運送業向けファクタリング・資金調達ガイド:燃料費高騰・資金繰り対策
資金繰りに頭を悩ませる事業者は多く、とくに運送業は特有の商習慣からキャッシュフローが悪化しやすい業種です。
資金繰りの改善に効果的な施策のひとつに、ファクタリングが挙げられます。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、支払い期日を待たずに現金化する手法です。
この記事では、運送業がファクタリングを利用する際の注意点や、ファクタリング会社の選び方を解説します。キャッシュフローを改善して支払いの不安を減らすために、参考にしてください。
目次
運送業におけるファクタリングの種類と選び方
ファクタリングは売掛金をすぐに現金化できるため、資金繰りに頭を悩ませるケースが多い運送業者は活用してみても良いでしょう。ここでは、運送業がファクタリングを利用する際のポイントを紹介します。
- 2社間・3社間ファクタリングの違いと運送業における注意点
- 失敗しない!運送業に強いファクタリング会社の選び方5つのポイント
ひとつずつ見ていきましょう。
2社間・3社間ファクタリングの違いと運送業における注意点
ファクタリングには「2社間」と「3社間」の2種類があり、運送業ではスピード重視の2社間ファクタリングが選ばれるケースが多く見られます。
2社間では自社とファクタリング会社のみで契約するため、取引先に知られずに資金調達が可能です。ただし、3社間よりも手数料が高めとなっています。
一方、3社間は取引先も含めた契約になり、3社間の合意を得たタイミングで資金を調達できます。手続きに時間がかかるものの、手数料は低めであることが特徴です。
荷主との関係を重視する運送業では、取引先への通知有無や手数料を踏まえて慎重な選択が必要です。
失敗しない!運送業に強いファクタリング会社の選び方5つのポイント
ファクタリング会社を選ぶ際は、以下5つのポイントを重視しましょう。
- 運送業界への理解と実績
⇒業界特有の請求サイクルや商習慣に精通しているか - 入金までのスピード
⇒急な資金需要に対応できるか - 手数料や契約内容の透明性
⇒費用や条件が明確に提示してくれるか - オンライン手続きの可否
⇒場所を問わずオンラインで手続きができるか - 担当者の対応や信頼性
⇒丁寧でわかりやすい対応をしてくれる担当者がいるか
これらを総合的に比較することで、信頼できるファクタリング会社を見つけやすくなります。
ファクタリングだけじゃない?運送業向け資金調達方法との比較
資金調達を検討する際は、ファクタリング以外にも以下の選択肢も検討してみましょう。
- 銀行融資との比較
- ビジネスローンとの比較
- 活用できる補助金・助成金
- トラックなどの車両リースバックとの比較
それぞれの特徴を理解して、自社に適した資金調達を行ってください。
銀行融資との比較
銀行融資は金利が低いため、長期的な資金調達に向いています。一方で、審査が厳しく融資までに時間がかかる点がデメリットです。
直近の業績や財務状況が銀行融資では重視されるため、赤字決算や税金の滞納があると審査に通りにくくなります。
一方、ファクタリングは売掛金を現金化する仕組みのため、審査が比較的緩やかで最短即日での資金調達も可能です。銀行融資が難しい中小の運送業者や、急な支払いが必要な場面では、ファクタリングのほうが柔軟に対応できます。
資金調達の目的や緊急性に応じて、使い分けを検討してみてください。
ビジネスローンとの比較
ビジネスローンは仕入れ資金や設備投資など、幅広い目的に使える点がメリットです。また、無担保・保証人なしで利用できる商品も多く、比較的柔軟な資金調達の手段と言えます。
ただし金利は銀行融資よりも高めで、ファクタリングよりも負担が大きくなる可能性があります。また、審査は数日から1週間ほどかかり、過去の返済履歴や信用情報によっては通らないケースも少なくありません。
一方のファクタリングは売掛先の信用力が重視されるため、金融機関からの借入が難しい場合でも利用できるケースがあります。
急な資金ニーズにはファクタリング、自由な資金用途にはビジネスローンと、目的に応じた使い分けが効果的です。
活用できる補助金・助成金
金融機関からの融資やローンだけでなく、政府や自治体が実施している補助金・助成金で資金調達する方法もあります。運送業者が利用できる主な補助金や助成金は、以下のとおりです。
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 全日本トラック協会助成事業
これらの補助金や助成金は、業務効率化のための設備導入やITツールの活用、人材確保や育成などの幅広い用途に活用できます。
例えば、燃料費高騰に対応するための省エネ車両の導入や、配車管理システムの導入にも支援が受けられるケースがあります。ただし、申請には明確な事業計画書が求められ、入念な準備が必要です。また、採択まで数カ月~1年を要することもあるため、資金に余裕がある事業者向けと言えます。
中長期的な経営改善を目指す運送業者は、利用を検討してみてください。
トラックなどの車両リースバックとの比較
運送業者であれば、保有しているトラックを売却して同じ車両をリース契約で使い続ける「車両リースバック」で、資金調達する方法もあります。車両リースバックのメリットはまとまった資金を一時的に得られることで、資産を現金化したい運送業者に適しています。
ただし、リース料が毎月発生するため、長期的なコストを抑えたい事業者には不向きです。また、車両の評価額や使用年数によって利用できないケースもあります。
一方のファクタリングは売掛金を活用するため、車両に依存せず資金調達が可能です。
手元資産を活かしたい場合はリースバック、安定的な売掛金がある場合はファクタリングが効果的です。
資金繰りが困難な運送業者が抱える4つの問題
多くの運送業者は資金繰りに関して、以下の悩みを抱えているケースが少なくありません。
- 売掛金の回収に時間がかかる
- 固定費の支出が多い
- 売上が安定しない
- 慢性的な人手不足に陥っている
これらの課題に対しては、資金繰りの見直しやファクタリングの活用など、早めの対策が経営安定への第一歩となります。
1.売掛金の回収に時間がかかる
運送業では取引先の支払いサイトが長く設定されるケースが多く、売掛金の回収に1〜2ヵ月以上かかるケースも少なくありません。
現金化までの期間も燃料代や人件費は発生するため、キャッシュフローが圧迫されやすい傾向があります。複数の荷主を抱える中小の運送業者は、回収タイミングのズレが資金繰りを不安定にする要因となります。
このような状況の改善には、ファクタリングを活用した売掛金の早期現金化が効果的です。
2.固定費の支出が多い
運送業では主に、以下の固定費が毎月発生します。
- 燃料費
- 車両の維持費
- 任意保険や自賠責保険などの保険料
- 人件費
固定費は売上の有無にかかわらず支払う必要があるため、資金繰りに大きな影響を与えます。とくに繁忙期では固定費以外の支出も大幅に増えるため、資金不足に陥りかねません。
毎月かかる固定費に対応するには、安定して資金を確保できる調達手段の確保が重要です。継続的にキャッシュフローを維持するには、状況に応じた資金戦略が欠かせません。
3.売上が安定しない
運送業は景気の変動や取引先の荷量減少などの影響を受けやすく、月ごとの売上が大きく変動する傾向があります。
繁忙期と閑散期の差が大きいなどの要因で売上が安定せず、先の見通しが立たないケースも珍しくありません。売上が減少した月でも燃料費や人件費などの固定費は必ず発生するため、キャッシュフローのバランスが崩れやすくなります。
その結果、資金繰りが悪化して支払いの遅延や取引先との信用問題に発展する可能性もあります。
4.慢性的な人手不足に陥っている
運送業界では、ドライバーの高齢化が進む一方で若手の確保が難しく、慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。
人員が不足すると仕事の受注を制限する必要があるため、売上の減少や納期遅延による顧客離れなどの可能性が高まります。その結果、安定した収益の確保が困難になるため、経営が不安定になりやすいです。
また人手不足を補うために外部委託を増やしたり、人件費を上げて採用を強化したりするとコストが増加し、キャッシュフローを圧迫する要因にもなります。
人手不足の解消は時間がかかることが見込まれるため、他の問題を優先して見直したほうが資金繰りの改善につながる可能性があります。
運送業がファクタリングを利用するメリット3選
運送業者がファクタリングを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 資金繰りの改善につながる
- 急な支出に対応できる
- 銀行融資よりも迅速に資金調達できる
メリットを上手に活かして、資金繰りに悩まない経営を目指してみてください。
1.資金繰りの改善につながる
ファクタリングを利用すると売掛金を期日まで待たずに現金化できるため、資金繰りの改善に大きく貢献します。
運送業では支払いサイトが60〜90日と長い場合が多く、入金までに時間がかかるケースが少なくありません。さらに、顧客からの入金が遅れることも多々あります。
資金繰りが厳しいときにファクタリングを利用すれば、迅速に資金を確保でき、日々の支払いや急な出費にも対応できます。
売掛金を早期に資金化することでキャッシュフローに余裕が生まれ、安定した経営が望めるでしょう。
2.急な支出に対応できる
運送業では、以下のような急な出費が避けられません。
- トラックの故障
- 運転中の事故
- 部品交換
- 燃料費の急騰
上記の予期せぬ支出に直面した際も、ファクタリングを利用して売掛金を現金化すれば、迅速に資金を確保できます。銀行融資のように時間がかかる手続きが不要で、急な支払いにも対応しやすいことが大きな強みです。
ファクタリングは経費の変動が大きい運送業で、資金調達の手段として有効です。
3.銀行融資よりも迅速に資金調達できる
ファクタリングは銀行融資と比べて、現金化のスピードが早いことが大きな特徴です。ファクタリングの審査では、運送業者の信用情報よりも売掛先の信用力が重視されるため、経営に不安がある場合でも利用できる可能性があります。
また、借入ではなく売掛金の前払いという形で資金を得るため、新たな負債を抱えずに資金繰りを改善できます。
金融機関の審査に時間を要する場面や、すぐに資金が必要な状況では、ファクタリングが効果的な選択肢となるでしょう。
運送業がファクタリングを利用するデメリット3つ
ファクタリングで資金繰りを改善するためには、デメリットを把握することも重要です。以下の3つを押さえておきましょう。
- 運送業ファクタリングの手数料はなぜ高い?相場とコスト削減のコツ
- 取引先(荷主)との関係悪化を防ぐには?
- 【注意喚起】悪質なファクタリング業者を見抜くチェックリスト
ひとつずつ解説します。
運送業ファクタリングの手数料はなぜ高い?相場とコスト削減のコツ
ファクタリングはスピーディーに資金を得られる反面、手数料が高額になる傾向があります。とくに2社間ファクタリングでは取引先に通知がない分、売掛金を回収できないリスクが高まるため、手数料は5〜20%程度が相場です。
運送業は利益率が低いため手数料が高いと利益を圧迫しやすく、資金調達が逆効果となる可能性もあります。なお手数料が高くなるのは、取引先の信用力が低い場合や取引金額が少額なケースが多いです。
コストを抑えるには複数の会社に見積もりを取り、明確な料金体系を提示してくれる事業者を選ぶことが重要です。
取引先(荷主)との関係悪化を防ぐには?
ファクタリングを利用する際は、取引先との信頼関係に配慮が必要です。
2社間ファクタリングでは、売掛金を取引先に通知せずに譲渡します。しかし、利用したことが取引先に発覚すると「無断で債権を譲渡した」と受け取られ、信頼を損なう可能性があります。そのため、相談できる関係を築けているのであれば、ファクタリングの利用前に説明しておくとトラブルを避けやすくなります。
一方の3社間ファクタリングは、取引先に正式な通知が届くため「資金繰りが厳しいのではないか」と誤解されるケースも少なくありません。この場合は、資金効率の改善を目的にしていることを説明し、理解を得ることが重要です。
【注意喚起】悪質なファクタリング業者を見抜くチェックリスト
ファクタリング業者の中には、高額な手数料や不適切な契約を行う悪質業者も存在します。契約前には、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- 手数料が相場(2社間で8〜18%)を大きく超えていないか
- 契約書の内容が明確に記載されているか(手数料や入金時期、違約金など)
- 担当者の説明が曖昧で不明点をはぐらかしていないか
- 強引な勧誘や即決を求めてこないか
- 登録住所や会社概要に不審な点がないか(公式サイトに記載があるか)
上記のチェック項目に複数該当する場合は、契約を控えるか他社を検討してください。信頼できる業者選びが、トラブル防止と資金調達成功のカギになります。
運送業がファクタリングを利用する流れ
ファクタリングを利用する際は、以下の流れで手続きしましょう。
- 見積もり・申込み
- 必要書類の提出
- 審査
- 契約と入金
手続きをスムーズに進めるには、必要書類を早めに準備することが重要です。
1.見積もり・申込み
ファクタリングを利用する際は、まずファクタリング会社に見積もりを依頼しましょう。
売掛金の金額や取引先の情報を元に、手数料や買取条件などの提案を受けます。この段階で複数の会社から見積もりを取り、費用や対応スピード、契約内容の透明性などを比較してみてください。見積もり内容に納得できたら、正式に申込みへと進みます。
2.必要書類の提出
申込み後は、ファクタリング会社の審査に必要な書類を提出します。主な提出書類は、以下のとおりです。
- 請求書や発注書
- 通帳のコピー(直近3ヵ月分程度)
- 本人確認書類
- 取引先との契約書
- 直近の決算書や確定申告書
書類の不備があると審査に時間がかかるため、申込み前に必要書類を確認して準備しておくと良いでしょう。
3.審査
必要書類の提出後、ファクタリング会社による審査が行われます。
審査時間は会社により異なるものの、最短即日で完了する場合もあります。最近ではAIによる自動審査を導入する企業も増えており、従来よりも迅速な判断が可能です。
審査では売掛先の信用力や取引実績、自社の財務状況などが総合的に評価されます。早急に資金調達を希望する場合は、審査体制が整ったファクタリング会社を選ぶことがポイントです。
4.契約と入金
審査に通過した後は、ファクタリング会社と正式に契約を結びます。
現在は多くの会社が電子契約に対応しており、オンラインで手続きが可能です。なお、契約書には手数料や支払い条件などが記載されているため、必ず内容を確認しましょう。
契約が完了すると、売掛金の買取代金が指定口座に振り込まれます。入金までのスピードは会社によって異なるものの「Easy factor」では、最短即日での入金も可能です。
こう活用できる!運送業におけるファクタリング活用事例
ファクタリングは、運送業が直面する急な支出や資金繰りの悪化に対して効果的な手段です。以下に具体的な活用事例を紹介します。
事例1:急な燃料費高騰に対応
取引先の支払いサイトが90日と長く、現金不足に悩んでいたA運送では、ファクタリングを活用して売掛金を即日現金化。急増した燃料費の支払いに間に合わせることができました。
事例2:繁忙期前の人員確保に利用
B社では繁忙期を前に外注ドライバーの手配が必要でしたが、先払い費用の確保が困難でした。ファクタリングの活用で必要資金を確保し、スムーズに業務を拡大できました。
ファクタリングは、運送業特有の課題に対応できる有効な資金調達の手段です。
運送業者はファクタリングを利用して資金繰りを改善しよう
運送業は売掛金の回収遅れや固定費の負担、急な支出など、日常的に資金繰りの課題を抱えやすい業種です。これらの状況への対応策として、ファクタリングは有効な手段となりえます。
銀行融資やビジネスローンと比較して審査が早く、売掛先の信用力をもとに資金化できるため、スピードと利便性に優れています。さらに、燃料費高騰や車両トラブル、人手不足など多様な経営課題の解決にもつながります。
資金繰りに悩む運送業者の方は、最短60分で入金可能・オンライン完結・運送業への深い理解を備えた「Easy factor」の利用をご検討ください。手数料率も2~8%と業界最低水準であるため、比較的小さい負担で利用可能です。
東京大学法学部卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。ニューヨーク支店での非日系企業向けコーポレートファイナンス担当を経て独立。企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
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