調剤報酬ファクタリングは薬局経営の資金繰りを改善するための方法―その導入効果や利用上の注意点を紹介
調剤薬局の経営にはお金がかかります。したがって薬局経営者の中には資金繰りの悩みを持っているという方がおられるでしょう。
資金繰りの悩みを持つ薬局経営者におすすめの資金調達手段が調剤報酬ファクタリングです。
しかし、薬局経営者の中には「ファクタリングは怪しい資金調達手段」と感じている方がいらっしゃいます。さらに、ファクタリングで資金調達した経験がないという方もおられます。
そこで本稿では調剤報酬ファクタリングに関連する以下の点を解説します。
調剤薬局が資金繰りに悩む理由
調剤報酬ファクタリングで資金調達する仕組み
調剤報酬ファクタリングの導入効果
調剤報酬ファクタリング
薬局経営者で資金調達手段を増やしたい、資金不足を解消したいといったお悩みがある方はこの記事を参考にしてください。
目次
調剤薬局が資金繰りに悩む理由
調剤薬局が資金繰りに悩むことがあるのは、次のような理由によります。
費用がかかる
調剤報酬は申請から入金までに1ヶ月から1ヶ月半かかる
クレジットカード決済の増加
それぞれの理由についてそれがなぜ資金繰りの悩みにつながるのかを解説します。
費用がかかる
調剤薬局の事業をおこなうには毎月の次の項目で費用がかかります。
店舗の賃貸料
設備費
医薬品購入費
固定費(水道光熱費・機器のリース費・人件費など)
諸費用(交通費・ガソリン代・通信費・広告宣伝費など)
薬局経営には支払いが必要なものが多いので、支払いに充てる資金が不足するということが起こります。
調剤報酬は申請から入金までに1ヶ月から1ヶ月半かかる
調剤薬局が資金繰りに悩む別の原因は、調剤報酬は申請から入金までに1ヶ月から1ヶ月半かかるからです。
調剤報酬は、調剤がおこなわれた月の翌々月20日以降に国民健康保険団体連合会(国保連)や社会保険診療報酬支払基金(社保)から支払いがあります。
入金までの期間が長いので、入金を待っている間に大きな支払いが必要になれば、その支払いに充てるお金が足りないということが起こります。
クレジットカード決済の増加
患者の自己負担分の支払いも調剤薬局の収入になる部分です。しかしクレジットカード決済が増加することですぐに現金を手にする機会が減り、それが資金繰りに悩む原因となります。
カード決済における代金の入金は、次の回収サイトでおこなわれるが一般的です。
利用者のカード決済日と同月に売上確定し翌月末入金
利用者のカード決済日の翌月に売上確定し翌々月末入金
2番目の回収サイトなら、月初めにカード決済されたものは翌月末に売上確定され入金は翌々月末になります。つまり販売から入金までの期間は3ヶ月です。
現金決済であれば即日回収できるものが、カード決済になることで入金まで2~3ヶ月かかるので、それが資金繰りを悪化させる原因となります。
調剤報酬ファクタリングで資金調達する仕組み
資金繰りの悩みがある薬局経営者におすすめの資金調達手段が調剤報酬ファクタリングです。
調剤報酬ファクタリングは、調剤薬局が保有する調剤報酬債権をファクタリング事業者に買取してもらうことで、国保連や社保による入金よりも前に調剤報酬債権を現金化できるサービスです。
調剤報酬ファクタリングにおける契約から入金までのフロー
調剤報酬ファクタリングにおける契約から資金調達完了までのフローは以下の通りです。
1. 調剤薬局とファクタリング事業者の間で債権譲渡契約を結ぶ
2. 調剤薬局が国保連・社保に調剤報酬を請求
3. ファクタリング事業者から調剤薬局に請求額に掛け目を乗じた金額が早期入金される
4. 国保連・社保がファクタリング事業者に調剤報酬を支払う
5. ファクタリング事業者から調剤薬局に請求額の残金が入金される
調剤報酬債権の買取は債権譲渡契約です。調剤薬局はファクタリング事業者から買取代金を受け取ります。債権譲渡契約により調剤報酬の債権者は調剤薬局からファクタリング事業者へ移転します。
こうした取り決めにより、債務者である国保連・社保は新しい債権者であるファクタリング事業者に請求があった調剤報酬を支払うわけです。
調剤報酬ファクタリングの申込に必要な書類
調剤報酬ファクタリングの申込には一般的に以下の書類が必要です。
事業所の指定通知書
診療報酬請求書、支払決定額通知書
納税証明書
決算書・確定申告書・勘定科目内訳などの財務資料
通帳のコピー
代表者の本人確認書類
必要書類は各事業者、申込内容ごとに違いがあるので、詳細は各ファクタリング事業者までお問い合わせください。
調剤報酬ファクタリングの導入効果
調剤報酬ファクタリングの導入効果として挙げられるものは以下の通りです。
融資以外の資金調達手段が確保できる
負債にならない
回収サイトが短縮できるので資金繰りが安定する
資金が自由に使える
融資以外の資金調達手段が確保できる
薬局経営では融資で資金調達するのが一般的な方法ですが、融資の場合審査に1ヶ月程度時間がかかります。これでは急な資金調達が必要になったときに対応できません。
調剤報酬ファクタリングの審査は通常1週間程度で完了します。したがって融資よりも結果が早くわかるのが強みです。
さらに融資の場合、自己資金が不足している、返済能力に問題があるなどの理由で審査に落ちる可能性があります。
一方、ファクタリングでは利用企業の返済能力よりも、売掛先の支払い能力に重きを置いて審査します。調剤報酬ファクタリングの場合、売掛先にあたるのは国保連・社保ですから支払い能力については問題ありません。
ファクタリング事業は、調剤報酬債権は債権回収不能になる心配がないので積極的に買取します。
したがって、融資の審査結果を待っている時間がない、融資をこれ以上受けるのが難しいといった悩みがあれば、調剤報酬ファクタリングで資金調達してください。
負債にならない
調剤報酬を含むファクタリングでの資金調達は負債になりません。すでに説明したように債権譲渡による資金調達で融資による資金調達ではないからです。
融資を申込む場合、担保や保証人を求められることがありますが、融資ではないファクタリングで申込に担保や保証人は必要ありません。
さらに融資の場合、金利負担や返済義務がありますが、ファクタリングには金利負担や返済義務もないです。
したがって、これ以上会社の負債を増やしたくないというニーズがあれば、調剤報酬ファクタリングで資金調達できます。
回収サイトが短縮できるので資金繰りが安定する
調剤報酬ファクタリングを使えば通常の入金日よりも前に資金を得ることが可能です。これにより調剤報酬の回収サイトが短縮できます。
回収サイトが長ければ、入金待ちの間に取引先の決済日が来ることで、支払いに必要なお金が不足するということが起こります。
回収サイトが短縮できれば、手元にある資金に余裕が生まれ資金繰りが安定するので、支払いにも十分対応できるようになります。
資金が自由に使える
ファクタリングの別の強みは資金使途の自由度が高いという点です。
融資の場合、申し込みの際に資金使途を明確にし、融資を受けた後はその目的のためだけに資金を使わなければなりません。設備投資を目的に融資してもらったものを運転資金に使えば資金使途違反です。資金使途違反をすれば、融資を受けた金融機関からの追加融資は難しいでしょう。
一方ファクタリングでは、申込の際に資金使途の説明は不要です。調達した資金は薬局それぞれの需要に応じて自由に使うことができます。
ファクタリングで調達した資金を負債の返済に充てることも可能です。会社の負債が減少すれば健全な経営をしているとみなされるので、将来融資を申込んだときに好条件での融資を受けることが期待できます。
調剤報酬ファクタリングを利用する際の注意点
調剤報酬ファクタリングを利用する際の注意点は次の通りです。
手数料が発生する
掛け目がある
契約期間の縛りがある
それぞれの注意点について具体的に何に注意が必要かを説明します。
手数料が発生する
調剤報酬ファクタリングを利用する際の注意点は手数料が発生することです。買取額から必ず手数料が差し引かれます。
したがって、請求した調剤報酬債権の全額を資金化することはできません。この点にも注意してください。
ただし、調剤報酬ファクタリングの手数料は一般的なファクタリングサービスの手数料と比較すると低いのが特徴です。
一般的なファクタリングサービスでは、売掛先の信用力により債権回収不能になるリスクがあります。こうした理由から、ファクタリング事業者はリスクが高い案件については手数料を高く設定するわけです。
一方、調剤報酬ファクタリングは売掛先が国保連・社保なので債権回収不能になるリスクがほぼないので、ファクタリング事業者は手数料を低く設定しています。
掛け目がある
調剤報酬ファクタリングには掛け目がある点に注意してください。
ファクタリング事業者は調剤報酬債権を買取する際に、債権の額面に一定の比率の掛け目(買取率)をかけて買取金額を計算します。
たとえば1000万円の調剤報酬でファクタリング事業者の設定した掛け目が90%なら、買取金額は900万円です。900万円から手数料を引いたものがまず入金されます。
掛け目の役割は保証金と同じようなものです。したがって、ファクタリング事業者が国保連・社保からの入金を確認すれば、掛け目で差し引いた保留金(例でいえば残り10%分の100万円)を後日受け取ることができます。
契約期間の縛りがある
調剤報酬ファクタリングを扱う事業者によっては、契約期間に1年間・2年間といった縛りを設けているところがあります。
調剤報酬ファクタリングはその特徴ゆえに手数料が低いです。手数料にはファクタリング事業者の儲けが含まれています。こうした理由から調剤報酬ファクタリングで事業者が利益を上げるにはある程度の長期契約が必要になるわけです。
調剤報酬ファクタリングのサービス提供事業者の中には、契約期間の縛りが短いところがあります。つなぎ資金を一時的に調達したいといったケースでは、契約期間の縛りが短い事業者を選んでください。
クレジットカード債権もファクタリングできる!?
薬局利用者の多くがカード決済という場合、クレジットカード債権のファクタリングで資金調達することが可能です。
クレジットカード債権はカード会社から売上を現金で受け取る権利ですから売掛債権とみなせます。クレジットカード債権ファクタリングを使えば、カード決済による売上の入金よりも前に現金を受けとることが可能です。
ただし、クジレットカード債権ファクタリングは2回手数料が発生する点に注意してください。手数料とその相場は以下の通りです。
カード決済の売上を受け取るためにカード会社に支払う決済手数料
ファクタリングを利用するためにファクタリング事業者に支払う手数料
決済手数料の相場:決済代金の3%~10%
ファクタリングの手数料の相場:2社間方式は債権額の8%~18%、3社間方式は2%~9%
こうした理由から、クレジットカード債権ファクタリングによる資金調達額は、実際の売上よりも額が少なくなる点に注意してください。
調剤報酬ファクタリングについてのまとめ
資金繰りの悩みがある調剤薬局におすすめの資金調達手段が調剤報酬ファクタリングです。
調剤報酬債権を売却することで、調剤報酬を受け取る期日より前に資金を得ることができます。それにより資金繰りが安定し、支払いに必要な資金を確保することが可能です。
調剤報酬で資金繰りが安定すれば、事業拡大のための投資にその資金を使うこともできます。
薬局の経営者で資金調達の方法を探している、資金繰りに悩んでいるという方は、調剤報酬ファクタリングをぜひお試しください。