キャッシュフローとは？経営において重要な理由と資金繰りの改善策を解説
「売上は安定しているのに資金繰りが厳しい…」このような状況に陥っている経営者は少なくありません。
利益を出しても資金繰りに困る場合は「キャッシュフロー」を意識できていない可能性があります。キャッシュフローとは、企業の現金の流れを表すものです。可視化することで現状の資金量を把握できるため、資金繰りの改善につながります。
この記事では、キャッシュフローを重視した経営のメリットや改善方法を解説します。資金繰りの不安を減らし、本業に集中したい中小企業の経営者や個人事業主の方は、参考にしてください。
目次
キャッシュフローとは？悪化すると黒字倒産の可能性あり
キャッシュフローとは、企業の現金の出入りを示す重要な指標です。
資金繰りが悪化すると「黒字倒産」の可能性が高まります。黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ていても手元に現金がないために支払いができず、倒産することです。売上や利益があっても、現金が不足すれば事業の継続は困難です。
例えば、入金が数カ月先であったり予定より遅れたりすると、たとえ大きな取引で売上が立っていても従業員の給与や仕入れ代金が支払えなくなる可能性があります。
そのため、経営では利益だけでなく現金の流れも常に把握し、収支のバランスを安定させることが重要です。
キャッシュフローの悪化が黒字倒産になる原因
キャッシュフローの悪化が黒字倒産を招く原因は、帳簿上の利益と実際の現金残高が一致しない点です。
例えば、売上が計上されても売掛金として未回収であれば手元に現金はありません。その結果、仕入代や人件費などの支払いに必要な資金が不足し、資金ショートに陥る可能性があります。
また、決算が黒字でも未販売の在庫を多く抱える場合は現金化されていないため、資金不足により経営が行き詰まるケースも珍しくありません。
現金がなければ企業活動は続けられないため、利益が出ていても倒産する可能性があるのが黒字倒産です。
キャッシュフロー経営をするメリット3つ
黒字倒産を防ぐキャッシュフロー経営には、その他にも以下のメリットがあります。
- 資金繰りが安定する
- 経営の選択肢が増える
- 金融機関からの信用力が強化される
上記のメリットを活かすことで経営の安定性が高まり、将来の成長戦略も描きやすくなるでしょう。
1.資金繰りが安定する
キャッシュフローを意識した経営は、入出金のタイミングを把握しやすくなるため、資金繰りの安定につながります。
キャッシュフローの流れを押さえると、支払いに必要な現金の確保や資金ショートのリスクを事前に察知できるため、余裕を持って対応できます。また、毎月の資金不足に悩まされるケースが減るため、目先の対応に追われず経営に集中しやすくなる点も大きなメリットです。
安定した経営には、収支のバランスと現金の流れを常に意識することが重要です。
2.経営の選択肢が増える
資金繰りが安定すると、急な設備投資や広告出稿などのビジネスチャンスにも対応できます。さらに、資金に余裕があると人材採用や新規事業への参入など、将来を見越した経営判断も下しやすくなります。
資金繰りに追われずに戦略的に動ける環境は、企業の成長に直結します。安定したキャッシュフローは、経営の自由度と選択肢を広げる大きな強みとなるでしょう。
3.金融機関からの信用力が強化される
安定した資金繰りの企業は、金融機関からの信用力が高まります。
キャッシュフローの健全性は、返済能力を示す重要な指標です。例えば営業活動で継続的に現金を生み出している企業は、融資審査で「返済に不安がない」と判断されやすいため、希望額を借りられる可能性が高まるでしょう。
さらに、日頃から信用を積み重ねておけば、急に資金が必要になった際も円滑に資金を調達しやすくなります。
金融機関との良好な関係を築くためにも、キャッシュフローを安定させることは重要です。
資金繰り改善のために理解するべきキャッシュフロー3種類
現金の流れを表すキャッシュフローには、以下の3種類があります。
- 営業キャッシュフロー
- 投資キャッシュフロー
- 財務キャッシュフロー
これら3つを把握することで、企業の資金状況や経営の健全性の正確な判断が可能です。
1.営業キャッシュフロー
売上による入金や仕入、人件費といった支出など、企業の本業で生じる現金の流れを示す指標が営業キャッシュフローです。営業キャッシュフローを見ることで、事業活動が正常かどうかを判断できます。
例えば、営業キャッシュフローが継続的にプラスであれば、利益だけでなく現金も確保できている健全な経営状態と判断できます。一方、赤字が続く場合は黒字でも資金難に陥る可能性があるため、早期の改善が必要です。
資金繰りの悪化を防ぐには、営業キャッシュフローの安定が大切になります。
2.投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、企業が将来の成長に向けて行う資金の流れを示すもので、設備投資や有価証券の売買などが該当します。事業の発展や競争力強化のためにどの程度資金を投じているのかがわかる指標です。マイナスになるケースが多いですが、通常は「成長に向けた前向きな支出」と評価されます。
ただし、投資が過剰になると運転資金を圧迫し、資金繰りが悪化するケースもあります。健全な経営には、将来への投資と現金のバランスを見極めることが不可欠です。
3.財務キャッシュフロー
借入や株式の発行、配当支払いなどの資金調達に関わる現金の流れを表すのが財務キャッシュフローです。
財務キャッシュフローでは、企業がどのように資金調達して返済しているかを確認できます。財務キャッシュフローの安定は、資金基盤が強固であることを意味するため、経営の信頼性も高まります。
ただし、借入に過度に依存すると将来的に返済負担が増し、キャッシュフローを圧迫しかねません。
長期的な経営の安定と信用力の向上に直結する重要な要素であるため、しっかり確認しておきましょう。
キャッシュフローの把握には「キャッシュフロー計算書」が効果的
自社のキャッシュフローを把握するには「キャッシュフロー計算書」の作成が有効です。ここでは、以下2通りのキャッシュフロー計算書の作成方法を紹介します。
- 直接法
- 間接法
それぞれの方法を理解し、自社の状況に応じて使い分けることで、より正確で実用的な資金管理が可能になります。
直接法
「直接法」でのキャッシュフロー計算書は、現金の入出金を項目ごとに記載する方法です。収入と支出をそれぞれ記載するため、現金の流れを具体的に把握できます。
直接法の記入は「現金売上⚪︎円」「仕入支出⚪︎円」といった形になるため、実際のキャッシュの動きを直感的に把握できることが特徴です。
直接法は経営者や資金繰りの担当者にとって、日々の現金の流れを正確に捉えられる有効な手法と言えます。
間接法
「間接法」によるキャッシュフロー計算書は、損益計算書の「税引前当期純利益」を出発点として、そこから実際の現金の増減に調整する方法です。現金の収支を損益と併せて把握できることが特徴です。
減価償却費や売掛金・買掛金の増減など、現金の動きに直接関係しない項目を加減算して営業活動によるキャッシュフローを算出します。
会計帳簿から比較的簡単に作成できるため、多くの企業で採用される形式です。
資金繰りの悪化を防ぐ4つのキャッシュフロー改善方法
キャッシュフロー計算書を作成して自社の状況を把握できたら、次は改善に取り組みましょう。以下の項目を意識することで、キャッシュフローは改善が可能です。
- 売掛金の回収を強化する
- 経費の削減を意識する
- 支払いサイトを調整する
- 資金繰り表を作成する
上記の対策を継続的に実践すると資金繰りの安定が見込めるため、経営における意思決定の幅も広がることが期待できます。
1.売掛金の回収を強化する
資金繰りを安定させるためには、売掛金の回収を強化することが重要です。現金化が遅れると、いくら売上があっても資金不足に陥る可能性が高まります。
回収スピードを高めるには、取引先との支払サイト（締日・支払日の取り決め）の見直しや、請求書を即日発行する体制の構築などが効果的です。また、定期的な回収状況のチェックや、未入金に対する督促の強化も欠かせません。
これらの対策により現金の流れがスムーズになり、資金繰りの悪化を防げるでしょう。
2.経費の削減を意識する
経費の見直しはキャッシュフロー改善に直結します。特に固定費や変動費を見直すと、無駄な現金の流出を抑えられるでしょう。
経費の削減をする際は、まずコストパフォーマンスが悪い支出を洗い出し、優先順位をつけて削減を進めましょう。外注費や光熱費、通信費などは特に、継続的な見直しが効果的です。
定期的に契約内容を確認して不要な支払いがないかチェックすると、経費削減の効果を高められます。
3.支払いサイトを調整する
支払いサイトの調整は、資金繰りを改善する有効な手段です。仕入先や取引先と交渉して支払い期限を延長できれば、現金の流出を先延ばしできるため、キャッシュフローが一時的に改善されます。
ただし、過度な延長は信用を損なう可能性もあるため、信頼関係を維持しながらの調整が必要です。継続的な取引先であれば、状況に応じて柔軟に対応してもらえる場合もあります。
4.資金繰り表を作成する
資金繰り表の作成は、キャッシュフローを管理するうえで欠かせない手段です。
将来の収入と支出を週単位や月単位で可視化することで、資金が不足するタイミングを事前に把握できます。その結果、余裕を持った資金調達や支払い計画が立てやすくなり、経営判断の精度も向上します。
資金繰り表は一度作成して終わりではなく、緊急時に備えるためにも定期的な更新と確認をしましょう。
キャッシュフローを改善するならファクタリングの活用がおすすめ
キャッシュフロー経営を実践するうえで、キャッシュフローの改善が重要です。しかし、改善に努めても成果が出ない場合は、ファクタリングをはじめとした資金調達を検討する必要があります。
ここでは、ファクタリングについて以下の項目を解説します。
- 基本的な仕組みとメリット・デメリット
- 有効なケースと具体的な活用事例
- 利用時の流れと注意点
ひとつずつ見ていきましょう。
基本的な仕組みとメリット・デメリット
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、入金期日を待たずに現金化する手法です。資金繰りが逼迫している中小企業や、売掛金の回収に時間がかかる業種にとって有効な選択肢となります。
ファクタリングのメリット・デメリットを、以下の表にまとめてみました。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・借入ではないため負債が増えない ・審査が比較的早い ・即日で現金化できるケースもある ・企業業績が悪くても利用できる場合がある |
・手数料が発生する ・取引先との信頼関係が悪化する可能性がある ・売掛金以上の資金調達はできない |
上手に活用することで、資金ショートのリスクを抑えて安定した経営基盤を築けるようになるでしょう。
有効なケースと具体的な活用事例
ファクタリングが効果的なケースは、売掛金の回収に時間がかかる業種や、急な資金ニーズが発生した場面などが挙げられます。
例えば、運送業では取引先の支払いサイトが長く、燃料費や人件費など先払いが多いため、資金繰りが厳しくなるケースが少なくありません。運送業がファクタリングで売掛金を現金化すると、支払いに充てる資金を確保できます。
いずれのケースでも借入に頼らず資金調達できる点がファクタリングの強みになり、キャッシュフローの改善につなげられるでしょう。
利用時の流れと注意点
ファクタリングを利用する際の一般的な流れは、以下のとおりです。
- ファクタリング会社に見積もりを依頼する
- 売掛債権や取引先に関する資料を提出する
- 審査を受け契約する
- 売掛金が入金される
ファクタリングは申込みから入金まで最短即日で完了するケースもあるため、急に資金が必要になった場合も迅速に現金化できます。
ただし、ファクタリング業者により手数料率が異なるため、利用する前に確認しておきましょう。また、三者間ファクタリングを利用する場合は、取引先へ通知される点も注意が必要です。
ファクタリングは事業者によって融資可能額や融資日程が異なるため、利用する際は複数の会社を比較して信頼できる会社を選択しましょう。
キャッシュフロー経営を実践する流れ
キャッシュフロー経営を実践する際は、以下の流れを意識してみてください。
- キャッシュフローの現状を把握する
- キャッシュフロー計画を策定する
- 計画を実行して見直しと改善を進める
キャッシュフロー経営の第一歩は、自社の現状の正確な把握です。キャッシュフロー計算書や資金繰り表を活用して収入や支出、資金残高など現金の流れを可視化しましょう。
自分の現状を踏まえたうえで、今後の資金計画を立てます。売上の見込みや支払い予定をもとに、数カ月先までの計画を作成すると、資金不足のリスクに備えられます。
策定した計画をもとに、売掛金の早期回収や支払いサイトの調整、経費の見直しといった具体的な改善策を実行しましょう。実施後は定期的に数値を確認し、計画との差異をチェックして改善点を洗い出してみてください。
これらの作業により持続的なキャッシュフロー管理が可能となり、健全な経営体制の維持につながるでしょう。
キャッシュフローを意識して資金繰りを改善し安定した経営につなげよう
キャッシュフローとは企業における現金の流れを示す指標で、経営の健全性を測るうえで重要です。
キャッシュフローが悪化すると、利益が出ていても現金が不足して黒字倒産の可能性が高まります。特に原因となるのは、売掛金の回収遅れや過剰な設備投資、在庫の滞留などが挙げられます。
黒字倒産を回避するには、キャッシュフロー経営の導入が効果的です。資金繰りが安定するため経営判断の幅が広がり、金融機関からの信用力も高まります。
キャッシュフローを改善させるための手段として、資金調達が効果的な場合もあります。すぐに資金が必要な場合は、売掛金をすぐに現金化できるファクタリングの活用がおすすめです。
「Easy factor」は、最短60分で売掛金を現金に換えられます。いち早く資金を調達することで、キャッシュフローを安定化させられる可能性も高まります。キャッシュフローの改善と維持を意識した経営を実践し、資金面での不安をなくしていきましょう。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行（現三菱UFJ銀行）に入行。ニューヨーク支店での非日系企業向けコーポレートファイナンス担当を経て独立。企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
- キャッシュフローとは？経営において重要な理由と資金繰りの改善策を解説 - 2025年4月30日