延現金とファクタリングの違いとは?延現金をカバーするファクタリングのメリットを解説
延現金は商取引において用いられる決済方法の1つですが、受注者にとって不利な面もいくつかあります。そのため、発注者から延現金での決済が打診されることを、歓迎しない受注者も多いでしょう。しかし、延現金のデメリットは、ファクタリングの利用で解消することは可能です。ただし、ファクタリングはまだまだ一般的な資金調達方法ではないため、賢く活用するコツを知っておく必要があります。本記事では、延現金とファクタリングの違いや、延現金をカバーするファクタリングのメリットを解説します。
目次
延現金とは?
延現金は信用取引の一種で、支払いを後日に繰り延べる決済方法です。受注側は、商品やサービスの納入後に支払い確認書を受取り、約束した期日に代金を受取ります。一見、掛取引や手形取引と同様の取引に見えますが、大きな違いがあります。違いを知らずに利用すると、資金繰りにも影響があるので注意が必要です。手形取引や掛取引との違いは、次の通りです。
●手形取引との違い
●掛取引との違い
では、それぞれの違いについて詳しく見てみましょう。
手形取引との違い
手形取引も、信用取引の一種です。手形取引において、発注側は後日の支払いを約束し、約束手形を振り出します。受注側は手形を決済期日まで紛失しないように管理し、決済期日に代金を回収します。どちらも、後日代金を回収するという流れは同じです。しかし、手形取引には券面の手形が介在し、手形は有価証券であるため財産として扱われます。約束手形は第三者へ譲渡できるため、裏書譲渡して資金調達することも可能です。
掛取引との違い
延現金と掛取引は、どちらも手形を介さない取引なので、違いがわかりにくいかもしれません。掛取引は、受注者が商品やサービスの納入後に請求書を発行し、発注者が請求書を受理すると売掛金が発生します。発注者は、請求書に記載されている期日に、代金を支払うという仕組みです。掛取引の特徴は、支払いサイトが長いことです。支払いサイトとは、請求内容確定から代金支払い期日までの期間です。
延現金の支払いサイトは、発注者が支払い確認書を発行してから代金を支払うまでの期間で、掛取引の支払いサイトは、受注者が請求書を発行してから代金を支払うまでの期間を指します。掛取引の支払いサイトは通常30日ほどであるのに対し、延現金の支払いサイトは60日~120日ほどと長く設定されています。
延現金のメリット
延現金は発注者にメリットの多い決済方法で、代表的なものは次の通りです。
●支払い期日の先延ばしで資金繰りが改善
●コストがかからない
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
支払い期日の先延ばしで資金繰りが改善
延現金では、発注者が支払い確認書を発行してから実際に支払うまでに、60日~120日の猶予があります。2か月以上支払いを先延ばしにできるため、その間に売掛金を回収して支払いに間に合わせることが可能です。資金繰りの苦しい企業が、資金繰りを改善するのに活用できます。
コストがかからない
手数料がかからないこともメリットです。手形取引では手続きに時間がかかるほか、10万円以上の額面の場合はそれに応じた税が課され、収入印紙を購入して貼り付けるなどの手間がかかります。延現金は、そのような手間やコストがかかりません。
延現金のデメリット
延現金のデメリットは主に受注者が被ることが多くなり、代表的なものは次の通りです。
●黒字倒産のリスク
●手形割引は利用できない
●回収不能のリスク
では、それぞれについて詳しく解説します。
黒字倒産のリスク
デメリットは、受注側に黒字倒産のリスクがあることです。延現金では請求書発行から支払いまで、60日~120日と長い期間がかかります。売上はあるのに、手元に現金のない状態となってしまいます。延現金取引が複数重なった場合、額面上は黒字でも、資金ショートで支払いなどが滞る状況になりかねません。経営状態が悪化し、黒字倒産する可能性も出てきます。
手形割引は利用できない
手形取引のように、手形割引が利用できないのもデメリットです。手形割引の場合、支払い期日までに資金が必要になった時、手形割引を利用して資金調達が可能です。しかし、延現金での取引では紙の債権を使わないため、売却できる有価証券が存在しません。手形割引以外の資金調達方法を探す必要があります。
回収不能のリスク
回収不能のリスクがあることも、デメリットの1つです。延現金の支払いサイトは60日~120日と長いため、その間に発注者が倒産することもあり得ます。支払い日前に発注者が倒産すると、資金の回収はできません。受注者にとって、リスクが高い決済方法といえるでしょう。
延現金とファクタリングの違い
延現金は、発注者の支払い期日を先延ばしにすることで、資金繰りの改善が見込めます。ファクタリングは、発注者から延現金での取引を申し出られた場合に、受注者が活用できる資金調達方法です。売掛金回収の権利を売却することで、資金調達ができます。そのため、約束手形のように有価証券がなくても利用可能です。延現金は発注者と受注者の2社間で行う取引ですが、ファクタリングはファクタリング会社と受注者の2社間、もしくはファクタリング会社と受注者、発注者の3社間で行います。延現金は発注者に利点の多い取引であるのに対し、ファクタリングは受注者に利点が多いのが特徴です。
延現金のデメリットをカバーできるファクタリングのメリット
延現金で受注者が被るデメリットは、ファクタリングでカバーできます。ファクタリングのメリットは、次の通りです。
●必要な額だけ調達できる
●延現金を支払期日前に現金化
●発注者の倒産の影響を軽減できる
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
必要な額だけ調達できる
ファクタリングのメリットは、必要な分だけ資金化できることです。資金が足りない場合の資金調達方法としては、銀行融資が一般的です。しかし、一時的な支払いなど一取引に必要な額の資金を融資で調達するのは、得策ではありません。融資にはさまざまな書類が必要であるうえ、担保や保証人なども用意する必要があります。
また、資金調達までに1か月ほどかかってしまいます。ファクタリングは、売掛金を売却して資金調達するため、審査も比較的緩く、即日資金化することも可能です。必要な分だけ、スピーディーに資金化できるので便利です。
延現金を支払期日前に現金化
延現金は、請求書の発行から支払い期日まで60日以上と長いものの、ファクタリングを利用すればその問題は解決できます。売掛債権を売却し、支払い期日よりも早く資金化する方法であるため、支払い期日を待たずに資金を調達して支払いなどに充てられます。支払いサイトが3か月先であっても、即日調達が可能になるのです。
発注者の倒産の影響を軽減できる
ファクタリングは、原則として償還請求権がありません。そのため、契約後に発注者が倒産して売掛金の支払いができなくなっても、受注者が受取った代金を返還する義務はないのです。そのため、ファクタリングを利用すると売掛金をスピーディーに資金化できるうえに、発注者の倒産の影響からも免れられます。ただし、契約書に償還請求権有と記載されている場合、返還義務が発生するので注意してください。契約の際は、契約書に償還請求権無しと記載されているか確認しましょう。
ファクタリングを利用する前に確認すべき注意点
ファクタリングは利点の多い資金調達方法であるものの、確認すべき注意点があります。利用前に確認すべき点は、次の2つがあげられます。
●手数料が必要
●一時的な資金繰りの改善に利用する
では、それぞれの注意点について詳しく解説します。
手数料がかかる
注意点は、手数料がかかることです。売掛金が全額支払われるのではなく、手数料を差し引いた金額が支払われるため、手数料の低いファクタリング会社を選ぶことが大切です。少額の利用であれば、1%や2%の違いに大きな金額の差はありませんが、額面が大きくなると1%の違いが数万から数十万、時には数百万の違いとなって表れます。
ファクタリングの手数料は利息制限法などの法律で規制されておらず、ファクタリング会社が自由に設定できます。中には、高い手数料に設定している会社もあるので注意が必要です。手数料の相場は、2社間では4%~12%、3社間では2%~9%となります。相場から大きくかけ離れていない手数料に設定している会社を選びましょう。複数の会社から見積もりを取ることで、大体の相場を把握でき、適正な手数料がわかります。
一時的な資金繰りの改善に利用する
ファクタリングは複数の売掛金があれば、1つだけでなく2つ、3つと追加で利用することが可能です。スピーディーに資金化できるため、資金繰りが苦しくなくても利用してしまいがちですが、計画的に利用することが大切です。ただし、受取る金額は手数料が差し引かれているため、本来受取る金額よりも少なくなります。繰り返し利用することで、少しずつ経営を圧迫する可能性があります。継続的に利用するのではなく、一時的な資金繰り対策として利用するのがベターです。
延現金とファクタリングの違いについてのまとめ
発注者から延現金での取引を申し出られると、受注者は代金の受取り期日が先延ばしになるため、資金が苦しくなる可能性があります。しかし、ファクタリングを利用すれば受取り期日よりも早く売掛金を資金化できるため、資金繰りを改善できます。また、ファクタリングはスピーディーに資金化できるうえに、償還請求権がないのもメリットです。ただし、手数料がかかり本来受取る金額よりも少なくなるため、計画的に利用しましょう。