
一方の3者間ファクタリングは、売掛先に債権譲渡を通知・承諾してもらったうえで資金化する方法です。売掛先の承諾が必要であるものの、取引の透明性が高いため、手数料は抑えられます。取引先にファクタリングを使用したい旨を伝えられる場合は、手元に入るお金を大きくできます。
「取引先にファクタリングの利用を知られたくないか」「コストを抑えて手残り金額を大きくしたいか」の2点を基準に、自社に合った方法を選びましょう。
建設業のファクタリングに必要な書類
ファクタリングに必要な書類は会社によって多少異なるものの、多くのケースで共通の書類が求められます。ここでは、提出を求められる可能性が高い6種類の書類と、それぞれの取得方法や所要日数の目安をまとめました。
書類 | 取得日数の目安 | 取得方法 |
---|---|---|
預金通帳のコピー | 1日 | 取引先との取引を利用している通帳の口座明細をコピー |
身分証明書 | 1日 | 代表者の運転免許証明はマイナンバーカードをコピー |
取引先との関係がわかるメールなど | 1日 | 社内で準備 |
売掛先との契約書・発注書 | 1〜3日 | 社内で準備 |
決算書 | 1〜7日 | 社内で準備または顧問税理士に依頼 |
商業登記簿謄本 | 1〜7日 | 法務局(窓口・郵送・Web申請) |
印鑑証明書 | 1〜7日 | 法務局(窓口・郵送・Web申請) |
書類によっては取得するまでに日数がかかることがあるため、早めに準備しましょう。書類に不備があると手続きが滞るため、問題ないことを入念に確認したうえで提出してください。
銀行融資・ビジネスローンとの違い
資金調達の手段として、ファクタリングのほかに銀行融資やビジネスローンも検討されるケースがあります。それぞれの仕組みや審査の基準、資金調達までのスピードなどには明確な違いがあるため、用途や状況に応じて使い分けることが重要です。
ファクタリングと銀行融資・ビジネスローンの違いについて、以下の表で比較しています。
項目 | ファクタリング | 銀行融資 | ビジネスローン |
---|---|---|---|
審査基準 | 売掛先(取引先)の信用力 | 申込者の信用力と財務内容が重視される | 申込者の信用力と財務内容が重視される |
審査期間 | 最短即日〜数日 | 1週間〜1カ月程度 | 数日〜1週間程度 |
返済義務 | なし | あり(元本+利息) | あり(元本+利息) |
利用可能な状況 | 赤字決算・税金対応でも利用可能 ※売掛先が健全な場合に限る |
原則として黒字決算・納税状況がであることが求められる | 銀行融資よりも緩やかだが信用力は必要 |
資金使途 | 基本的に自由 | 原則制限なし ※事業性資金に限る |
原則制限なし ※事業性資金に限る |
手数料・金利 | 2者間:8~18% 3者間:2~9% |
年1〜3%程度 | 年5〜15%程度 |
使いやすさ | 取引先に知られずに利用することもできる | 審査が厳しく時間がかかる | 審査は早いが金利は高め |
ファクタリングは売掛金を活用して資金を得る仕組みで、借入ではありません。そのため、信用情報に影響せず、財務状況に不安がある場合でも利用しやすい点がメリットです。
一方の銀行融資やビジネスローンは、まとまった資金が必要なときや、設備投資など長期的な資金ニーズに適しています。
建設業のように入出金のタイミングに波がある業種が資金繰りを安定させるためには、状況に応じて資金調達の手段をうまく使い分けることがポイントです。
建設業がファクタリング利用で注意すべきポイント3つ
建設業の会社がファクタリングを利用する際に注意すべき点は、以下の3つです。
- 売掛先の状況によっては利用できないケースも
- 悪徳業者・偽装ファクタリングに注意
- 入金タイミングは「最短」加え「確実性」も確認
ファクタリングの利用で失敗しないためにも、ひとつずつ押さえておきましょう。
1.売掛先の状況によっては利用できないケースも
ファクタリングで審査の対象となるのは、利用企業ではなく「売掛先(取引先)」です。売掛先の状況次第では、希望した金額で資金化できなかったり、そもそも利用が認められなかったりするケースもあります。
買取り対象外となりやすい売掛先として、個人や小規模な会社などです。対照的に、元請が大手ゼネコンやハウスメーカーなど信用力の高い発注者であれば審査に通りやすい傾向があります。
申込み前に自社の売掛債権が買取の対象になるか、あらかじめ確認しておきましょう。
2.悪徳業者・偽装ファクタリングに注意
ファクタリングの中には、法外な手数料を請求する悪質な業者や、実態が貸付に近い「偽装ファクタリング」と呼ばれる業者も存在します。
悪質な業者による被害が報告されていることから、金融庁も注意喚起しているくらいです。とくに「返済義務が発生する契約」や「著しく低い買取金額」は、貸金業法違反に抵触する可能性があります。
とくに、以下のような過度に有利に見える条件を掲げる業者には注意してください。
- 即日OK
- 審査なし
- 他社よりも高額買取
こうした条件には裏があり、高額な手数料や不透明な追加費用を請求されるケースもあります。
信頼できる業者を選ぶには「運営会社の情報が公開されているか」「契約内容が書面で提示されているか」といった点を確認することが大切です。少しでも不安がある場合は、弁護士など専門家への相談を検討しましょう。
3.入金タイミングは「最短」に加え「確実性」も確認
ファクタリング会社の中には「最短即日入金」を掲げているところもあります。ただし、実際には2〜3営業日かかることもあり、必ずしも即日対応が保証されているわけではありません。
入金までに時間がかかる事例を、以下にピックアップしてみました。
- 必要書類がすべて揃っていなかった
- 契約が夕方以降になると、入金は翌営業日になる
- 「オンライン完結」であっても、一部で原本の郵送が必要になることがある
- 事前審査と本審査が分かれており、2段階で時間を要する
ファクタリングはスピード感が魅力ですが、利用者側の不手際が原因で入金が遅れることがあります。「即日対応」のみで判断せず、希望するタイミングに間に合うかも確認しておきましょう。
【建設業特有】ファクタリング利用前に確認したいポイント
ファクタリングを利用する前に、以下2つの建設業特有のポイントを把握しておきましょう。
- 留保金(リテンション)が含まれる債権は買い取ってもらえる?
- 公共工事の売掛債権は対象になる?
把握していないとファクタリングを利用できないこともあるため、事前にチェックしておきましょう。
留保金(リテンション)が含まれる債権は買い取ってもらえる?
ファクタリングを利用する際は、留保金(リテンション)が含まれていても買い取ってもらえるかを必ず確認しましょう。建設業界では「保留金」とも呼ばれ、工事完了後の一定期間、品質保証のために代金の一部の支払いを保留する制度です。
留保金は、将来的な不具合や瑕疵への対応費用として留保されているため「未確定の支払い」と見なされます。そのため、ファクタリング会社にとっては回収リスクが高く、買い取り対応していないケースも珍しくありません。
留保金の取扱いは、多くのファクタリング会社は買取対象外とし、売掛金から除外した金額のみが買い取られます。
ただし、取引先の信用力が高く、これまでの支払い実績が安定している場合には、留保金部分も含めて買い取りに応じるファクタリング会社も存在します。とくに、建設業に特化したファクタリング会社であれば、業界特有の事情を理解しており、より柔軟に対応してくれる可能性があります。
留保金の扱いについては、利用を検討しているファクタリング会社へ相談してみてください。
なお、平成20年(2008年)9月に改訂された「建設業法令遵守ガイドライン(改訂)」では、留保金の存在が建設業法違反に該当する恐れがあると指摘されました。そのため、近年では留保金を設定するケース自体が減少しています。
公共工事の売掛債権は対象になる?
公共工事に関する売掛債権も、ファクタリングの対象となる場合があります。ただし、民間工事とは契約形態や支払いの流れが異なるため、契約前にファクタリング会社に確認しておきましょう。
実際に行政機関では手続きに時間がかかるケースも多く、一般的なファクタリング会社では対応が難しいと判断されることがあります。とくに、公共工事では債権譲渡に対して事前の通知や承諾が求められ、手続きが煩雑になることもあるくらいです。
ただし、改正民法により、譲渡を制限する取り決めがあっても債券譲渡自体は無効になりません。さらに、公共工事標準約款では、一定の条件を満たせば発注者が譲渡を承諾すべきことも明記されています。
ファクタリングの対応可否は会社ごとに異なるため、事前にファクタリング会社に確認してみてください。
建設業がファクタリング会社選びで押さえるべきポイント3つ
建設業の会社がファクタリング会社を選ぶ際に押さえるべきポイントは、以下の3つです。
- 最低利用可能額
- 手数料率
- Web完結の可否
これらのポイントを意識すると、自社に適したファクタリング会社を選びやすくなるでしょう。
最低利用可能額
ファクタリング会社の中には「100万円以上から」といった最低利用額を設けているところもあります。
最低利用額が高額に設定されているファクタリング会社は、大口の取引を想定していることが多く、売掛金が少額な場合には利用できない可能性があります。
建設業では、10万円前後の小規模な工事も少なくありません。少額な売掛債権にも対応しているかどうかを、事前に確認しておくことが大切です。
申込み前に最低利用可能額を確認しておくことで、自社の工事規模に合ったファクタリング会社を探しやすくなるでしょう。
手数料率
ファクタリングの手数料は、業者によって1〜20%程度と大きく差があります。
「手数料○%から」といった形で、下限のみを表示している業者もあるものの、実際の手数料は審査内容や売掛先の信用力によって変わるため、事前に確認が必要です。
また、このほかに「事務手数料」や「契約手数料」などが加算されるケースもあるため、表示されている手数料のみで判断しないようにしましょう。
実際に受け取れる金額にどのくらい差が出るのか、内訳を確認しておくことで、資金計画にズレが生じる事態を防げます。
Web完結の可否
スマートフォンやパソコンから申し込めるWeb完結型のファクタリングは、忙しい建設業の経営者にとって大きなメリットです。
建設業では、現場作業に加えて営業や管理などを社長自らが担っているケースも多く、まとまった時間を取りにくいのが実情です。移動中や現場の合間など、隙間時間に手続きできれば、時間を有効に活用できます。
なお、サービスによっては郵送や対面が必要な場合もあるため、Webのみで完結できるかどうかは事前に確認しておきましょう。
Web完結型は現場を優先しながらも柔軟に資金調達できることから、建設業にとくに向いていると言えます。
まとめ
建設業は「着工前の立替」や「入金までのタイムラグ」など、資金繰りが厳しくなりやすい業種です。ファクタリングを活用すれば売掛金を早期に現金化でき、資金繰りの問題を解消しやすくなります。
ただし、利用時には「最低利用可能額」「手数料率」「Web完結の可否」といったポイントを確認し、自社に合ったファクタリング会社を選ぶことが重要です。
「Easy factor」は手数料率が2〜8%と業界最低水準で、追加費用はかかりません。最短10分で見積もりが届き、最短60分での振り込みも可能です。建設業に強いファクタリング会社をお探しの方は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。ニューヨーク支店での非日系企業向けコーポレートファイナンス担当を経て独立。企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
- 建設業がファクタリングを利用するにあたり会社を選ぶポイント3つ - 2025年5月20日