スタートアップの資金調達、最適解はどれ?6つの手法と失敗しないための戦略を解説

スタートアップが事業成長を目指すうえで、資金調達は避けて通れないテーマです。プロダクト開発や人材採用、マーケティングといった先行投資には多額の資金が必要であり、資金不足は大きなビジネスチャンスを逃す原因にもなります。しかし、資金調達の方法は多岐にわたるため、自社に合った手段が分からず悩む事業者は多いでしょう。
本記事では、スタートアップが検討すべき代表的な資金調達方法と、資金調達で失敗しないためのポイントを解説します。自社に適した資金調達方法を見つけ、事業を成功に導くための参考にしてください。
目次
スタートアップが検討すべき資金調達手段6選

スタートアップが活用できる資金調達手段は、以下の6つに分けられます。
- 自己資金の活用
- エクイティファイナンス
- デットファイナンス
- アセットファイナンス
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
それぞれ特徴は異なるため、自社の事業フェーズや資金調達目的に適した手段を検討しましょう。
自己資金の活用
スタートアップにおいては、創業者自身が準備した資金や家族・知人などから援助を受けた資金を事業の元手にするケースもあります。創業初期は外部からの資金調達が難しいことも多いため、自己資金を活用して事業基盤を固め、実績を積み上げていく方法が一般的といえますです。
自己資金を活用する主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・返済義務や利息が発生しない ・外部からの経営干渉を受けず、自由な意思決定ができる ・迅速に資金を事業に投下できる | ・調達できる金額に限りがある ・事業に失敗すると、個人の資産を失うリスクがある |
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、企業が新株を発行し、それを投資家に購入してもらうことで資金を調達する方法です。以下のメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・返済義務のない自己資本が増えるため、財務基盤の強化につながる ・数億円単位の多額の資金調達も可能 ・出資を受けた投資家から、経営に関する支援やアドバイスを受けられる場合がある | ・株式を放出するため、経営者の持株比率が下がり経営権が希薄化する ・株主に対して配当金の支払いが発生する可能性がある ・資金調達までに交渉などで時間がかかる |
エクイティファイナンスの具体的な手法には、以下のようなものがあります。
- 第三者割当増資
⇒特定の第三者(金融機関、事業会社など)に新株を割り当てる - エンジェル投資家からの出資
⇒創業初期の企業に出資する個人投資家から出資を受ける - ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
⇒未上場の成長企業に資金提供する投資会社から出資を受ける
デットファイナンス
デットファイナンスとは、金融機関などから融資(借入)によって資金を調達する方法です。デットファイナンスには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 経営権に影響しにくい返済スケジュールが立てやすい計画的な返済により、企業の信用力が高まる | 元本の返済義務と利息の支払いが発生する担保や連帯保証(経営者の個人保証など)が求められる場合がある赤字が続くと、追加の融資を受けるのが難しくなる |
スタートアップが活用できるデットファイナンスには、以下のようなものがあります。
- 日本政策金融公庫からの融資
- 制度融資(地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資)
- 銀行や信用金庫からのプロパー融資
- 消費者金融などのビジネスローン
それぞれの特徴・利用方法については、以下の記事をご参照ください。
信用保証協会の保証付融資とは?制度の仕組みや審査落ちの原因と対策
日本政策金融公庫の審査基準と通るコツ|創業融資の金利・必要書類ガイド
ビジネスローンとは?メリット・デメリットや利用時の注意点を解説
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、企業が保有する資産を活用して資金を調達する方法です。メリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・資金調達の成功率が企業の信用力や実績に左右されにくい ・借り入れではないため、負債を増やさずに資金調達できる ・審査が比較的スピーディーで、早期の資金化が期待できる | ・保有する資産の評価額以上の資金は調達できない ・手数料が発生する ・活用できる資産を保有している必要がある |
アセットファイナンスの具体的な手法は3つあります。
- ファクタリング
⇒入金待ちの売掛債権(請求書)を売却して早期に現金化する - リースバック
⇒保有する不動産や設備を売却し、リース契約を結んで使い続ける - 動産担保融資(ABL)
⇒商品在庫や売掛金を担保にして融資を受ける
ファクタリングやABLについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。
ファクタリングとは?仕組みや種類・メリット・デメリットなどを解説
ABLとは?仕組みやファクタリングとの違いをわかりやすく解説
補助金・助成金
補助金・助成金は、国や地方自治体が政策目標の達成のため、事業者の取り組みを支援するために支給する資金です。利用するメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・原則として返済義務がない ・採択されることで、事業の社会的な信用度が高まる | ・原則として後払いのため、すぐに資金が必要な場合には不向き ・申請手続きが煩雑で、多くの書類作成が必要 ・公募期間が限られており、必ず採択されるとは限らない |
スタートアップが活用を検討できる補助金・助成金の一例を、以下に挙げました。
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
返済義務がない点に魅力を感じる方は多いでしょうが、各補助金・助成金の条件を満たさなければ利用できないため、申し込み前に確認しておきましょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を集める方法です。以下のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・事業の実績がなくても、アイデアやビジョンへの共感を元に資金を集められる ・資金調達と同時に、製品・サービスのテストマーケティングやファン獲得ができる | ・目標金額に達しないと資金調達ができない場合がある ・援者へのリターン(返礼品)の準備や発送にコストと手間がかかる |
クラウドファンディングは、目標金額に達しなくても集まった資金を受け取れる「All-in型」と、目標金額に達した場合のみ資金を受け取れる「All-or-Nothing型」に分けられます。
スタートアップの資金調達にはファクタリングがおすすめ

スタートアップは事業拡大に資金を投じる一方で、売上が安定するまでに時間がかかるため、日々の資金繰りに悩まされるケースが少なくありません。売掛金の入金を待つ間に運転資金が不足し、ビジネスチャンスを逃してしまうことも考えられます。
このような短期的な資金繰りの課題を解決する手段として有効なのが「ファクタリング」です。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却し、支払期日より早く現金化するサービスです。
ファクタリングの審査では、自社の経営状況よりも売掛先の支払能力が重視されます。そのため、設立直後で実績が乏しいスタートアップでも利用しやすいのが特徴です。また、借り入れではないため貸借対照表に負債として計上されず、将来の融資審査に影響を与えにくい点もメリットといえるでしょう。
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スタートアップが資金調達を成功させるために重要なポイントは、以下のとおりです。
- 自社の資金調達ラウンドに合った手段を選ぶ
- 複数の資金調達手段を確保しておく
- 実現可能性の高い事業計画書を作成する
- 資金調達後の資金管理を徹底する
- 専門家のサポートを受ける
資金調達は事業の方向性や成長スピードに大きく影響するため、計画的に取り組みましょう。
自社の資金調達ラウンドに合った手段を選ぶ
まずは自社の立ち位置を客観的に把握し、フェーズに適した調達手段を選びます。自社の成長フェーズと資金提供者が求めるものを一致させなければ、交渉のテーブルにつくことさえ難しくなります。
| 資金調達ラウンド | 企業の状態 | 調達額の目安 | 主な資金調達手段 |
|---|---|---|---|
| シード | アイデア・プロトタイプ段階 | 数百万円〜数千万円 | 自己資金の活用、エンジェル投資家からの出資、日本政策金融公庫、補助金・助成金 |
| アーリー | 製品・サービス提供開始 | 数千万円〜数億円 | ベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディング、エンジェル投資家からの出資、日本政策金融公庫 |
| ミドル | 事業が軌道に乗り始めた・製品やサービスが認知され始めた段階 | 数億円〜十数億円 | ベンチャーキャピタルからの出資、第三者割当増資、制度融資 |
| レイター | 事業拡大・IPO準備段階 | 数十億円以上 | ベンチャーキャピタルからの出資、、第三者割当増資、プロパー融資 |
シード期は事業モデルが確立されておらず、返済能力を証明することが難しいため、金融機関からの融資は受けにくい傾向にあります。
しかし、ラウンドが進むと、実績を元に金融機関からの融資も受けやすくなります。同時に、ベンチャーキャピタルからのより大規模な出資も視野に入ってくるでしょう。
複数の資金調達手段を確保しておく
複数の資金調達手段を確保しておくことも、リスク管理の観点から有効です。ひとつの資金調達手段に依存していると、その計画が頓挫したときに、一気に資金繰りが悪化する可能性があります。
例えば、ベンチャーキャピタルからの出資をメインターゲットとしつつも、並行して「日本政策金融公庫の融資を申請する」「短期的な運転資金の確保のためにファクタリング会社の利用登録を済ませておく」といった方法が考えられます。
資金調達の選択肢を複数持っておくことで、予期せぬトラブルにも柔軟に対応できるでしょう。
実現可能性の高い事業計画書を作成する
エクイティファイナンスやデットファイナンスを活用する場合、楽観的な予測ではなく、データや根拠に基づいた実現可能性の高い計画を示すことが重要です。
投資家や金融機関は、事業計画書の内容で「事業の将来性」や「投資が回収できるか」を評価し、融資や出資の可否を判断します。目標達成までの道筋を論理的に説明するために、事業計画書には以下のような内容を盛り込みましょう。
- 事業のビジョンとミッション
- 市場規模や成長性の分析
- 競合他社の動向と自社の優位性
- 具体的な製品・サービスの概要
- マーケティングおよび販売戦略
- 具体的な数値目標を含む収益計画
- 経営チームの経歴や強み
資金提供者の信頼を得るためには、客観的なデータに基づいた説得力のある事業計画を作成することが重要です。
資金調達後の資金管理を徹底する
資金調達後の資金管理を徹底し、調達した資金を有効に活用することも重要です。資金に余裕ができることで、成果につながらない人材採用や過剰な設備投資を行い、キャッシュフローがかえって悪化してしまうケースもあります。
資金調達はゴールではなく、事業成長のための手段に過ぎません。調達した資金は、事業計画で定めた使途に沿って支出しましょう。
専門家のサポートを受ける
資金調達には財務や法務、税務といった専門的な知識が必要になることも多いため、専門家のサポートを受けることも検討してみてください。資金調達の過程で生じる課題に対応してもらえる専門家の例を、以下の表にまとめました。
| 相談内容 | 専門家 |
|---|---|
| 資本政策・投資家との交渉 | CFO、公認会計士 |
| 契約書のリーガルチェック | 弁護士 |
| 融資申請の事業計画書作成 | 税理士、中小企業診断士 |
自社に不足している知識や経験を専門家の力で補うことで、より有利な条件での資金調達や、将来的なトラブルの回避につながります。
また、商工会議所やよろず支援拠点など、無料で相談できる公的支援機関も活用しましょう。資金調達の経験が少ないうちは、積極的に外部リソースを活用することが大切です。
まとめ

スタートアップが資金調達を成功させるには、自社の成長フェーズに合った手段を選ぶことや、複数の選択肢を準備しておくことが大切です。長期的な視点で計画的に取り組むことで、事業の安定化につながります。
しかし、戦略的に資金調達を進めていても、事業基盤が盤石ではないスタートアップは日々の運転資金不足に悩まされることも少なくありません。
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