メリットやデメリットが知りたい!債権流動化の種類や適切な手法の選び方をわかりやすく解説
近年は、資金調達方法として債権流動化が推奨されています。中小企業の資金調達方法は融資に依存するところが大きいものの、担保となる不動産資産がないなどで、受けられない企業も多いようです。審査も厳しく、新しい資金調達方法を模索している企業もあるでしょう。
ただ、債権流動化はまだまだ主流な方法ではないため、何を指すのかご存じない方もいらっしゃるでしょう。また、債権流動化の手法にも種類があるため、効果的に活用するには、それぞれの特徴を知っておく必要があります。本記事では、債権流動化のメリット・デメリットや、適切な手法の選び方をわかりやすく解説します。
目次
債権流動化をわかりやすく解説
債権流動化とは、近年経済産業省によっても推進されている資金調達方法です。しかし、仕組みについてはっきりご存じない方もいらっしゃるかもしれません。では、仕組みをわかりやすく解説しましょう。
債権流動化とは?
債権流動化とは、言葉の通り債権を流動させることです。売掛金や受取手形などの債権を、決済日より早く現金化することです。債権の現金化の方法は、売却や債権を担保とした借入などがあげられます。
債権の流動性とは?
債権の流動性とは、売掛債権が発行されてから現金化されるまでの流れです。通常、企業同士の取引は、現金取引でなく信用取引が行われています。信用取引は、売掛債権が発行され、決済日に代金が後払いされるシステムです。
支払いサイトが長いと現金化までに時間がかかるため、流動性が低いことになります。支払いサイトが短いと、債権がすぐに現金化されるため、流動性は高いことになります。
債権流動化の手法の種類
債権流動化の手法は、1種類ではありません。債権流動化の手法の種類は、次の4つです。
●売掛債権担保融資
●ファクタリング
●手形割引
●売掛債権証券化
では、それぞれの手法についてわかりやすく解説しましょう。
売掛債権担保融資
売掛債権担保融資は、売掛債権を担保として金融機関から融資を受ける方法です。これまでの規定概念において、銀行融資の担保は不動産というイメージでした。
しかし、経済産業省は債権流動化による資金調達を推奨しており、売掛債権のような流動資産も担保にできるようになっています。対応できる金融機関も増えており、利用しやすい手法です。利息も低く、金融機関から借り入れできるので安心です。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛債権を譲渡して資金調達を行います。ファクタリングも、経済産業省が推進しており、法整備も進み利用しやすくなっています。売掛債権を売却するため、借入のように負債を増やさないのが特徴です。審査通過率も70%ほどと高く、融資よりも利用しやすいでしょう。
金融機関だけでなく、独立系ファクタリング業者でも利用できます。債権を使った資金調達方法の中でもっとも一般的で、普及率の高まっている方法です。
手形割引
手形割引は、受取手形を金融機関などへ売却し、資金調達をします。ただし、日本では古くから手形取引が行われてきたものの、政府は廃止の方向で動いています。2026年には紙の手形が廃止される予定であるなど、取引数は減少傾向です。手形が廃れていくとともに、手形割引もなくなることが予想されます。有効な方法ではあるものの、実践できる機会は少ないでしょう。
売掛債権証券化
売掛債権を特別目的会社へ売却し、資金を調達する方法です。特別目的会社は、売掛債権を担保にして証券を発行し、投資家へ売却します。そして、回収した売掛金が、証券保有者へ利息と元本として支払われる仕組みです。
債権流動化の手法の一種ではあるものの、日本においてはほとんど行われていません。とくに、中小企業には向いていない方法です。このような手法もあると、頭に置いておくだけでよいでしょう。
債権流動化のメリット
債権流動化は、経済水産省が推進しているだけあり、さまざまなメリットがあります。その中でも、代表的なメリットは次の通りです。
●資金調達の難易度が低い
●決済日前に資金調達可能
●オフバランス効果で経営を効率化
●資金調達の手段が多様化する
では、それぞれのメリットについてわかりやすく解説しましょう。
資金調達の難易度が低い
債権流動化のメリットは、資金調達の難易度が低いことです。金融機関から融資を受ける場合、担保となる資産が求められるほか、返済能力があるか確認するために厳しい審査が行われます。債権流動化では、売掛債権を現金化するため、担保は必要ありません。
また、審査も融資よりも緩いのが一般的です。
これに対して売掛債権を売るだけで資金調達ができる債権流動化では、融資に必要な審査や担保の提出はありません。
決済日前に資金調達可能
債権流動化のメリットは、決済日前に資金調達ができることです。売掛債権が発行されていると、決済日には必ずお金が入ってくることはわかっています。しかし、支払いサイトが長い場合、決済日までに資金がショートすることもあります。支払い期日より早く現金化できるのは、自転車操業で運営している企業にとっては大きなメリットです。
オフバランス効果で経営を効率化
債権流動化のメリットは、オフバランス効果で経営を効率化できることです。売掛債権は負債として計上されます。そのため、バランスシートから売掛債権を外すことで、負債比率や自己資本比率などの財務指標が改善されるのです。信用力が向上するため、融資や取引などで有利に働きます。また、資産が最適に活用できるため、経営を効率化させられるのです。
資金調達の手段が多様化する
資金調達の手段が多様化することも、債権流動化のメリットです。資金調達方法として融資だけに頼っていると、業績が悪化したり、不動産などの資産価値が下がったりした場合に、融資が受けられない可能性もあります。1つの方法に依存するのは、リスクが伴います。債権流動化を活用することで、状況に合わせた資金調達の選択肢が広がるでしょう。
債権流動化のデメリット
債権流動化には、メリットだけでなくデメリットもあります。代表的なものは、次の2つがあげられます。
●手数料や利息がかかる
●未回収リスクを負うこともある
では、それぞれのデメリットについてわかりやすく解説しましょう。
手数料や利息がかかる
債権流動化のデメリットは、手数料や利息がかかることです。どれぐらいの手数料や利息がかかるかは、利用する方式や取引相手によっても異なります。売掛債権担保融資であれば、公的機関からの融資であれば、銀行よりも低い利息で受けられるケースもあります。ファクタリングの場合は、2社間での契約であれば20%ほどの手数料がかかることもあるでしょう。
ただし、手数料や利息がかかるのは、債権流動化による資金調達だけではありません。どのような方法で調達しても手数料や利息などのコストはかかるため、致命的なデメリットと捉える必要はないでしょう。手数料や利息が、適切な範囲内に設定されているか確認して、利用することが大切です。
未回収リスクを負うこともある
未回収リスクを負うことがあるのも、債権流動化のデメリットです。活用した売掛債権の回収ができなかった場合、受取った資金の返金が必要な場合もあります。契約に、買戻しの権利や償還請求権の含まれている場合が、それにあたります。ファクタリングにおいては、原則としてノンリコース契約となるため、償還請求権はありません。ただし、中には償還請求権付の契約を行う業者もあるため、注意が必要です。
債権流動化の最適な手法の選び方
最適な債権流動化の種類は、利用する目的によっても異なります。最適な手法を選ぶ目安は、次の通りです。
●できるだけ早く資金調達したい場合
●時間に余裕がある場合
●受取手形がある場合
では、それぞれのポイントについてわかりやすく解説しましょう。
できるだけ早く資金調達したい場合
できるだけ早い資金調達を希望するなら、ファクタリングが向いています。支払い期日が迫っている、注文が入ったのに仕入れの資金が不足しているなどの場合、重視すべきはスピードです。ファクタリングは、最短即日入金が可能で、通常は数日で資金が調達できます。
とくに、2社間ファクタリングはスピーディーな資金調達が可能です。売掛債権担保融資の方が手数料は安く済ませられますが、審査に2週間から1か月かかるため、最速でも入金までに2週間ほどかかるでしょう。
時間に余裕がある場合
資金が必要な期日までに余裕があるなら、売掛債権担保融資がよいでしょう。審査はファクタリングほど早くありませんが、手数料が安いというメリットがあります。ただし、審査もファクタリングより厳しいため、審査通過率はファクタリングよりも低くなります。できるだけコストをかけずに資金調達したい場合も、売掛債権担保融資がおすすめです。
受取手形がある場合
手形取引を行っており、受取手形が手元にある場合は、手形割引がよいでしょう。手形割引は、手数料も低く設定されているうえに、現金化までの時間も短く、即日調達も可能です。売掛債権担保融資とファクタリングの利点が融合した資金調達方法となります。
しかし、経済産業省が手形取引の廃止に動いているため、手形取引を行う業者は激減しています。これから新規で手形取引を行おうという企業はないでしょう。まだ手形取引を行っているのであれば、手形取引で資金調達するのがおすすめです。
債権流動化をわかりやすく解説することについてのまとめ
債権流動化とは、売掛債権を決済日より早く現金化して資金を調達することです。銀行融資程審査が厳しいわけでなく、オフバランス効果で経営を効率化できるというメリットがあります。しかし、手数料がかかったり、契約方法によっては未回収リスクを負ったりすることもあります。メリットとデメリットがあるので、どちらも把握したうえで利用することが大切です。銀行融資以外に資金調達の選択肢がいくつかあることは、会社経営を行ううえで心強いでしょう。