ファクタリングの審査は何を見られる?基本的なポイントと落ちてしまう理由を解説
ファクタリングを利用するにあたって、ほとんどのファクタリング会社には審査があり、断られることもあります。
そんなファクタリングですが短期間で資金調達ができることや融資とは異なり、負債にはならずに資金調達ができる利点があります。ファクタリングを活用するためにも審査基準など重要なポイントを把握することが大事です。
本記事では、ファクタリング会社の審査基準や審査で落ちてしまうポイントなどを解説していきます。ぜひご参考にしてください。
ファクタリングを利用する際には審査を受けなければなりません。
利用者がファクタリング会社に申し込みして、ファクタリング会社が利用者や売掛債権について審査します。
その結果、問題ないと判断されれば手数料などが決定され、ファクタリングの契約へと進む流れです。
ただ、ファクタリングの審査では落ちてしまうこともあるなど、その内容について詳しく知っておくに越したことはありません。
今回はファクタリングの概要と審査について詳しく解説します。
目次
ファクタリングとはなにか
ファクタリングとはどのような取引であるのか正しく理解できていない人がいるかもしれません。
審査について解説する前に、まずはファクタリングとはどのような取引であるのか簡単に解説します。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで資金調達する仕組みを指します。
本来は売掛先から入金されるまで資金調達ができませんが、ファクタリングを利用すれば早々に資金調達が可能です。
売掛先から入金してもらう権利をファクタリング会社に売却することで、その対価を得られます。
ただ、売掛金という未回収のリスクがあるものをファクタリング会社に買い取ってもらうため、手数料を支払わなければなりません。
つまり、本来の入金日に入金される金額よりも、手元に残るお金が少なくなってしまいます。
ここはファクタリングの注意点といえる部分であるため、利用にあたっては特に注意しておかなければなりません。
ファクタリングの種類
ファクタリングには2種類あり、それぞれ以下のとおりです。
● 2社間ファクタリング:利用者とファクタリング会社での取引
● 3社間ファクタリング:利用者とファクタリング会社に売掛先を加えた取引
2社間ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらった後、利用者がファクタリング会社に入金します。
売掛金は一度利用者が受け取って、そこからファクタリング会社に入金しなければなりません。
利用者を経由してファクタリング会社へ入金される仕組みであるため、ファクタリング会社は若干のリスクを抱え、手数料は少々高くなる傾向にあります。
それに対して、3社間ファクタリングは売上債権をファクタリング会社に買い取ってもらった後、売掛先がファクタリング会社に入金します。
利用者を経由せずにファクタリング会社へ入金されるため、ファクタリング会社のリスクが少なく、手数料は低く設定されやすいです。
なお、近年はファクタリングの取引がオンラインで完結しやすくなっています。
オンライン完結型のファクタリング会社を利用すれば、2社間ファクタリングでも手数料を抑えやすいためおすすめです。
ファクタリングに影響する6つの審査基準
ファクタリングはいくつもの観点から審査されていると考えられます。
明確な審査基準は企業秘密であり非公開ですが、おおむね以下の観点から審査されていると考えましょう。
● 売掛先の信用力
● 売掛金の支払い日
● 売掛先との取引回数
● 利用者の信用力
● 債権の種類
売掛先の信用力
ファクタリングの審査は利用者ではなく売掛先の信用力を中心に行われます。
売掛債権を保有するのはファクタリング会社であり、その支払い義務を負うのは売掛先であるため、支払えるかどうかは非常に重要です。
売掛先が安定して支払えると判断できるほど審査に通過しやすくなり、支払えるかどうか不透明であるほど審査に通過しにくくなります。
例えば、上場企業など社会的信用力の高い企業であれば審査に通過しやすく、設立されて半年など社会的信用力の低い企業は審査に通過しにくいです。
なお、売掛先の信用力はファクタリング会社の基準に基づいて評価されるため、私たちが持つ感覚とは異なる可能性があります。
「問題ない企業だろう」と考えていても、ファクタリング会社の審査では問題が見つかり、ファクタリングできないことはありえるのです。
予想に反して審査に落ちてしまうことが考えられるため、ファクタリングを利用する際はそこに注意しておかなければなりません。
売掛金の支払い日
売掛金の支払い日についても重要視されます。
ファクタリング会社はできるだけ早く売掛金を回収したいため、支払われるのがあまりに先であると審査に落とすかもしれません。
業界や業種によって多少の差はありますが、売掛金の支払いは「月末締め翌月末払い」や「月末締め翌々月末払い」が大半でしょう。
これらよりも支払いサイトが長い売掛債権については、ファクタリング会社が審査でリスクを感じて買い取ってくれないかもしれません。
もちろん、支払いサイトが長いとファクタリングできないかと問われると、そうとも言い切れないです。
条件によっては支払いまでの期間が長くともファクタリング会社は対応してくれます。
ここはファクタリング会社の方針などにも左右されるため、不安があるならば審査の前に一度確認してみることをおすすめします。
売掛金の存在
売掛金が本当に存在するのかはファクタリングにおいて非常に重要です。
中には架空の売掛金を作り上げてファクタリング会社から資金調達しようとすることがあるため、ファクタリング会社は細かく確認しています。
今までの取引などを踏まえて、本当に売掛金が存在していて、売掛債権の売買が成り立つのかどうかを審査するのです。
審査の内容については公開されていないため、実在する売掛債権でも審査に落とされてしまうことはあるかもしれません。
ファクタリング会社は最大限までリスクを引き受けてくれますが、全てのリスクを引き受けてくれるわけではないのです。
何かしら疑わしい点が存在する場合は、それが原因で審査に落ちてしまう可能性があります。
売掛先との取引回数
売掛先との取引回数が審査では重要となります。
今までに安定して取引しているほどファクタリング会社のリスクが小さくなり、審査に通過しやすくなるのです。
一般的に今までの取引回数が多ければ多いほど、それらの会社間では信頼関係が構築できていると考えられます。
逆に今まで一回も取引がない状態では「本当に入金されるのだろうか」という疑念が生じてしまうのです。
売掛先に支払いの意思があったとしても、何かしら事務的な手続きのミスで支払いされない可能性は十分に考えられます。
そのような人為的ではない問題も含めて、ファクタリング会社は細かく審査して最終判断を下す仕組みです。
取引回数が多い売掛先であれば審査の心配はないと考えられますが、取引回数が少ないと落ちてしまうかもしれません。
利用者の信用力
審査に大きな影響は与えませんが、利用者の信用力も最低限は必要です。
例えば、表向きには健全な取引であっても、利用者に反社会勢力などとのつながりが見受けられるならば審査に落ちてしまうでしょう。
また、過去に何かしら大きなトラブルを起こしていると、それが原因でファクタリングを断られてしまう可能性があります。
ただ、これは審査に落ちるという観点ではなく、そもそもファクタリング会社の利用を断られていると考えるべきです。
基本的にファクタリングの審査に利用者の状況は大きな影響を与えないため、大半の人は気にしなくても差し支えありません。
債権の種類
売掛債権の種類が審査では影響することが考えられます。
例えば、継続的に生じる売掛債権なのか突発的な売掛債権なのかは審査に影響すると考えるべきです。
上記で触れた内容に通じる部分がありますが、継続的な売掛債権の方が安定していてファクタリング会社からの評価は高まります。
つまり、毎月取引していてその一環で生じる売掛債権は審査に通過しやすくなるのです。
逆に、継続的な取引がある企業間でも、突発的に生じた売掛債権ならば比較的審査には通過しにくくなります。
ただ、ファクタリングの審査は多角的に行われているため、売掛債権の種類だけで審査結果が決まるようなことはないと考えてよいでしょう。
ファクタリングの審査に落ちやすい売掛債権の特徴
ファクタリングの審査内容は非公開ですが、事実として審査に落ちやすい売掛債権は存在します。
以下のとおり、どのような売掛債権が審査に落ちやすいのかみていきましょう。
● 未回収のリスクが高い
● 不良債権とみなされる
● 取引回数が少ない
● 支払いサイトが長い
● 売掛先が個人である
● 二重譲渡が疑われる
未回収のリスクが高い
未回収のリスクが高いと考えられる売掛債権は審査に落ちる可能性が高まります。
ファクタリング会社は最終的に売掛債権を回収しなければならないため、回収できない売掛債権は買い取ってくれないのです。
ある程度のリスクを背負って買い取ってくれるケースは多々ありますが、そのようなファクタリング会社でも審査を通せない売掛債権は一定数あります。
例えば、赤字が続いている企業や民事再生中の企業については、売掛金の支払いが困難かもしれません。
このような企業の売掛債権を買い取ることはファクタリング会社にとってリスクが大きすぎるため審査に落とされてしまうのです。
具体的にどのような状況下で審査に落ちるかは判断できませんが、取引先の経営状況に問題があると審査に落ちる可能性が高まります。
不良債権とみなされる
すでに不良債権となっているものは間違いなく審査に落ちると考えましょう。
上記で説明したものは未回収のリスクがあるものですが、不良債権については回収できないものです。
そもそも資産価値がゼロ円であるため、ファクタリング会社でも買い取りの値がつかず審査に落とされてしまいます。
基本的に不良債権となってしまった売掛債権はファクタリング会社ではどうすることもできません。
そのような状況に陥る前にファクタリング会社を利用して、リスクヘッジを済ませておくことが重要です。
取引回数が少ない
今までに取引回数が少ない企業間での取引はファクタリングの審査に落ちやすくなります。
これは売掛先から入金された実績が少ないため、ファクタリング会社がリスクを感じてしまうからです。
利用者が同じファクタリング会社を何度も利用していても、売掛先との取引が少なければ審査に落ちる可能性があります。
具体的に何回が良いとは言い切れないですが、ある程度は取引を重ねている企業との売掛債権をファクタリングしましょう。
支払いサイトが長い
支払いサイトが2ヶ月以上など長すぎると審査に落とされてしまう可能性があります。
これはファクタリング会社が回収できるまでの期間が長すぎるためです。
一概には言えませんが基本的には2ヶ月以内が支払いサイトであるため、ファクタリングにあたってはこの期間に該当する売掛債権を選択します。
極端に支払いサイトが長い売掛債権をファクタリングしたいならば、審査を受ける前にファクタリング会社へ相談するなどしておくと安心です。
売掛先が個人である
売掛先が個人の場合はファクタリングできないケースが多くなっています。
これにはいくつもの理由があると考えられますが、例えば個人の信用力は評価しにくいことがあるでしょう。
一般に法人の信用力は民間の調査会社などの情報をもとに把握できます。
ファクタリング会社もこのような情報を活用して、信用力があるかどうか評価しているでしょう。
しかし、売掛先が個人になってしまうとこのような評価が難しくなってしまいます。
継続的かつ確実に支払いを続けてもらえているならばファクタリングできるかもしれませんが、基本的には法人間の取引でなければ審査に通過できないと考えるべきです。
二重譲渡が疑われる
売掛債権の二重譲渡が疑われる場合はファクタリング会社が審査に落としてしまいます。
二重譲渡とは簡単に説明すると、ひとつの売掛債権を複数のファクタリング会社などに売却する行為です。
ファクタリングは契約が成立した段階で売掛債権の所有者がファクタリング会社に移るため、二重に譲渡することは大きな問題となります。
ただ、実際に何かしらのものをファクタリング会社へ送付することはないため、仕組みとしては二重譲渡ができてしまうのが事実です。
そのため、他のファクタリング会社などに売掛債権が譲渡されている可能性がないか審査でチェックして、何かしらの疑いがあると審査に落ちてしまいます。
なお、ファクタリング会社はこのような売掛債権の二重譲渡を防ぐために「債権譲渡登記」と呼ばれる手続きを踏むことが可能です。
こちらの手続きを踏むと、債券の所有者が変更されたことを法的に証明できます。
時にはこちらの手続きを求められることがあり、問題なく手続きができれば、間違いなく二重譲渡がなくなるため審査に通過しやすくなります。
ファクタリングの審査に通過するために意識したい5つのコツ
これからファクタリングの審査に通過したいと考えているならば、通過するためのコツを意識すべきです。
いくつもの観点がありますが、今回は以下を特に意識してみましょう。
● 必要書類を揃える
● 信用力の高い売掛債権を選択する
● 支払い日が近い売掛債権を選択する
● 売掛債権の金額を抑える
● 丁寧な説明を心がける
必要書類を揃える
まずは当たり前ですが必要書類をすべて揃えなければなりません。
言うまでもないことだと考えられますが、実際には手続きに必要な書類が不足していて審査に落ちてしまうケースが見受けられます。
ファクタリング会社によって必要な書類は異なりますが、例えば以下のような書類を用意しなければなりません。
● 売掛金額を証明するもの(請求書・納品書など)
● 売掛金の発生を証明するもの(請求書の送付メール・購買ツールの情報など)
● 利用者の身分証明書
● 売掛先からの入金がわかるもの(通帳のコピーなど)
● 数期分の決算書
● 商業登記簿謄本
● 印鑑証明書
このような書類が必要とされるため、指示に従って全て用意する必要があります。
何かしら抜けていると審査に落ちてしまう原因となりかねないため注意しましょう。
また、書類も提出しているものの、ファクタリング会社が求める内容ではないケースも見受けられるため、内容についても改めて確認することが重要です。
信用力の高い売掛債権を選択する
審査に通過しやすいように可能な限り信用力の高い売掛債権を選択しましょう。
繰り返しですが上場企業との取引や国・地方自治体などとの取引が理想的です。
このような取引は売掛先からの支払いが滞る可能性が非常に低く、審査で落ちてしまう可能性もほぼないと考えられます。
ただ、このような企業や自治体と取引できている企業というのは限られているのが事実でしょう。
そのため、実態としては売掛先の資本金が大きいなど、相対的に信用力が高い企業を選択すべきです。
設立されて間もない企業など売掛債権の信用力が問われるようなものは、審査に落ちる可能性が高くおすすめしません。
支払い日が近い売掛債権を選択する
売掛金の回収タイミングがあまりに先であると審査に落ちてしまう可能性があります。
これを避けるために、できるだけ売掛金の回収日が近い売掛債権を選択しましょう。
例えば2ヶ月後に回収できる売掛債権よりも、1ヶ月後に回収できる売掛債権の方が審査に通過しやすくなります。
ただ、回収までの期間が2ヶ月を超えていなければ、ある程度は審査に通過できるようです。
一般的な会社間の取引ではこの程度の支払いサイトが利用されているため、ファクタリング会社もそこまでは許容しています。
とはいえ、回収日が先になるとファクタリング会社のリスクが高まり審査落ちの可能性が出てくるため、他の選択肢があるならば回収日が近いものを選択すべきです。
売掛債権の金額を抑える
ファクタリングを利用する売掛債権の金額を最小限に抑えるべきです。
あまりに多くの金額をまとめてファクタリングしようとすると、それが原因で審査に落ちてしまうかもしれません。
例えば、毎月100万円を売り上げる会社が90万円をファクタリングしてしまうと、本来、売掛金が入金される日には10万円しか入金されなくなってしまいます。
このような状況は財政状況の悪化につながってしまうため、望ましくないことはご理解いただけるでしょう。
ファクタリング会社も同様の認識を持っていて、推定される売掛債権の総額とファクタリング希望額の合計を鑑みて審査していると考えられます。
どうしても資金が必要な場合はファクタリングが選択肢に挙がりますが、売上の全てをファクタリングするような行為は審査で落とされてしまうでしょう。
丁寧な説明を心がける
売掛債権の内容について説明を求められた際は丁寧に対応しましょう。
適当な対応をしたり話の内容に矛盾があったりすると、ファクタリングの審査に落ちてしまう可能性があります。
また、審査に落ちてしまうだけではなく「虚偽の申告をする利用者」としてファクタリング会社の利用そのものを断られてしまうかもしれません。
ただ、これについては何も難しいことはなく、質問に対して丁寧な回答をすれば良いだけです。
何かしら取り繕うとするのではなく、質問に対して虚偽が含まれないように誠実な回答をしましょう。
説明の悪さによって審査に落ちてしまうことがないように肝に銘じてください。
ファクタリングの審査ポイントや落ちてしまう理由のまとめ
本記事では、ファクタリングの審査について解説しました。
基本的には売掛先の信用力に基づいて審査され、審査の詳細については公開されていません。
ただ、取引先に信用力があれば、ある程度審査に通過できると考えて差し支えないでしょう。
逆に、取引先の信用力が低かったり売掛債権そのものが怪しければ審査に落ちてしまう可能性が高まります。
自分では問題ないと判断していても、ファクタリング会社が問題ありと判断する可能性もあるため、審査が完了するまで「ファクタリングできる」と過信しないようにすべきです。
ファクタリング会社によって、審査基準も異なりますので審査通過率を上げるのに複数のファクタリング会社に申し込んでみましょう。